研究課題/領域番号 |
23K11565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
水谷 裕佳 上智大学, グローバル教育センター, 教授 (90568453)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 米国 / 先住民 / コミュニティ / 文化 / 記憶 / 継承 / 空間 / 土地 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、米国領内(大陸部だけでなく、ハワイ等の太平洋地域を含む)の先住民と、彼らの文化に関連するもののアクセスが困難な場の関係性を分析し、米国領内の先住民コミュニティにおける文化や記憶の表象や継承に関する考察を行うことである。「アクセスが困難な場」には、国境の反対側にある集落や、私有化されて立ち入れない土地、利用に許可が必要な海域などが含まれる。頻繁に訪れることができないそれらの空間にまつわる文化や記憶の継承のあり方を、複数の先住民コミュニティの状況を比較しながら論じる。なお、状況に応じて米国以外の国や地域に関する調査を合わせて実施し、より深い考察を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題の初年度にあたる2023年度には、主に日本国内において文献調査を行ない、2024年度以降に実施する現地調査の事前準備を進めた。本課題申請時には、「米国領内(大陸部だけでなく、ハワイ等の太平洋地域を含む)の先住民と、彼らの文化に関連するもののアクセスが困難な場の関係性を分析し、米国領内の先住民コミュニティにおける文化や記憶の表象や継承に関する考察を行うこと」を研究目的として設定した。その後の文献調査を通じて視野が広まり、先住民の人々にとってアクセスが困難な「場」だけではなく、先住民のコミュニティから流出することによって彼らがアクセスできなくなってしまった「物」も研究の対象に含めてはどうかと考えるようになった。人の動きだけではなく、文化や社会にとって重要な物の動きにも着目しながら調査、研究を進めることによって、米国領内の先住民と空間に関するより深い考察が得られることが期待できる。そのような考えを基に、米国領内の先住民コミュニティから日本に持ち込まれ、博物館に収蔵されるのではなく個人が私有するに至った工芸品のうち、譲渡や転売を経る過程で、制作の過程や文化的な意味といった情報が失われてしまったものに対する考察を行なった。その成果は、2024年度開始直後の4月に米国で開催された国際学会(Organization of American Historians年次大会)で発表し、自身が先住民である研究者とも議論を行なった。成果としては2024年度のものになるために詳細は次年度の成果報告書に記すが、このような物の動きも調査対象に加えることで、米国領内の先住民による文化や記憶の継承における空間の役割という本研究課題の中核を成す問いにまつわる議論を深められる手応えを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上の「研究実績の概要」欄に記した通り、2023年度中は、日本国内で文献調査を中心に研究を進めた。当初は2023年度の夏(大学の夏休み期間にあたる8月もしくは9月)に米国内で現地調査を行い、研究に必要な資料を収集する予定であった。しかし、訪問先として想定していたアリゾナ州南部のトゥーソン市周辺に記録的な熱波が襲来し、高温による健康被害も報道され始めたため、熟考の末、現地調査を延期することにした。よって、スケジュール的な面においては、本課題を申請した際に想定していた予定よりも研究が遅れていると言える。一方で、その間に日本国内で進めた文献調査を通じて、人だけではなく物の移動にも着目しながら、現代の米国領内の先住民による空間へのアクセスにまつわる事項に関する考察を進める、という着想を得た。さらに、そのアイディアに基づき、具体的な事例を選んで考察を行い、2024年度開始直後の4月初旬に開催された国際学会で発表を行うことができた。その点を考慮すると、2023年度中に国内で文献調査を進めたことは、スケジュール的な面での遅れをもたらしたというよりも、視野を広げて研究に取り組むために必要な準備期間であったと捉えることもできる。よって、自己評価においては「やや遅れている」ではなく「おおむね順調に進展している」を選択した。なお、大学の春休み期間にあたる2月、3月に米国での現地調査を行うことも不可能ではなかったが、年度明け直後の4月初旬に米国での学会発表を控えていたため、その期間には渡航を伴う現地調査ではなく学会発表の準備と国内での文献調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
上の部分で言及した2024年度開始直後の国際学会における発表において、会場で議論を行なった研究者からは、口頭発表した内容を論文にまとめてはどうかとの助言を得た。私自身の考えでは、学会での口頭発表を行うことはできたものの、まだ取り上げた事例の考察は論文としてまとめる水準には至っていない。そのため、2024年度中に論文化と投稿を終えられるかどうかは分からないものの、上記の口頭発表の内容については、近年中に考察を深めて論文として公開するための準備を進める。2023年度中に実施が叶わなかった現地調査については、2024年度中に行う。ハワイの先住民による文化的な空間へのアクセスに関する資料を収集するために、米国ハワイ州ホノルル市の研究施設(ハワイ大学マノア校ハミルトン図書館ハワイ・太平洋コレクション、ビショップ博物館付属図書館・アーカイブス等)を訪問することを予定しているが、本報告書作成時における日本円と米ドルの為替レートや世界的な物価高騰を考慮すると、資金的な理由で調査期間の短縮といった困難が生じる可能性も否定できない。資料の収集には不十分な短期滞在を繰り返すよりは、現地調査の回数を減らして一度の渡航に伴う滞在期間を長くした方が研究の遂行に有益であるとも考えられるため、2024年度中に現地調査を実施するか、それとも2025年度にやや日程的にゆとりをもたせた現地調査を行うかについては、引き続き検討する。現地調査を2025年度に先送りする場合には、2024年度中は、日本国内での文献調査や、インターネット上のデータベースを利用した資料の収集と分析に取り組むこととする。
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