研究課題/領域番号 |
23K11566
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
村岡 敬明 大和大学, 情報学部, 准教授 (90746976)
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研究分担者 |
池上 大祐 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (00633562)
千知岩 正継 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (30965265)
東江 日出郎 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40584941)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 基地公害 / 基本的人権 / グローカル / 環境正義 / SDGs |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では「地域社会(ローカル)、米国政府と米軍基地受入国政府(ナショナル)、国 際社会(グローバル)が相互に絡み合うなかで、基地公害に対処するための「環境正義」論をいかにして構築できるだろうか?」というMQを設定する。環境正義の実現が求められる背景には、国連「SDGs」がある。ところが、環境問題の枠組みに基地公害が包摂されていない現状に鑑み、4つのSQ(実態把握・理論整理、住民の認識、各国政府の対応、国際規範の検討)を設けて検討を試みることにした。軍事基地は安全保障で守られてきたため、基地公害が発生してもあまり情報公開されることはなかった。ゆえに、グローカルな環境正義論を新たに構築する。
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研究実績の概要 |
初年度にあたる2023年度は、第一段階として、SQ1「基地公害の事例・実態の把握と環境正義理論の整理」を網羅的に進めた。調査対象地域については、村岡敬明(代表)は沖縄、池上大祐(分担)は米領グアム、東江日出郎(分担)はフィリピンを主に担当している。千知岩正継(分担)は環境問題関連の人文・社会科学の諸理論を、環境正義概念を中心に収集して分析を行った。研究代表者の村岡は、2024年3月に「基地公害研究序説―在日米軍基地における基地公害の事例と実態の把握―」『大和大学情報学部研究紀要(大和大学情報学部研究紀要編集委員会)』、第10号、pp.21-32を執筆した。本研究では、在日米軍基地とその関連施設(軍需工場や資源採掘場も含む)に起因とする環境汚染を「基地公害」と定義する。その定義にしたがって、在日米軍基地における基地公害の実態を沖縄教職員会(現沖縄県教職員組合)資料や日本弁護士連合会の文献などを用いて調査した。こうした環境保全は、国連が17のSDGsを定めて厳しく対処しているにも関わらず、軍事基地が安全保障や国益の枠組みで守られているために、「基地公害」が発生しても情報が公開されることはほとんどない。その原因は、環境問題の枠組みに基地公害が包摂されていないことにある。基地周辺の住民の生存権や生活権などの基本的人権を守るために、「環境不正義」である「基地公害」を国連のSDGsに加えて、厳しい対応を求めていきたい。沖縄の基地公害は大変事例が多いが、先行研究を見ると、基地公害の事実関係が羅列されているだけで、具体的な基地被害に対する米軍の補償や被害実態(健康への影響など)にまで網羅されてないことが分かった。 一方、研究分担者は、それぞれフィールドワークの成果や収集した文献を分析し、学会報告や論文執筆に取り組んでいるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の村岡は、沖縄県公文書館・沖縄県立図書館・読谷村史編集室・琉球大学附属図書館・沖縄国際大学図書館で資料調査および収集を行った。このほかにも、基地公害に関わる戦後沖縄史の書籍(福地氏、日本弁護士連合会報告)、近年出版された基地公害や環境政治理論に関する書籍を収集した。収集した成果を、2024年3月に「基地公害研究序説―在日米軍基地における基地公害の事例と実態の把握―」『大和大学情報学部研究紀要(大和大学情報学部研究紀要編集委員会)』、第10号、pp.21-32にまとめた。 研究分担者の東江先生は、フィリピンでBCDA(Bases Conversion and Development Authority)とオロンガポ市役所の関係者にインタビュー調査を行い、環境正義や公害関連の書籍文献を調査収集した。池上先生は、立教大学共生社会センター、グアム大学ミクロネシア地域研究センター、北マリアナ大学図書館、米国国立公文書館新館で資料調査および収集した。グローカルな環境正義を見るためには、基地公害に苦しむ住民の声を拾う必要がある。ローカル新聞および雑誌の収集は欠かせないからである。このように、研究代表者および研究分担者のインタビュー調査と文献(一次資料、論文など)調査などの研究手法に違いがあれども、全体としては、公害の被害者である住民の声を丁寧に拾い上げてグローカルな環境正義論を構築するという目的は一致していることが確認できた。一方、千知岩先生は、これまでの環境正義・環境倫理の理論研究の整理に当たった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、SQ2「地域住民の基地公害への認識・対応」とSQ4「環境保護に関する国際規範の検討」に取り組む。 ・村岡(研究代表者):初代の屋良朝苗知事~現在の玉城デニー知事までの在沖米軍の環境汚染問題に対する政策対応(具体的には、①沖縄県教職員組合などの基地公害抗議運動に対する沖縄県の認識、②基地公害に関する沖縄県独自の調査研究活動の実態)と、沖縄県政が保革で異なった場合の在沖米軍の環境汚染の取り組みの差異を検討する。 ・池上(研究分担者):米国市民権構造においていわゆる「二級市民」的扱いになっているグアム住民による基地公害に対する住民運動の実態を、米国本土における1970年代からの環境保全意識の高まりとの関わりのなかで分析する。そのためにグアム地元紙Guam Daily News(現Pacific Daily News)やグアム議会議事録といった一次史料をグアム大学ミクロネシア地域研究センター(MARC)で収集・分析を実施する。 ・東江(研究分担者):フィリピンの米軍基地における環境汚染問題への米国政府の対応、「訪問米軍の地位に関する比米協定(VFA)」による米軍の展開が再び基地の存在する地域に環境問題を引き起こしているか、あるとすればどんな問題か、そしてそれに比米両政府や基地のある自治体、住民、市民団体等がどう対処しているか、を明らかにする。 ・千知岩(研究分担者):批判的環境正義や比較環境正義などの最新の研究動向を踏まえながら、基地公害という特殊な環境不正義の是正に相応しい環境正義の枠組みを検討する。
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