研究課題/領域番号 |
23K11569
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
金 キン 早稲田大学, 産業経営研究所, 助教 (30895371)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 中国の労働環境 / 在宅勤務 / 新型コロナウィルス感染症 / 工会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、北京大学が実施した『China Family Panel Studies:CFPS』(2014-2022)の個票データを基にして、従来から景気後退に対する脆弱性が高いと指摘された労働者の属性(女性、農村戸籍の出稼ぎ労働者、大卒未満の学歴、派遣労働者、対面を要するサービス業従事者等)に注目し、労働者の失職・減収のリスク、在宅勤務の進み具合、幸福感等に対するコロナショックの影響を考察する。また、グローバリゼーションの下、労働組合(工会)制度をはじめとした労働関連法規の整備に伴う工会のボトムアップ機能の改善が進む中、コロナショックに対する工会の反応によってもたらされた属性間の差を分析する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナと記す)の流行が、中国の経済、社会に大きな変容をもたらした中、在宅勤務の実施状況が労働者の労働条件の変化と不安感に及ぼす影響を考察することを目的とした。 第一に、当該研究に関連する文献資料(英語、日本語、中国語)を収集した上で、精読を行った。先行研究のサーベイを通して、当該研究に関連するテーマにおいて、国際的な比較を行うための論点を整理した。とくに異なる地域・国・社会において注目されたテーマ、キーワードをまとめながら、その研究動向を明らかにした。たとえば、新型コロナのパンデミック後、米国のデータを使用した分析では、在宅勤務を実施しなかった人は、失業率が高く、健康状態が悪い傾向にあると明らかにされた(Angelucci et al., 2020)。また、日本のデータを用いた分析では、在宅勤務は、労働者の収入や労働時間の減少幅を緩和させることが示唆された(石井、中山、山本,2020)。他方、中国において、新型コロナウィルス感染症流行期における労働環境の変化に関連する実証研究は多くはなく、本研究の課題の学術的意義が浮き彫りとなった。 第二に、中国家庭追跡調査「China Family Panel Studies: CFPS」のデータ (2020) を利用し、在宅勤務の実施要因と、減収の度合い、労働時間の変化、労働者の失職リスクに及ぼされる在宅勤務の進み具合の影響やその影響における属性間の差などを考察した。現在、これに関連する論文をまとめている。 第三に、CFPSデータ(2014-2018)を用いて、中国の労働組合(以下、工会と称する)の経済効果を検証するため、「中国の工会の賃金効果に関する計量分析-パネルデータによる再検証-」(日本労務学会、24号2巻、pp.4-20)というテーマとした論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度の研究活動では、当初の研究計画にある当該研究の文献資料の精読を行った。とくに、新型コロナは労働社会に及ぼす影響を中心に、英語、日本語、中国語による書籍と論文などの資料を収集して整理した。また、これに加えて、上記に示したように、CFPSデータ(2014-2018)を用いて、工会の経済効果を検証した「中国の工会の賃金効果に関する計量分析-パネルデータによる再検証-」(日本労務学会、24号2巻、pp.4-20)を研究成果として公表し、本研究の新型コロナウィルス感染症流行期の変化を時間軸を通して比較する視点を明らかにした。 他方、令和5年度の研究活動では、先行研究の整理、CFPSデータ(2014-2018)に基づく研究成果の公表、CFPSデータ(2020)の検討までにとどまり、これに基づいた労働者の失職リスク、減収の度合い、労働時間の変化、在宅勤務の進み具合等に及ぼされるコロナショックの影響やその影響における属性間の差などに関連する論文を公表するまでには至らなかったことが残された課題としてあげられる。 以上の研究の進捗状況を総じてみると、「(3)やや遅れている」という状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
令和6、7年度は、令和5年度に引き続き、当該研究に関する文献資料を精読し、国内外における研究会などの研究活動を通して、分析方法の検討を進めた上で、論文を公表することを目的とする。具体的には、以下のことを実施する。 令和6年度、2つの研究活動を通して、本課題を推進する。1つ目は、CFPSデータ (2020) を利用し、在宅勤務の実施要因と、減収の度合い、労働時間の変化、労働者の失職リスクに及ぼされる在宅勤務の進み具合の影響やその影響における属性間の差などを考察した論文をまとめて公表する。 2つ目は、CFPSデータ (2018-2020) を用い、発言・退出モデルに基づき、新型コロナの発生前後に、異なる属性を有する労働者の労働条件、仕事満足度等に及ぼされる工会の影響の変化を分析し、関連する論文をまとめる。とくに、上記の2つの研究において、日本労使関係協会や中国経営経済学会などにおいて研究発表を行い、海外の研究雑誌に投稿する予定である。 また、令和7年度は、新しく入手する予定のCFPSデータ (2022) と統合したCFPSデータ (2014-2022) を使用し、長い期間にわたる工会効果の変化を分析し、とりわけ、新型コロナの発生初期である2020年、発生してから2年後に当たる2022年のデータによる分析結果を比較し、ゼロコロナ政策を実施した中国において、労働者の就業やウェルビーイングに及ぼされる工会の役割と機能を考察し、関連する論文をまとめる。
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