研究課題/領域番号 |
23K11571
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
竹田 真紀子 愛知学院大学, 総合政策学部, 准教授 (30521744)
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研究分担者 |
山旗 張星允 愛知学院大学, 総合政策学部, 教授 (50293717)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | タイの大学 / ミャンマーの民主化 / R2P / 若者世代 / 人間の安全保障 / 民族調和 / 社会変革 / 平和構築 / ミャンマーの次世代 / 民主化 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、国軍の残虐な弾圧によりミャンマーは人道危機に直面している。経済制裁や外交努力も結果を出せず、近隣国も避難民の受入に消極的である。また国際社会の合意形成ができずR2Pを通じた軍事介入も不可能である。一方、市民も軍政に終止符を打つまで徹底抗戦する意思は固い。そのような状況下で、ミャンマーの多くの若者を受け入れたタイの大学がミャンマーの民主化運動及び人間の安全保障促進にどのような役割を果たせるのかを明らかにする。またR2Pが履行されず、同様の状況下で人道危機に直面する人々を保護し、R2Pの欠陥を補う大学の役割について理論的枠組みの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
研究初年度はアンケート調査の準備のために以下1)-6)の予備調査を実施した。1)研究対象大学及び協力者の特定と特定した集団①-④に調査協力を依頼、①Mae Far Laung大学(MFLU)、Chaing Mai大学(CMU)、Payap大学の教職員(インターナショナルプログラムがあり留学生の受入体制が整っているチェンマイのPayap大学も研究対象校とした)、②ミャンマー人留学生及び若者(大学未所属で正式な滞在許可を所持しない者を含む)、③若者や学生を支援する地域のボランティアや活動家、④人間の安全保障促進、平和モニター、情報収集、国境付近の後方支援を行うミャンマーのCSOs、2)特定した研究対象者とアンケート調査の質問項目について検討、3)研究協力者を通じて民族、政治、社会的背景の異なる合計12名のミャンマー人留学生と面会しアンケート調査の目的について説明した上で、多数の留学生に調査に参加してもらう方法(合計600名予定)について検討、4)Burma News International、Karen Information Center、シャン族とカレン族の青年組織のリーダーと面会し(A) R2Pの欠陥やミャンマー人がR2Pに対して持っていた誤認や期待、(B)ASEANの実行不可能な5項目の合意、(C)正規留学生だけでなく一部の例では滞在許可を有しない若者の支援も行うタイの大学の現実的な取り組み、(D)人間の安全保障や紛争の近況及びミャンマーの若者の困難、に関する彼らの分析について調査、5)紛争下にあるタイ国境付近や国内避難民キャンプで国境を跨ぐ支援を行うミャンマー人学生やタイの大学の卒業生の現状分析を調査、6)タイの大学に客員研究員として避難しているミャンマー人研究者の留学生の現状、民族調和、若者たちを保護するミャンマー近隣国の大学の役割についての分析を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の研究計画が予定通り実行できなかった原因は主に以下2点である。1点目は他業務との調整がつかず9月に予定していた実地調査を延期せざるを得なかったことである。よって第一回目の実地調査は11月下旬に予定を変更して実施したが、大学の学期中での調査となり十分に時間をとって調査にあたることができなかった。2点目の理由は、この第一回目の予備調査を通じて、当初予定していた形でのアンケート調査では不十分であることが明らかとなったことである。本研究ではミャンマーの若者世代を受け入れることによってタイの大学がミャンマーの民主化運動及び人間の安全保障(HS)促進にどのような役割を果たせるのかを明らかにすることであり、またその取り組みはR2Pの欠陥を補うことができるのかについて理論的枠組みの構築を目指すことであった。しかし予備調査で明らかとなったのは、正式な形での(正規の学生)受け入れに限らずインフォーマルな手段やアプローチでもタイの大学や組織がミャンマーの若者を「保護する責任(R2P)」を果たしていることであった。また非正規生や大学に所属しないミャンマーの若者や避難民をサポートしているCSOsや個人の取り組みについても調査の範囲を広げる必要性を確認した。さらに現地の状況を踏まえて人間の安全保障を調査する指標を設定する必要もあり、今回の予備調査を踏まえてアンケート調査の項目を変更する必要があった。研究計画段階では2023年度に2回の調査を予定していたが、アンケート調査の準備を整えることができず、2024年度に調査を延期することとなった。そのため研究調査は遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
アラカン軍、ミャンマー民族民主同盟軍、タアアン民族解放軍で構成される3兄弟同盟が国民防衛隊や他の民族武装組織とも協力し2023年10月27日から「1027作戦」と称される一斉攻撃をミャンマー軍に対して開始して以降、1ヶ月で250の国軍の基地を掌握するなど大きな成功をおさめている。この成功はタイを含む国外に避難している若者世代の経済的及び技術的支援が重要な鍵となっている。よってこの支援体制を可能にさせるタイの大学や組織の役割はミャンマーの民主化にとって大きな意味を持つ。タイの大学では正式な滞在許可を所持していないミャンマーの若者に対してもタイ語の習得を支援する取り組みを実施するなど当初認識していたよりも複雑な形で多様化した支援があること、また大学組織としてではなく個人としても定年退職した大学教員やミャンマーのCSOsが協力して若者世代を支援している取り組みも予備調査で確認された。よってタイの大学や組織の役割を明らかにするためにアンケート調査やインタビュー調査の内容を修正する必要があり調査の準備に時間がかかっている。しかし予備調査において研究協力者と研究内容や計画について確認することができており、それら協力者と打ち合わせ等を行いながら準備を進めている段階である。2024年度にはまずアンケート調査を実施する。アンケート調査の分析を踏まえてインタビュー調査を2025年度に実施予定である。研究を遂行する上での課題は、複雑化した支援の状況をまず調査によって明らかにしなければ、その次の段階である人間の安全保障や民主化促進に関連するアンケートやインタビュー調査の実施が難しいことである。またそれは実地調査以外において明らかにすることは難しく、もう一度の実地調査を踏まえて2024年度後半にアンケート調査を予定している。また予備調査の内容について2つの国際学会で発表を予定している。
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