研究課題/領域番号 |
23K11580
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
浅田 晴久 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20713051)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | インド / アッサム州 / バングラデシュ / 洪水 / ボロ稲 / 灌漑 / 技術導入 / 稲作 / 発展経路 |
研究開始時の研究の概要 |
近年激化する自然災害をいかに克服するか、急激な環境の変化にいかに適応すべきか、世界各地で生活様式や生産システムの再構築が求められている。本研究では、インド東部アッサム州とバングラデシュという社会構成がまったく異なる2つの地域を比較することで、洪水発生後の新技術の普及と農業システムの転換の経路が、地域社会の特性に強く依存していることを明らかにする。特にアッサム州では、社会の中に蓄積された多元的な知識や技術を異なる民族間で交換し合うことで環境の変化に徐々に適応していくというインド型発展モデルがみられることを実証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、洪水後の新技術導入にともなう農業変容について、他州と比べても歩みが遅いインド・アッサム州に固有の社会・生態的要因を、すみやかに雨季稲作から乾季稲作へ移行したバングラデシュの事例との比較を通して、明らかにしようというものである。 令和5年度は、4月末から5月、翌2月末から3月の2度、インド・アッサム州を訪問し、複数の村落で農家から聞き取り調査を実施した。西部のナルバリ県では、ブラマプトラ川に近く、相対的に低い場所にある耕地で、2022年の洪水後の乾季にボロ稲が導入されたことが分かった。その際に、被災者支援の一環として行政から稲のハイブリッド品種・灌漑用管井戸が支給され、近隣のムスリム移民から栽培技術に関する知識が、オホミヤと呼ばれる在来ヒンドゥー教徒に提供されたことも明らかになった。 しかし、乾季のボロ稲栽培を含む農業変容が進んでいる地域は、ムスリム移民の居住地を除くとアッサム州全体の中では限定的で、ほとんどの地域では乾季の耕地では作物が栽培されていない。雨季に栽培される稲の収益性が見込めない中で、農家は乾季の生業で現金収入を稼ぐ必要がある。ボロ稲の導入が容易でない地域では、魚養殖やブロイラー養殖など、作物栽培以外の収入源を模索する農家もみられ、徐々に生業が多様化していることが示唆された。 また、国内ではアッサム州とバングラデシュの現地新聞(Assam Tribune, Sentinel, Daily Star, Financial Express)の記事をウェブサイトから収集して、災害後の新技術の導入状況に関する分析を進めた。記事の内容について、次回の現地調査で確かめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、対象地域のうち、インド・アッサム州において現地調査を遂行し、仮説の通り、新技術の普及にムスリム移民が一定の役割を果たしていることが実証された。ただし、ボロ稲栽培が新たに導入された村落を特定するのに時間がかかったため、今後はあらかじめ衛星画像の解析で候補地を絞り込むなど工夫する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は比較のためにバングラデシュを訪問し、乾季のボロ稲導入時の経緯を農家から聞き取る予定である。具体的な手順としては、衛星画像を用いて近年にボロ稲が導入されたエリアを特定し、その上で、現地協力者のサポートを得て、調査に適した村落を探す。 インド・アッサム州では令和5年度に訪問した村落の中から、定点観測する村落を定めて、世帯調査を実施する予定である。こちらも現地協力者のサポートを得ながら、複数の農家にアンケートとインタビューを実施して、ボロ稲導入後の様子を明らかにする予定である。
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