研究課題/領域番号 |
23K11648
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
西田 昌之 東北学院大学, 教養教育センター, 講師 (40636809)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2027年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2026年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 旅行記 / タイ人 / 対外認識 / 国際観光 / まなざし / 近代化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はタイの非王族・貴族の外国旅行記を分析の対象とし、特に1940-60年代にかけて日本や欧州、中東、東南アジア諸地域を旅し、多数の旅行記作品を残したタイ人旅行作家ブンチュワイ・シーサワットに着目する。ブンチュワイの記述は、国際旅行が珍しかった当時の、一般的な東南アジア人の目に日本や世界がどのように映ったのかを知る上で貴重な史料である。ブンチュワイの旅行記の精読、および同時代の他の旅行記との比較分析を通して、国際観光旅行の文化が王族から庶民へと拡大してゆく中で、タイの庶民が自国や対外の意識を草の根からいかに構成していったのかを描出する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、ブンチュワイ・シーサワット『日本旅行記』の精読と比較可能なその他の旅行記の入手に取り組んだ。2023年度に、タイ人の旅行記の分析のための必要な資料の所在を把握し、また比較研究のための文献の収集が開始された点において適切なスタートが切れていると考える。具体的には、国会図書館、所属大学の国会図書館閲覧システムを利用し、明治期から昭和初期までのホテル旅館台帳から『日本旅行記』に登場するホテルの大部分を同定することができた。またタイ現地の協力者が得られ、現地で王族、非王族を含めて旅行記・日記資料の調査をしてもらい、購入可能なものはすでに購入を進めている。 次に資料精読については、校務や他の研究のために、翻訳、資料の精読の時間が十分に確保できない問題はあるが、少しずつ『日本旅行記』の翻訳作業と他の文献の精読を進めている。 最後に研究実績としては、国内勉強会で発表の機会が得られたため、2024年度から予定であった『日本旅行記』の内容分析と他の旅行記との比較分析を12月ごろから前倒しして開始した。2024年3月9日、国立歴史民俗博物館共同研究「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」第8回研究会(於明治学院大学)において「第二次世界大戦中の帝国日本への「まなざし」の比較ータイとポルトガルの旅行記の並べ読みから」のタイトルで発表を行い、現在、2024年度に向け、論文の作成を進めている。 総括をすると、全体として一部遅れもあるが研究は順調に推移している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗をより具体的に述べると、2023年度はブンチュワイの『日本旅行記』の精読と比較可能なその他の旅行記の入手に取り組むことを予定していた。その中でも特に① 1940年当時、タイにおける戦前の日本観光情報資料の調査、② 『日本旅行記』に登場する戦前期の日本航路および国内交通インフラストラクチャー、古地図を用いた外国人向け国内ホテル・旅館の調査、加えて、③ オンライン上でタイ人の旅行記・日記史料の所在調査の三点を目標とした。①②に関しては、国会図書館、所属大学の国会図書館閲覧システムを利用し、明治期から昭和初期までのホテル宿屋台帳から『日本旅行記』に登場するホテルの大部分を同定することができた。③に関しては、タイ現地の協力者により、王族、非王族を含めて旅行記・日記資料を買い進めている。よって2023年度にタイ人の旅行記の分析のために必要な資料の所在が把握され、また比較研究のための文献が適切に収集されている点において順調なスタートが切れていると考える。 次に資料精読については、校務や他の研究のために翻訳、資料の精読の時間が十分に取れないでいたが、少しずつ進めている。翻訳の終わったところから、順次分析を行っている。 最後に業績であるが、国内研究会で発表の機会が得られたため、2024年度からの予定であった『日本旅行記』の内容分析と他の旅行記との比較、考察を12月ごろから前倒しして開始し、3月に発表を行った。内容はすでに翻訳が終わっている第二次世界大戦期の日本への入国管理の場面のみに焦点を当て、ポルトガル人旅行作家フェデイラ・デ・カストロの著作との比較を行った。植民地宗主国ポルトガル、植民地の影響を受けるアジアの国家であるタイ、新興帝国日本のそれぞれのまなざしの違いとすれ違う思惑(誤配)を論じた。 以上のことから、全体として順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究は、全体計画では『日本旅行記』の内容分析と他の旅行記との比較、考察することが目標とされている。そこで、まず2023年度に遅れのあった①『日本旅行記』の精読に力を入れる。次に、②旅行記に記載された日本社会への批評とまなざしに着目し、自己の文化と日本文化をどのように対比させたのかに注目する。さらに、③他の旅行記、特にタイ人内の社会的な階層・身分によるまなざしの違いに注目して検討を行う。それにより、タイ近代化への認識とその階層・身分によるまなざしの差を浮かび上がらせたい。 以上の研究目標の推進のために、年末に京都大学東南研図書室の葬式本コレクションの資料調査、来年2月頃のタイでの現地調査を行う。また研究成果として、国内外学会で中間報告を行うことを予定している。
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