研究課題/領域番号 |
23K11650
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
河野 憲嗣 大分大学, 経済学部, 教授 (10631400)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 支払手段 / 観光消費 / 消費者行動 / 電子決済 / 紙 / プレミアム商品券 / チェックトランケーション / AIOCR / 消費行動 / 決済システム |
研究開始時の研究の概要 |
従来の消費者行動研究では需要と供給の均衡やバランスを分析する際、価格あるいは消費者と商品・サービスの関係性が重視されてきた。本研究では消費行動に影響を与える要因として支払手段に着目し、紙片からデジタルまで多様化する支払媒体の種類や特性が消費行動に与える影響を実証的に分析する。紙の商品券を扱う店舗の利便性を向上させる非接触型紙認証システムの開発、実装によって消費行動がどのように変容するかを定量、定性の両面からデータを収集して調査、研究を進める。
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研究実績の概要 |
消費者の行動を左右する要因として支払手段に着目し、特に紙片で発行される地域通貨やクーポン、プレミアム付商品券が消費行動に与える影響の分析に取り組んだ。本研究の前身である科研費研究により2021年冬に非接触型紙認証システムの稼働実験を実施した京都市伏見区の商店街を訪問して事務局および実験協力店舗へのヒアリングを実施した。支払手段のデジタル化が進んで高機能化しても、商店街を構成する店舗の実権者や実務を担う事務局がそうした支払手段を採用しなければ、消費者はそもそも高機能な支払手段を利用することができないことを改めて確認した。一般化するには更なる検証が必要であるが、支払手段の機能の進化は消費者のみならず、受け入れる店舗側にとっても利便性の高いものを追求する動きとならなければ、次々と支払手段が開発されれも社会に定着しないとの仮説を立証するひとつの示唆を得た。 非接触型紙認証システムを構想する元となったチェック・トランケーション、電子交換所プロジェクトについて、2023年度の電子交換所がリリースされた後の既存の手形交換所の状況を知るために、札幌手形交換所にインタビュー調査を実施した。電子交換所がリリースされて以降、各地手形交換所では手形交換業務に関する業務負担はほぼ解消されていることが確認できた。電子交換所の汎用版である非接触型紙認証システムが社会実装された際も、同様の業務負担軽減が見込まれる確証の一つを得ることができた。本研究との関連で、海外での実証実験の候補地として人的交流を得たネパールと台湾での研究活動を実施した。本研究の成果の一部は国内の学会およびシンポジウムにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は紙認証システム実証実験の候補地の状況を確認するため京都、北海道への出張を実施した。北海道では小樽市で本件に対応いただいていた担当者の業務都合で候補地の商店街を離れたため、当該地で実験が進められるか改めて調整を要することが判明した。京都では2021年に稼働実験した伏見大手筋商店街の事務局や協力店舗との打合せを実施し、実際の商品券の換金処理を含めた第2ステップの実験に向けた協力体制が確認できた。大分市街地商店街における実証実験については新型コロナを経て時間が経過しているため、再度意思確認が必要な状況である。 非接触型紙認証システムについては、2020年度の科研費基盤研究Cで開発した試作版の改修について東京へ出張して開発会社と打合せを実施した。2021年冬に京都で実施した稼働実験で得られたテスト結果などに基づいて、予算を対比させながら機能要件を絞り込み来年度以降の実証実験に必要な修正を進めることで開発の目処がたった。 2023年度の成果として10月に社会経済システム学会第42回大会において「消費行動と支払手段に関する考察」と題して研究発表した。また実証実験の候補地として海外からいくつか打診があり、2023年11月にネパール、2024年3月に台湾へ研究出張を実施した。特にネパールでは中央銀行の決済システム部長をはじめ財務省の元事務次官や銀行システム協会の会長との面会が実現し、現地での実証実験の実現性の高さを確認した。ネパールでは実証実験の支障となる法律がない一方で、プレミアム商品券事業自体を管轄する法令や制度が存在しないことから、現地で臨機応変に監督当局との調整役となる強力なパートナーの確保が不可欠であることを確認した。台湾での実証実験については現地での更なるネットワークづくりが必要であるが、商業発展研究院との共同研究に向けて継続検討することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は国内での実証実験を本格化するために候補地を絞り込みと決定の作業を進める。現在候補としている京都、北海道、大分のうち、最有力候補は京都である。また海外での実証実験の可能性が浮上しており、機会を逸すると現地の人脈や状況などが変化して実験が成立しない懸念があることから、2024年度は海外での実証実験の可能性検証を優先的に進める。非接触型紙認証システムについては、京都の伏見大手筋商店街およびネパールを念頭に置いた海外での実証実験に向けた改修を進めて2024年度中の開発完了を目指す。成果発表としては国内および国外での学会報告を予定しており、そこでの議論を通じて研究手法や方向性のブラッシュアップを図る。なお2024年9月以降、研究代表者は大分大学から名古屋大学へ割愛されることが決まったため、本研究計画や進め方などについて見直しを実施する予定である。
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