研究課題/領域番号 |
23K11655
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
井上 綾野 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (90438888)
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研究分担者 |
角本 伸晃 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (20214421)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 食品ロス / 観光 / 消費者行動論 / 行動経済学 / 持続可能な観光 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、SDGsの達成が重視される中で、食品と消費の文脈において「食品ロス」の削減が注目されている。国単位で見た食品ロスは「家庭が50%、事業系が50%」とされているが、 事業系食品ロスにおける業種別の研究は進んでいない。他方、観光地においては「食べ残し」「手つかず食品」を中心とした食品ロスが問題となっているが、その削減に対し有効な施策も明らかになっていない。 本研究は、インバウンドの復活に伴って、再び増加することが予想される「観光業における食品ロス」をどのように削減するかについて「フードシステムの経済学的解明」と「消費者の選択行動」の2つの視点から捉えることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、観光における食品ロスの削減のため、消費者行動論と行動経済学という2つの異なるアプローチから現状を解明することを目的としていた。今年度は、文献研究を進めながら、研究代表者と研究分担者が共同でヒアリング調査を実施した。 これらの結果から、これまであまり脚光を浴びてこなかった観光の食品ロスは、角本(2024)によって、①食堂・レストラン、②ホテル・旅館の食事、③食品系の土産物店(製造・販売)、④食品系の土産物店(仕入・販売)、⑤交通機関で提供される飲食、⑥駅弁、⑦インスタ映えする料理・食品の7つに類型化された。また、観光における食品ロスの規模が不明確であったことも明らかとなった。このような食品ロスに対して、ヒアリング調査によると、各企業が様々な工夫により、食品ロスの削減を行っていることがわかった。道の駅では果物の二次加工としてジェラート店が、野菜等の二次加工としてレストランがあり、自社内で二次加工を実施していることがわかった。また、パンの製造販売店においては、敷地内にレストランを設置し、パンの食品ロスを減らすこと、冷凍販売品を増やすこと等で、食品ロス削減に関する取り組みを行っていることがわかった。角本(2024)は、土産品における食品ロス発生のメカニズムを、静学モデルを用いたシミュレーションによって、明らかにした。また、数値モデルを用いたシミュレーションも行っている。この結果から、納品期限の緩和、賞味期限の年月表示化、賞味期限の延長の3点の実施が、食品ロス対策として有効であることがわかった。 このような結果から、土産物における食品ロスの削減については、一定の研究成果が得られたものの、なぜ食べ残しをするのか、という消費者行動視点からの研究は、今年度は概念整理と予備調査の実施に留まった。予備調査の結果から、自己コントロール感の欠如が、食べ残しに繋がることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、観光における食品ロスを、消費者行動および経済学それぞれの視点から研究している。食品ロスには様々な種類が存在するが、消費者行動分野においては、レストランやホテルにおける「食べ残し」を中心とした食品ロスを、経済学分野においては、流通における3分の1ルールに着目し、「土産物の賞味期限切れや販売機会のロス」を中心に研究を実施している。 消費者行動分野においては、「なぜ観光においては食べ残しが生じるのか」といった点に焦点を当て、文献の整理及び予備調査を実施した。経済学分野においては「土産物を中心とした食品ロスの削減」について、シミュレーションを実施し、一定の成果を得た。各分野における、個々の研究の進度は想定の範囲内であり、2024年度も個々の研究対象およびアプローチにおいて、観光における食品ロスに関する研究を推進する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進にあたって、消費者行動分野においては、予備調査の結果に基づく本調査の実施と研究結果の公開、経済学分野においては、行動経済学の視点から見た食品ロス削減に関する施策について研究が求められる。 消費者行動分野において、JTB総合研究所のデータから「日常」と「観光」において、食品ロス削減への取り組み度合が異なることがわかっている。予備調査において、これを裏付ける結果が確認されたため、予備調査をもとに、本調査を実施する予定である。その過程において、レストランやホテル側の食べ残しに対する認識についてヒアリングを実施する予定である。よって、2024年度は、ヒアリング調査を実施したうえで、消費者に対するアンケート調査を行い、その後データ解析を実施し、その成果をまとめたうえで、研究報告・論文として公表する予定である。 経済学分野においては、土産物の食品ロス削減を中心に、ナッジを用いて、食品ロスを削減する方法を検討する。そのために、土産物店を中心に再度ヒアリングを行うほか、可能であれば、ナッジを利用した食品ロス削減に関する実験を行いたい。その結果は研究報告や論文という形で公表する予定である。
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