研究課題/領域番号 |
23K11706
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
川崎 卓郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (20626361)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 中性子回折 / オペランド測定 / モーター / 非破壊測定 / 格子ひずみ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、既存の手段では計測不可能な電気自動車等の動力源として用いられるモーター内部の稼動中の力学的負荷や温度上昇を、中性子の物質への高い透過能力と、原子レベルでの構造評価が可能な能力を活かして実験的に計測する手法を開発する。 本手法を実現し、稼働するモーター内部に発生する負荷を実験的に確かめられるようにすることで、モーターの安全性及びシミュレーション評価の信頼性向上への貢献が期待できる。 さらに、本研究を通じて、実製品の実稼働状態という複雑環境への材料のミクロスケールな応答を実験的に評価する、材料・機械工学分野における新たな研究を展開する端緒を開く。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、測定対象とするモーターとその制御用機器、モーター外表面の温度分布を計測するためのサーモグラフィカメラ、その他必要な備品を選定し、購入した。 モーターは中性子の物質への透過率や、スリットやコリメータ等の光学系、実験装置上の試料設置スペースとの兼ね合いから、適したサイズ、構造のものを選定する必要がある。複数の機種を購入して分解し、内部構造を確認した結果、フランジ寸法90mm(定格出力120W)の機種が適しているとの見通しを得た。そこで、金属製ケーシング部、ステータ部の電磁鋼板、ローター部の永久磁石について、J-PARC物質・生命科学実験施設BL19の工学材料回折装置「匠」を用いて、それぞれ分解した状態と組み合わせた状態での中性子回折強度測定を行った。その結果、ローター部においてはケーシング部やステータ部による中性子の吸収によって回折強度の減衰の影響が無視できない程度に大きいものの、現実的な測定時間で格子定数の変化が評価可能であることが確認できた。 モーターの回転中オペランド中性子回折測定を行うためには、モーターを中性子回折装置上で回転数を指定して制御する必要がある。そこで、購入したモーターと制御用機器、既存のPCを組合せ、「匠」の試料ステージ上でモーターを駆動できるシステムを構築した。実際の実験では、安全上の観点からモーターの緊急停止機構を導入する必要があるため、ケーブルや回路、スイッチ等の必要物品を購入し、組み合わせた。 モーターの内部温度評価の参考値とするための外表面温度分布測定については、購入したサーモグラフィカメラを用いて、測定対象であるモーター表面温度が評価可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、測定対象であるモーターの選定、無回転状態での中性子回折強度測定と格子定数評価、中性子回折装置上での制御システムの構築が完了しているため、おおむね順調に進んでいると判断している。モーターの内部構造によっては吸収による中性子の減衰が大きく、必要な測定時間が増大する懸念があったが、試験的測定の結果、現実的な測定時間で実施可能である見通しが得られている。モーター制御システムについては、安全上の観点から緊急停止機構の導入を実施済みである。また、制御システム構築には既存のPCを使用したが、実際の測定では制御と計測を1台のPCで実行可能とすることが機器のレイアウトから望ましいことが判明したため、今後、必要なスペックのPCを購入する予定である。なお、制御環境の移植は簡単に実行できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、モーターの回転中オペランド中性子回折測定を行うために、これまでに試験的に構築した環境に基づき、モーターの制御とサーモグラフィカメラでの温度計測を行う実測定用システムを構築する。次いで、「匠」を用いた中性子回折実験を実施し、稼働するモーター内部の力学的・熱的負荷の実験的評価を試みる。 得られた中性子回折ピークシフトからモーター内部の力学的・熱的負荷を分離抽出する必要があるが、このためには熱負荷のみがかかった状態のデータ、力学負荷のみがかかった状態のデータ、この双方を参照することが有用と考えている。熱的負荷のみのデータについては、部品を分割した試験片または参照用試料を用い、「匠」に備え付けられている高温機器を使用した測定によって取得可能である。一方、力学負荷のみのデータについては、部品または参照用試料を別のモーターによって回転させながら測定することで得られる。従って、これらの実験の準備をすすめ、実行する。 以上によって現在のターゲットとしている90mm角モーターの評価が可能であることが実証できれば、より大型・大出力モーターの評価に向けて、制御・計測システムの高度化を行う。
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