研究課題/領域番号 |
23K11725
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
金子 晋也 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (70594224)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 近現代建築 / 交通建築 / 地域性 / 北海道 / 札幌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「近現代建造物緊急重点調査事業」を背景として北海道における近現代建築の文化的価値を明確化するため、札幌市街地の土着的な近現代建築の調査を行い、①現存状況等の基礎台帳および年表の整理と、②「建築形態のパターン」の分析を通じた建築表現の客観的指標を開発することを目的とする。また、分析で得た建築表現の指標から「地域性」を明確化することで、近現代建築の保存理論の進展および関連する芸術工学・都市計画学・景観学など空間デザイン研究の進展に貢献する。さらに、作成した資料や図版は、データベースとして整理し、公開講座やリーフレット等一般にもわかりやすい形式で公開する。
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研究実績の概要 |
初年度の2023年度は、札幌市営地下鉄における出入口とバスターミナルまたはバス発着所に接続する建築物を「交通建築」としてとらえ、多分野も含めた先行研究の整理や現地調査を行った。調査は、札幌市立大学・同大学院の学生と協力して行った。調査の結果は、文献資料から札幌市の交通網と市営地下鉄の変遷を年表に整理し、交通建築を札幌オリンピック開催前後に建設されたもの(Ⅰ期)、南北線や東西線が延伸時に建設されたもの(Ⅱ期:概ね1979年まで)、『新札幌市長期総合計画』等に基づき1980年代以降に建設されていたもの(Ⅲ期)として位置付けた。また、市営地下鉄全49駅から24駅で交通建築を確認し、それらの機能と形態から建築的特徴を把握した。これらの調査の成果は、2024年度の日本建築学会北海道支部研究発表会に投稿した(2編)。 また、札幌市内の建築事務所の作品事例に関する調査も行った。調査対象は、岡田鴻記(1907-1981)が設計に関わった〈よいち水産博物館〉(1968)である。この建築は、北海道百年記念事業として建設されたものであり、鉄筋コンクリート造3階建て、外観の和風意匠が特徴である。北海道百年記念事業では、北海道開拓記念館(現:北海道博物館)や北海道百年記念塔(2023年に解体)に加え、北海道14支庁に各1施設が設置されたが、14施設のうち9施設が現存しないか利用されていない。また、岡田の建築作品に関する先行研究では、1960年代までの事例が対象であり、〈よいち水産博物館〉に関する評価は定まっていないことから、青焼き図面をもとにCAD図面を作成し、その建築的特徴を検証した。本調査の成果も2024年度の日本建築学会北海道支部研究発表会に投稿し、口頭発表を予定している(1編)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の計画時には、区役所等の「庁舎建築」の調査を予定していたが、調査を行った学生との議論を通じて、都市の変化との関係が明解な「交通建築」を先行して行った。しかし、対象事例を地下鉄沿線に限ったため事例数が少なく、類型化までは至っていないことから、次年度も継続して検証を行うことを計画している。 また、調査を通じて、戦後の防火建築や共同ビルといった観点からの先行研究を整理し、札幌市における地域的特徴を把握することが課題として把握できた。この点に関しては、北海道の他地域の事例等の比較も検討している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、計画に示した「庁舎建築」または「オフィス建築」の事例収集を行うことを計画している。また、2023年度に調査した「交通建築」については、戦後の防火建築や共同ビルに関する情報を収集し、他地域との比較からと地域的特徴を明らかにしたいと考えている。さらに、近現代建造物に関する研究動向を把握するため、北海道外の研究者との意見交換も行いたい。
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