研究課題/領域番号 |
23K11736
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
柴田 久 福岡大学, 工学部, 教授 (40352083)
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研究分担者 |
池田 隆太郎 福岡大学, 工学部, 助手 (10836109)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 認知機能 / 高齢者 / 散歩 / 環境デザイン / 超高齢社会 / 認知 / 土木デザイン / パターン / コミュニティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、今後の超高齢社会に求められる土木分野を中心とした空間デザイン論の新たな視座として、公共空間を対象とする「認知機能の低下した高齢者にもやさしい土木デザインのパターン」を抽出し、その図像化と体系的整理を行う。また本パターンに基づく土木デザインの景観的配慮に関わる留意点を把握したうえで、福岡市城南区や大分県津久見市等において上記パターンに基づく場の設置を社会実験として行う。さらに本実験に対する認知機能低下高齢者、介護・介助者、地域住民の利用実態とワークショップ等を介した意識調査をもとに、効果の検証と検証過程自体による高齢者サポートコミュニティの構築を試みる。
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研究実績の概要 |
1.ロンドン交通局(TFL)Places for London/スターリング大学Dementia Services Development Centre(DSDC)への訪問調査と知見整理 2023年11月1~9日にかけ、上記TFL職員から屋外環境に関するDesign Principlesについて現地で情報提供を受けた。また上記DSDCを訪問し、認知機能低下高齢者にもやさしいデザインに関する先進的な取組み等の情報収集、具体的なデザイン事例の視察を行った。次に視察結果を踏まえDSDCの「高齢化と認知症のための環境デザイン評価ツール」より屋外環境における検討項目を抽出、その特徴を把握した。また国交省作成の「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」との比較分析から、我が国の課題について考察した。その結果、我が国のガイドラインでは道路付属物に対する役割の違いや移動時の楽しみに関する観点の無さが把握され、安全かつ円滑な移動を念頭により面的な視認性と歩く楽しさへの配慮、その具体的な指針づくりが課題として挙げられた(成果の一部は2023年度土木学会西部支部研究発表会にて発表済み)。
2)第19回景観・デザイン研究発表会での口頭発表 2023年12月8-10日に東京大学本郷キャンパス、中央大学後楽園キャンパスにて行われた標記発表会で「認知機能低下高齢者の散歩行動を促す空間特性と景観デザインの可能性に関する基礎的考察」と題した口頭発表を行った。ここでは福岡市の「宅老所よりあい」等の施設管理者、介助員、施設を利用する認知症高齢者を対象にヒアリング調査等を実施し、認知機能低下高齢者の散歩行動を促す屋外の空間特性等について考察した。その結果、散歩行動を促す空間的特性と保全整備のあり方、包摂的なサポート・コミュニティ形成の重要性、さらに超高齢社会における景観デザインの可能性と課題について指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず当初の計画通り、ロンドン、スコットランドにおける現地視察、情報収集を行えたことが大きな成果と考えられる。DSDCの先進的知見の整理と我が国における認知機能低下高齢者等、交通弱者を対象としたガイドラインとの比較から、我が国の課題について示唆を行い、土木学会西部支部での発表まで行えたことも有益であったと考えられる。さらに福岡市を事例とした実際の認知機能低下高齢者の散歩行動の実態について把握がなされ、学会発表論文としてまとめ、口頭発表まで行えたことも研究の進捗状況として評価できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、DSDCの先進的知見のさらなる整理、認知機能低下高齢者の散歩行動を促す空間特性と景観デザインの可能性に関する基礎的考察について、査読付き研究論文としての投稿を行う。 次に、認知機能低下高齢者にもやさしい土木デザインのパターンの図像・体系化と事例検証として、はじめにこれまでの調査で抽出された土木・公共空間のデザイン的要所をもとに、当該高齢者にもやさしい土木デザインのパターンを抽出する。そのうえでこれらパターンの図像化と体系的整理を行い、既に調査協力を頂いた介護施設周辺を対象に、ケーススタディを行い、有用性の検討を行う。 現時点で想定される成果として、事例対象地の既存交差点や車道、歩道、駅前広場などに敷設された舗装や付属物、歩道沿いの残地やフェンス、段差、高齢者が集う公園の施設配置等の再評価が想定される。
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