研究課題/領域番号 |
23K11738
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
石井 宏一 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (80325894)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 美の原理 / 造形的秩序 / 非線形力学系 / ペンジュラム・パターン / コンピュータ・シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
「美の原理」としての「造形的秩序」は、デザイン学、構成学の視座から体系的、学際的な研究が必要とされる。一方で「生成形体の再現性の確保」と「造形的性質の解析」が不可能なことを起因に従前、造形的秩序に関する研究が困難とされてきた対象が存在する。その一つが単振り子の減衰運動によって生成される「ペンジュラム・パターン」である。 本研究は「非線形力学系」に基づく諸法則の知見の導入と「コンピュータ・シミュレーション」による再現性の確保及び造形的性質の解析方法の開発を通じて、ペンジュラム・パターンに内在する「美の原理」としての「造形的秩序」とその造形的特性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、単振り子の減衰運動の軌跡によって生成される形「ペンジュラム・パターン」に内在する「美の原理」としての「造形的秩序」について、「非線形力学系」に基づく「コンピュータ・シミュレーション」手法の活用によって明らかにすることを目的としている。本目的の達成にあたり、「研究課題1:ペンジュラム・パターンの生成方法の開発」「研究課題2:ペンジュラム・パターンの造形的性質の解析」「研究課題3:ペンジュラム・パターンの『美の原理』としての造形的秩序の解明」という3つの研究課題を設定、3ヵ年の研究期間の初年度にあたる令和5年度は、研究課題1の大半および研究課題2の前半部分を実施した。 研究課題1では、①非線形力学系の活用による「ペンジュラム・パターン」の生成規則のモデル化および常微分方程式化、②「ペンジュラム・パターン」の再現性の確保、③研究課題2の評価指標として、力学の諸法則の活用および造形的秩序の解明の上での有効性、等を確認した。 研究課題2では当該年度実施分の課題として、パイロット研究で顕在化した「形体生成初期に生じる生成形体の『乱れ』」の原因究明に特に焦点を当て、コンピュータ・シミュレーション実験を実施、①「乱れ」は基本的に、振り子運動の減衰過程における「重力」と「速度」をそれぞれ起因とする力の拮抗領域で発生していること、②当該領域では形体生成に影響を与え得る特異な運動周期の変動は確認できないこと、③1、2を根拠に「乱れ」の原因は、従前に主因とされた「錘を吊るす紐のよれ」ではなく、質点運動の拘束条件としての「球面」形状にあるとの仮説が成り立つこと、等を確認した。 以上の結果に基づき、所属学会において研究発表を実施するとともに、次年度以降の研究課題の遂行に支障がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度では3つの研究課題のうち、「研究課題1:ペンジュラム・パターンの生成方法の開発」の大半、「研究課題2:ペンジュラム・パターンの造形的性質の解析」の前半部分を実施し、おおよそ当初の予定通り、実施したと考えている。 一方で、当初の研究計画では、当該年度中に国内外学会誌への投稿を予定していたが、研究課題2におけるコンピュータ・シミュレーション実験のデータ整理および論証に遅延が生じたため、より研究の精緻化を図った上で、次年度において投稿する旨の判断をするに至った。 以上のことから、総合的な研究の推進状況において「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度以降、「研究課題2 ペンジュラム・パターンの造形的性質の解析」の後半部分と「研究課題3 ペンジュラム・パターンの『美の原理』としての造形的秩序の解明」全般について、実施する予定である。 前者においては、非線形力学系および力学の諸法則を活用し、ペンジュラム・パターンの「造形的性質」について明らかにする。その際、コンピュータ・シミュレーションを活用した造形実験を実施した上で、①ペンジュラム・パターンの生成規則と力学の諸法則との相関関係、②質点運動の拘束条件と生成形体の様態との相関関係、等の解明を主眼点とする。 後者については、研究課題1および2で得られた知見に基づき、ペンジュラム・パターンに内在する「造形的秩序」を顕在化した上で、「美の原理」としての「体系化」を行う予定である。特に、①従前において有力とされてきた画法幾何学や解析幾何学等による形体解析手法とコンピュータ・シミュレーションによる解析手法との比較を通じて、ペンジュラム・パターンに内在する「美の原理」としての「造形的秩序」を明らかにするとともに、②本研究の知見がデザイン学・構成学研究においてどのような立ち位置を占めるのか、考察を試みる。
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