研究課題/領域番号 |
23K11752
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
樹野 淳也 近畿大学, 工学部, 教授 (40297594)
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研究分担者 |
石松 一真 滋慶医療科学大学, 医療管理学研究科, 教授 (30399505)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 完全自動運転車 / 車室内デザイン / ドライビング・シミュレータ / 乗り心地 / 動揺病 / タスクパフォーマンス / 自動運転 / 巧緻性課題 / 認知課題 |
研究開始時の研究の概要 |
レベル5の完全自動運転が可能になると,自動車の車室内デザインは大きく変化するものと予想されるが,完全自動運転車の車室内デザインは,乗り心地の良さだけでなく,作業のパフォーマンスを阻害しない環境である必要がある.そこで,本研究では,従来とは異なる自動運転車の車室内デザインが,乗り心地評価および認知・巧緻性パフォーマンスに与える影響について検討する実験を,ドライビング・シミュレータを使用して実施し,最終的には,完全自動運転車の車室内デザインに活かせる知見を見出すことを目指す.
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研究実績の概要 |
外界センサの情報に依存する完全自動運転車では,視界の確保は不要となることから,車室内デザインが大きく変化するものと予想される.しかし,完全自動運転車の車室内デザインの設計に対して,どういったことに配慮すべきなのか十分に明らかになっていないと思われる.そこで,本研究では,完全自動運転車の車室内デザインに対する知見を導くために,ドライビング・シミュレータ(以下,DS)を用いた研究を計画・実行している. 実施した実験内容は次の通りである.まず,外界情報の違いが乗り心地や動揺病に及ぼす影響を確認する実験を実施した.本実験では,全ての画面に外景の映像が映し出される3画面条件と,左右の画面のみに映像が映し出される2画面条件を設定し,道路沿いに建造物がない田舎道を走行するような実験1と,道路沿いに建造物が配置され町中を走行する実験2を実施した.実験参加者に振動ばく露区間通過後に,振動による不快度と酔いの度合いを回答させた結果,実験1では,ほとんどの実験参加者に酔いが発生しなかったのに対し,実験2では酔いが変化する実験参加者が現れた.また,中央のモニタからの映像がない2画面条件で酔いの度合いが強くなった.不快度については,実験1では2画面条件の不快度が低かったのに対し,実験2では,3画面条件の不快度が低くする相反する結果となった.つまり,田舎道を走行する際は前景の情報を遮断し,都会道を走るときは前景の情報を提示するようなシステムにより,振動知覚を調整できる可能性が示唆された. 続いて,画面条件が移動中の乗員のタスクパフォーマンスに与える影響の調査に着手した.本研究では,知的作業を想定した認知課題,手先作業を想定した巧緻性課題を対象とした実験準備に取り掛かってた.この実験の結果より,自動運転車での移動中に行われる作業のパフォーマンスを向上する車室内デザインについて,その指針を導けると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,補助事業期間中に大きく3種類の実験の実施を予定していた.1) 外界の視覚情報が乗り心地や動揺病に与える影響の調査,2) 外界の視覚情報が移動中の乗員のタスクパフォーマンスに与える影響の調査,3) 着座方向が乗り心地評価や作業パフォーマンスに与える影響の調査. 研究の第一年度が終了した時点で,第1の実験結果を得たとともに第2の実験に着手できていることから,研究の進捗としては,おおむね順調に進捗していると判断できる. 具体的には,ドライビング・シミュレータに実験参加者を搭乗させた実験の結果から,都市部を走行する際には,酔いの度合いが変化する実験参加者が現れ,中央のモニタからの映像がない2画面条件で酔いの度合いが強くなった.一方,郊外での走行では,ほとんどの実験参加者に酔いが発生しなかった.また,不快度については,郊外の走行では2画面条件の不快度が低かったのに対し,都市部の走行における3画面条件の不快度が低くなる結果となった.つまり,郊外を走行する際は前景の情報を遮断し,都会道を走るときは前景の情報を提示するシステムの導入により,振動知覚を調整できる可能性が示唆された. 本研究は,近畿大学と滋慶医療科学大学との共同研究であるが,本研究の申請以前から,打ち合わせを頻繁に行っていたことが,スムーズに研究実施のスタートに繋がったと認識している.
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今後の研究の推進方策 |
研究の第2年度にあたる令和6年度では,すでに着手している外界の視覚情報が移動中の乗員のタスクパフォーマンスに与える影響の調査の実験を進めていく予定である. 本研究では,実験参加者に遂行させるタスクとして,知的作業を想定した実行機能課題,手先作業を想定したペグ・イン・ホールの2種類を取り上げている.走行中の実験参加者にばく露される振動の大きさが異なる3つのコース(振動大,振動中,振動小)を作成し,3種類の画面設定条件を掛け合わせた9つの実験条件を設定する.実験参加者の走行中にタスクを実行させ,その遂行にかかる時間を測定し,画面条件,振動条件がタスク遂行時間におよぼす影響について考察する.この実験の結果より,自動運転車での移動中に行われる作業のパフォーマンスを向上する車室内デザインについて,その指針が導き出せる可能性がある. 一方,実験の遂行には,実験補助のための大学院生のマンパワーが欠かせないが,残念ながら令和6年度は本研究に深く関連する研究を実施する大学院生が不在となる.そのため,学部学生に教育を施した上で,実験に取り組む予定である.
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