研究課題/領域番号 |
23K11753
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 利友 武庫川女子大学, 建築学部, 教授 (10388803)
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研究分担者 |
飯塚 公藤 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (10516397)
佐藤 弘隆 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (50844114)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 熊谷家伝記 / 関伝記 / DEM / 空中写真 / 三遠南信 / 鬼 / さざえ堂 / 右繞三匝 / 山間集落 / 城郭石垣 / 曲線 / 定式化 |
研究開始時の研究の概要 |
日本における山間集落の構築や、城郭石垣の設計法に関わる史料に着目し、その中に記述された没入型景観および鑑賞型景観を構成する曲線の設計法を抽出し、GISや数学などを用いてその定式化を行う。そして定式化された曲線を、CADを活用して設計者が容易に生成可能な手法を確立する。以上によって、現実空間における建築や庭園・公園等の建設に先立ち構築される仮想空間に近世以前の史料を活用し、仮想空間でのシミュレーション結果に基づき現実空間を建設するデジタルツインの実現を目指す。これにより、地域の歴史や文化に根差した建築・景観設計の新たな可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
2023年度は下記の1)~4)の研究を行った。 1)従来『熊谷家伝記』における愛知県豊根村富山地区に関する記載を分析してきたが、同じ著者による『関伝記』の記載との比較を行った。その結果、『熊谷家伝記』にて複数の意味で用いられつつ、その意味が明示されていなかった地名である「市原」「大谷」に関して、『関伝記』には両者の関係を明示した記述があること、『熊谷家伝記』における大谷熊谷家と中郷(中ノ郷)鈴木家に関する記述が『関伝記』では加除、修正されているが、その結果複数の疑問点が生じていることを示した。 2)GISを用いて豊根村富山地区の詳細な地形モデルを構築するために、国土地理院の5mメッシュDEM(航空レーザー測量)や過去の空中写真、旧版地形図を用いて作業に取り組んだ。 3)豊根村富山地区を含む奥三河地域の地誌資料や祭りに関する文献を収集した。また『平成祭データ』を基に構築した全国の祭りのGISデータベースから、三遠南信地域の祭りを抽出し、それらの特色や分布状況を分析した。その結果、東三河地域から南信地域にかけて、鬼が登場する祭りが広域的に数多く分布しており、全国的にも東京や広島、宮崎と並んで集中していることが分かった。また三遠南信地域連携ビジョン推進会議の事務局と連携して「三遠南信地域内の民俗芸能に関するアンケート」も実施した。 4)人の知覚、行動特性を考慮した没入型景観の定式化を目指し、螺旋状の建築空間、具体的には江戸時代後期に建設されたさざえ堂(栄螺堂)の分析を行った。長方形の平面をもつ曹源寺本堂、長禅寺三世堂、成身院百体観音堂は、仏教の礼法である右繞三匝に従い、拝観者は各階で右回りに各1回転,計3回転するのに対し、八角形の平面をもつ蘭庭院栄螺堂は、見通しのきかない螺旋状の内部空間を右回りに1回転半する。しかし、角の数と、右回りの回転数の積はいずれも12となることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鑑賞型景観に関しては、本研究で当初予定していた城郭石垣の反り曲線の再定式化、および定式化された曲線をデジタルツインに活用するための手法の解明に、2023年度はほとんど着手できなかった。一方没入型景観に関しては、『熊谷家伝記』に比べてこれまで研究が進展していなかった『関伝記』に関し、記載内容の分析・考察が進展したほか、GISを用いた豊根村富山地区の地形モデルの構築作業も進めることができた。さらに、豊根村富山地区およびその周辺の三遠南信地域の祭りや、江戸時代後期に建設され現存するさざえ堂の空間構成の分析を行い、一定の成果が得られた。以上の研究進捗状況を総合すると,おおむね順調に進展している,と自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)『関伝記』に関しては、『熊谷家伝記』の記載内容とのより包括的な比較、考察を行い、史料としての有効性と課題を明らかにする。 2)豊根村富山地区の地形モデルの構築に関しては、現地において3Dレーザースキャナーを用いて点群データを取得し、より高精度の地形モデルを作成する。 3)三遠南信地域の祭りに関しては、「三遠南信地域内の民俗芸能に関するアンケート」の回答結果の集計作業を進めるとともに、2025年1月3日で最後の開催となる豊根村富山地区の御神楽祭りに関して、三遠南信地域における他の祭りとの関係などの調査を行う。 4)さざえ堂に関しては、堂内の角の数と、右回りの回転数の積が10.5となっている会津さざえ堂について、裏側から堂外に出た拝観者に右回り半回転の歩行行動を誘発していること、これらを合わせると、角の数と、右回りの回転数の積が12以上になっていることを検証する。 5)城郭石垣の反り曲線に関しては、石垣の段数を有限に保ったまま、段数に応じて求まる多角形に最も近い曲線を導出することによって、より史料に忠実な定式化を行う。
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