研究課題/領域番号 |
23K11769
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
浮田 浩行 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (60284311)
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研究分担者 |
寺田 賢治 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (40274261)
笹尾 知世 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (60789733)
富永 正英 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (90437632)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | デジタルアーカイブ / 阿波人形浄瑠璃 / 3次元形状計測 / CT画像 / モーションキャプチャ / デジタルアーカイビング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では日本の伝統文化である人形浄瑠璃を未来に伝え,発展させるためのデジタルアーカイブシステムとその活用方法を検討する.具体的には, 1.人形の外形だけでなく,頭内部のからくりや着物・装飾品も含めた人形全体の形状や色・材質についてデジタルデータ化.VR空間等での活用を検討. 2.1体の人形とそれを操作する3人の人形遣いの動きをリアルタイムで計測し,デジタルデータ化.そして,人形と人形遣いの動きのデータから,機械学習を用いて,初心者と熟練者の動作の違いを解析し,人形遣いトレーニングシステムを構築. 本研究は,他の伝統工芸品のデジタルデータ化や能・狂言・歌舞伎等の動作の記録・解析への応用も期待できる.
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研究実績の概要 |
本研究は,阿波人形浄瑠璃を未来に伝え,発展させるためのデジタルアーカイブシステムとその活用方法を検討するものである.特に,アーカイブ対象としては,木偶人形全体と,人形と人形遣いの動きの2種類についてデジタルデータ化の方法を検討する.そして,一般の方に対して人形浄瑠璃に興味を持ってもらうため,これらのデータを活用したコンテンツの開発・公開も検討する. 本年度は,本研究の1年目であり,まず,木偶人形のアーカイブ方法として,人形の頭を撮影したCT画像から内部のからくり構造も含めて形状等を復元する方法を検討した.特に,頭に用いる釘がCT画像に影響を与えるため,機械学習を用いて精度良く復元する方法を検討した.また,3Dスキャナによる人形全体の形状計測方法の検討や,ハイパースペクトルカメラを用いることで通常のカラーカメラでは区別できない材質の識別が可能であることを確認した.なお,ハイパースペクトルカメラは,メーカーによる貸出サービスの利用を予定していたが,それを利用できなくなったことから,ハイパースペクトルカメラの出張撮影による人形全体の計測を次年度に行うことにした. また,人形遣いの動きを装着型モーションキャプチャ装置と光学式3次元位置計測装置を組み合わせた方法で高精度に計測する方法を開発した.一方,人形の動きについては人間と同じ装着型の装置では計測が難しいことから,必要最低限のセンサを取り付けた人形を製作して動きを計測する方法を今後検討することとした. さらに,徳島県や大阪府,淡路島で人形浄瑠璃の展示を行なっている資料館等10ヶ所を訪問し,展示している人形の種類やその展示方法等についての調査を行なった.ここでの調査結果を元に,今後,データの活用方法を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で目的とする,木偶人形全体および人形と人形遣いの動きについてのデジタルアーカイブ手法とデータの活用方法について1年目の進捗状況を示す.まず,人形の頭のデジタル化において,頭内部に存在する釘のためCT画像中にメタルアーチファクトが生じ,正しく復元できない問題について検討した.ここでは,機械学習による手法で,平均99%程度の精度での復元が可能になった.また,より高精度な復元のため,企業の協力により徳島大学とは別のCT装置で頭の撮影も行った.ただし,このCT画像では画素値の補正が必要であり,今後,補正方法の検討を行う. また,3Dスキャナを用いた人形の体全体の計測方法を検討し,人形全体を16ヶ所程度に分けて計測・統合することで可能であることが分かった.さらに,ハイパースペクトルカメラ(以下,HSC)を用いることで,カラーカメラでは区別できない髪や着物の黒い部分も材質毎に識別できることを確認した.しかし,予定していたHSC貸出サービスが終了し,費用が高額な出張撮影サービスのみ可能であったため,HSCによる人形全体の撮影は次年度に持ち越すこととした. 人形遣いの動きについては装着型モーションキャプチャ装置と光学式3次元位置計測装置を組み合わせることで,3人の動きを精度良く計測する手法を開発した.一方,人形の動きは当初,人間と同じ装着型の装置の導入を予定していたが,価格が予定の2倍以上となっていたため導入中止とし,最低限のセンサを人形に取り付けて計測する方法を今後検討することにした. また,徳島県や大阪府,淡路島で人形浄瑠璃を展示している資料館等を訪問し,人形の種類や展示方法等について調査を行なった.この調査結果を元に,今後,データの活用方法を検討する. 以上から,1年目に計画した内容で2年目に持ち越す内容もあり,予定よりやや遅れている点もあるが,2年目で十分に進められると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
木偶人形全体および人形と人形遣いの動きのデジタルアーカイブ手法と,データの活用方法について,2年目の令和6年度は,以下の内容を進める. まず,CT画像を用いた人形の頭の復元については,複数のCT装置による撮影結果を元に,より高精度な復元方法を検討する.特に,頭を構成する材質の識別だけでなく,からくりの部品ごとに形状データを抽出する方法を検討する.また,人形の手足についても,CT画像から復元する方法を検討する.さらに,人形全体のアーカイブデータ取得のため,3Dスキャナとハイパースペクトルカメラを併用し,3次元形状や表面の色,材質の識別を行う.効率的な計測のためにはスキャナやカメラを自動的に移動させる必要があり,他の研究で使用していたスライダ装置が使用可能であることからそれを用いた方法を検討する. 人形と人形遣いの動きの計測については,人形の動きを正確に求めるため,センサを内蔵した人形の製作を進める.そして,人形の動きを計測できるようになったら,徳島県立阿波十郎兵衛屋敷で講演されている一座に協力していただき,人形を用いた上演時の動きを計測し,人形の動きと人形遣いの動きの関係について機械学習を用いた解析を行い,人形遣いの熟練者と初心者についての動きの違いを示す方法を検討する.なお,他所においては,人形1体を一人の人形遣いで操作する人形浄瑠璃(八王子車人形)があり,本研究で所有する装着型モーションキャプシャ装置にて人形・人間とも計測できることから,阿波人形浄瑠璃以外の動作計測およびその解析についても検討する. また,データの活用方法として,得られたデータを用いたVRコンテンツを検討し,それを公開するためのWebサイトを構築する.また,一般の方が参加できるようなワークショップの開催についても検討を行う.そして,今年度の検討内容ついて学会発表を行う予定である.
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