研究課題/領域番号 |
23K11781
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
溝口 佑爾 関西大学, 社会学部, 准教授 (80780569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 被災写真 / 写真理論 / ビッグデータ / 深層学習 / 画像解析 |
研究開始時の研究の概要 |
AI技術と倫理の両立というジレンマは、写真データの次元では、近年盛んな深層学習による非言語的な画像解析と、専門家の鑑識眼をもって総合的かつ論理的にアプローチする既存の写真論との乖離という形で現れる。本研究では、参照データの偏りに起因する2分野の乖離を架橋するために、自然災害に起因して無作為な抽出がなされたヴァナキュラー写真(一般人による日常写真)の群である「被災写真」に着目する。その構造をできる限り保ちながら被災写真を資料化する試みを通じて、写真データの偏りを測るための試金石を得ることが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
本研究は、その構造をできる限り保ちながら被災写真を資料化する試みを通じて、写真データの偏りを測るための試金石を得ると共に、非言語的な特徴量に着目して解析を行う 写真の「考古学」の基盤を構築することを目的としている。2023年度は被災写真の位置付けについて理論的な考察を行い、その成果を2本の学術論文として公表した。溝口(2024a)では被災写真の災害アーカイブの中における特殊性を論じ、記録意図が限りなくゼロにちかい災害アーカイブの特徴とその発展性について述べた。溝口(2024b)では写真の理論的研究における被災写真の特殊性を論じ、ミシェル・フーコーによる人文的な「考古学」を、エルキ・フータモやユッシ・パリッカらが進めるメディア考古学とは異なる形に発展させる可能性が被災写真研究に含まれていることを確認した。当初2023年度に予定されていた被災写真の資料化に関する検討は、予期せぬ事態により次年度以降への延期を余儀なくされたが、想定外の事態に遭遇しながらもそれによる中断を最小限に抑え、研究目的の達成に資する研究を質を損なうことなく蓄積することができた点で、研究は概ね順調に進展していると言える。
2023年度に発表された学術論文は下記の通りである。 溝口佑爾 (2024a) 「被災写真:予期せぬアーカイブとしての」高森順子編『残らなかったものを想起する:「あの日」の災害アーカイブ論』堀之内出版: 72-111. 溝口佑爾 (2024b)「写真の<考古学>とその設計」『考古学ジャーナル』794: 35-43.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の達成に資する研究を、その質を損なうことなく蓄積することで、研究の継続性を保つことができた点で本研究課題は概ね順調に進展している。2023年度に予定されていた被災写真の資料化について検討は、当初想定していなかった事態が発生したために延期を余儀なくされた。この状況を受け、研究計画を見直し、代替策として被災写真の位置付けについての理論形成およびその成果のアウトプットに焦点を移した。この変更により、2本の学術論文を執筆し公表することができた。以上のことから、想定外の事態に遭遇しながらも、それによる中断を最小限に抑え、質を落とすことなく研究を進行できたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は計画通り、海外における事例研究を実施し、現地の研究者との意見交換を通じて新たな知見を得る。2025年度は、被災写真の具体的な保存方法について検討を深めるとともに、2023年度に予定していたフィールドワークを実施し、被災地における写真の保管・活用方法についての考察を進める。2026年度は、これまでの研究成果を総括するための研究会を開催し、報告書の作成を通じて得られた知見を集約する。
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