研究課題/領域番号 |
23K11791
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
戸張 靖子 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (90453919)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 家禽化 / ジュウシマツ / コシジロキンパラ / シマキンパラ / 次世代シークエンス / 全ゲノムシークエンス / RNA-seq |
研究開始時の研究の概要 |
動物の社会は、協力行動によって成立すると考えられるが、協力行動が生じるためには「寛容性」が重要であることが明らかになってきた。ジュウシマツは子育て上手な形質が好まれ、260年前に中国から輸入されたコシジロキンパラから作出されたと考えられている。実際、ジュウシマツは他の鳥の仮親として利用され、他種のヒナであっても上手に育て上げる。本研究では、他種を家族として受けいれるという極めて高い寛容性を持つジュウシマツを対象に、(1)祖先のコシジロキンパラと近縁種のシマキンパラの全ゲノム比較と(2) コシジロキンパラとジュウシマツの視床下部のRNA-seqから寛容性に関わる遺伝基盤を明らかにする。
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研究実績の概要 |
公的データベース上で公開されているジュウシマツのゲノムデータ(GCF_005870125.1, lonStrDom2, ゲノムサイズ: 約1Gb)を基に、申請者らが取得した、麻布大学の繁殖コロニー由来のジュウシマツ、台湾野生由来のコシジロキンパラ、台湾野生由来のシマキンパラのゲノムDNAの次世代シークエンスのショートリード・データでのゲノム情報比較から、ジュウシマツの起源に関する、(1)近親交配起源仮説:ジュウシマツがコシジロキンパラの家畜化型であり、単に近親交配によって発生した、と(2)交雑起源仮説:コシジロキンパラが混群をつくるシマキンパラと交雑してジュウシマツを生み出したという2つの仮説の検証を試みた。ゲノム全体におけるhetero/homo snpおよびheterozygosityの整理、遺伝子領域間の比較を行った結果、(1)近親交配起源仮説:ジュウシマツがコシジロキンパラの家畜化型である可能性の方が高いことが示唆された。 ジュウシマツにおける人為選択による選択的一掃の痕跡を探るため、研究代表者が取得したre-seq dataに加えて、公開されているジュウシマツ5個体分、コシジロキンパラ2個体分のdata(ジュウシマツ合計6個体; コシジロキンパラ合計3個体)、ならびにジュウシマツの参照ゲノム配列(GCF_005870125.1)を用いて、各集団の多型(SNP)dataを取得し、塩基多様度(π)に関するゲノムスキャン法を適用することで、コシジロキンパラ集団に比べてジュウシマツ集団で塩基多様度が著しく低下しているゲノム領域を探索した。その結果、当該ゲノム領域が約15Mb分(上位1% window分)検出され, その上に349遺伝子が存在し, そのうち263遺伝子でそのCDS領域がoverlapしていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジュウシマツの家禽化に関連する可能性が考えられた遺伝子としてリスト化された263遺伝子のなかには、学習能力の向上に関与している遺伝子Xが含まれていた。大脳、間脳、中脳、小脳、橋・延髄ごとに、XのmRNA発現量を定量的PCRにより比較を行ったところ、小脳においてコシジロキンパラのmRNA発現量が高いことが明らかにした。 ジュウシマツの家禽化に関係する因子をさらに絞りこむため、研究代表者は、ジュウシマツの3集団から雄ジュウシマツ18個体分、1980年代に日本で作出された和パールジュウシマツ(複数のキンパラ属とのハイブリット)5個体分、台湾野生由来の雄コシジロキンパラ15個体分のre-seq data(150PE、8Gb分)を取得した。この過程で、ジュウシマツとコシジロキンパラの雌雄判定を行うために、最適化したPCR法を確立し、その内容をまとめたものを鳥類内分泌研究会で口頭発表とOrnithological Science誌へ投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
1.2023年度に取得した、雄ジュウシマツ18個体分、和パールジュウシマツ5個体分、台湾野生由来の雄コシジロキンパラ15個体分のre-seq data(150PE、8Gb分)を解析に加えて、ジュウシマツの家禽化に関係する因子をさらに絞りこむ。 2. 1.で絞り込んだ因子をRNA-seqやqPCRを使って発現解析をおこなう。 3.ジュウシマツ、コシジロキンパラ、シマキンパラのゲノムを鋳型にランダムプライマーを用いてPCRすることにより、 ゲノムワイドに増幅されたアンプリコンを次世代シーケンサーで解析した(2023年度)。2024年度はそのデータを用いて、SNPマーカーの検出から系統樹解析およびstructure解析を行い、遺伝的指数の算出する。
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