研究課題/領域番号 |
23K11801
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐藤 大介 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (60536960)
|
研究分担者 |
宮本 理人 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 准教授 (60456887)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 末梢交感神経 / 機能的電気刺激 / 糖取り込み / 高脂肪食 |
研究開始時の研究の概要 |
耐糖能障害や糖尿病に対する有効な治療法の社会的ニーズは非常に高く、運動や投薬による良好な血糖コントロールは、糖尿病の進展や合併症予防の主軸とされている。その一方で、高齢化社会を背景に、長時間の運動が困難である患者が今後増加する可能性が高い上に、投薬による治療であっても、注射剤使用時の苦痛や低血糖等の副作用は依然として存在する。 本研究では、投薬や運動によらない全く新しい糖代謝制御法として、末梢交感神経系の人工的な賦活を提案するべく、その基礎段階として、病態モデル動物での末梢交感神経電気刺激の糖取り込み亢進効果・血糖値低下効果を検証するとともに、その作用メカニズムについても詳細な検討を行う。
|
研究実績の概要 |
交感神経系が末梢の糖取り込みに関与する可能性が指摘されており、先行研究では、ラット末梢交感神経への電気刺激が糖取り込みを亢進することを明らかにした。そこで本研究では、末梢交感神経の賦活を介して血糖を人工的に制御する手法の開発を目指して、ラット末梢交感神経への電気刺激が糖代謝系に及ぼす影響について検討した。 実験には標準食または高脂肪食で飼育したラットを用いた。麻酔下にて片側後肢坐骨神経へマイクロニューログラム法を適用することで交感神経信号を導出し、導出に用いた微小電極を介して60分間の電気刺激を行った。 その結果、標準食群の血漿イリシン濃度は電気刺激開始から60分後に有意に上昇したが、高脂肪食群では有意な変化はみられなかった。刺激側及びその対側の骨格筋を摘出し、リン酸化AMPKのタンパク質発現量を測定したところ、標準食及び高脂肪食群ともに、電気刺激はAMPKのリン酸化を抑制する傾向にあった。白色脂肪組織では、標準食群においてミトコンドリアマーカー遺伝子であるCOX IV mRNAの発現が電気刺激によって促進する傾向にあり、脂肪組織中トリグリセライド含有量は減少傾向にあったが、高脂肪食群ではこのような傾向はみられなかった。 以上のことから、ラット末梢交感神経電気刺激が亢進する糖取り込み作用において、骨格筋より分泌されるマイオカインであるイリシンが肝臓や脂肪組織に作用し、糖取り込みの促進に寄与している可能性が示唆される一方で、少なくとも骨格筋でのAMPKを介した系での糖取り込みシグナルはむしろ減弱する傾向にあった。また、この電気刺激は脂肪組織でのミトコンドリア生合成を促進することで脂肪燃焼を惹起する可能性を示すデータが得られたが、高脂肪食はこの作用を抑制する可能性も示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はストレプトゾトシン投与によってインスリン分泌能を破壊した糖尿病モデルラットを作製して実験に用いる予定であったが、当該モデル動物は多尿を呈するために、床敷の頻回の交換など飼育環境の綿密なケアが必要であった。その一方で研究用試薬やその他消耗品全般の想定外の値上げにより動物飼育環境の整備が不十分となり、結果として十分な数の糖尿病モデルラットの飼育ができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定としては骨格筋での糖取り込みシグナル伝達経路を調べ、末梢交感神経系による糖取り込みメカニズムを明らかにする予定であったが、末梢交感神経電気刺激は骨格筋での糖取り込みをむしろ抑制する可能性を示唆するデータが得られたため、今後は骨格筋以外の組織、具体的には肝臓及び脂肪組織での糖取り込みについて検討していく。方法は試薬の価格が高騰しているウェスタンブロット法から、より安価な2-デオキシ-D-グルコースをトレーサーとする糖取り込み速度の定量に切り替え、生じた余剰予算は、現在遅れがみられるストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットを用いての実験に振り分けられることになるため、今後はこの実験を重点的に推進し、当初の計画を達成する。
|