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細胞膜中の微小孔集団を支配する力学の解明:細胞膜穿孔の最適化に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 23K11804
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分90110:生体医工学関連
研究機関大阪大学

研究代表者

重松 大輝  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50775765)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
キーワード分子動力学シミュレーション / リン脂質二重膜 / 微小孔 / 分子動力学法 / 破断
研究開始時の研究の概要

電気刺激や超音波を用いて,生きた細胞に多数の微小な孔を開け,薬剤などを細胞内へ入れる技術は40年以上,医療・細胞生物学分野で利用されてきた.その一方で,外部刺激による孔の形成とその後の孔の挙動は完全には明らかになっていない.本研究では,特に孔同士の相互作用に着目し,孔自体と孔集団としての特性を明らかにする.特に,分子スケールでの個々の孔の挙動特性,多数の離散的な孔の挙動,細胞スケールでの連続体としての孔分布の変化,を解明する.以上から,個々の孔がどのような力学の下に支配されているか,集団としてどのような特性を持つのか,を理解し,様々な刺激条件下での孔挙動と膜の特性の変化を明らかにする.

研究実績の概要

本研究では,電気刺激や超音波で人為的に形成された細胞膜の微小孔の特性を,特に孔同士の相互作用に着目し,分子から細胞スケールまでのマルチスケールで孔自体と孔集団としての特性を明らかにすることを目的としている.2023年度では,個々の孔の挙動特性について分子スケールで調べた.
孔形成過程の最初期の現象として,細胞膜のリン脂質二重膜中に水分子が侵入し,膜を貫通する水の通路が形成される.そこで,組成が異なる膜に様々な大きさの引張負荷を与えた際に水分子が膜内へ侵入する際のエネルギ障壁の高さを分子動力学シミュレーションで調べた.その結果,コレステロールを含有する膜では引張の大きさにより,エネルギ障壁の高さが劇的に変化することが分かり,引張による膜の相状態の変化と関連することを明らかにした.この結果は,Journal of Biomolecular Structure and Dynamicsに掲載された.
力学的負荷による孔形成過程の元となりうる膜特性の変化を明らかにするために,せん断流れが膜に与える影響を調べた.せん断流れ下の膜に生じる圧力テンソルから,せん断流れによって膜に負の張力が発生していることが示した.この結果は過去の理論的な予想と一致しており,せん断流れ下での膜特性を明らかにする基盤となると期待される.この結果は,The Journal of Chemical Physicsに掲載された.
最後に,孔同士の相互作用について明らかにするために,複数の孔が形成されている膜系を構築し,時間発展に伴う孔径の変化について調べた.その結果,最も大きい孔の孔径は増加し,他の小さい孔の孔径は減少してゆき消失した.このことから,孔の側壁に作用する単位側壁長あたりのエネルギ損失の大きさは孔径に依存しており,孔径が小さい方がエネルギ損失が大きいことが見積もられた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度では,孔形成過程の最初期段階についてとせん断流れ下における膜特性の変化を明らかにし,それらの結果が国際学術誌に掲載された.また,複数の孔の間での相互作用についても計算を行っており,個々の孔の挙動と孔間の相互作用について明らかになりつつある.以上のことから,「おおむね順調に進展している」といえる.

今後の研究の推進方策

2024年度では複数の孔が存在する状況での孔挙動について明らかにしていく.孔径や孔間の距離の変化に伴う自由エネルギの変化を拡張アンサンブル法により取得する.また,孔径や孔間距離の変化の速さを揺動散逸定理より求める.自由エネルギ変化は孔径や孔間距離を変化させる際に孔に生じる疑似的な力に相当し,変化の速さは疑似的な粘性や質量などに相当する.本研究ではこれらの推定値の妥当性の評価のために,マルコフ連鎖モデルをベースとした手法と長時間のMD計算での直接的な数値観察から,自由エネルギ変化と変化の速さに相当する値を求めて比較する.孔の拡散については,長時間のMD計算から直接算出する.以上から,原子・分子の集合体の中で表現された孔を”孔”という1つの要素と見た場合に,どのような物理的特性(疑似的な質量や粘性)を持ち,どのような相互作用(疑似的な力)を受けるのかが明らかになる.
孔を半径が変化する一つの仮想的な粒子として扱う数理モデルを構築する.ランジェバン方程式を支配方程式として,孔間に働く力,孔の疑似的な質量や粘性係数などはMD計算から取得した値を元に決定する.電気刺激や膜に生じる張力の大きさなどを変更した様々な条件の下で数値計算を繰り返し,孔の大きさや数の時間発展を収集し,孔の集団としての特性を明らかにする.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Shear-flow-induced negative tension of phospholipid bilayer: Molecular dynamics simulation2023

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu T, Koshiyama K
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 159 号: 1 ページ: 014901-014901

    • DOI

      10.1063/5.0153167

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Changes in free energy barrier for water permeation by stretch-induced phase transitions in phospholipid/cholesterol bilayers2023

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu T, Koshiyama K
    • 雑誌名

      Journal of Biomolecular Structure and Dynamics

      巻: N/A 号: 17 ページ: 1-8

    • DOI

      10.1080/07391102.2023.2250447

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] リン脂質二重膜内におけるSHG用色素分子の分子動力学解析:SHG輝度計測による細胞膜損傷評価に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      重松 大輝, 高木 麗弥, 篠田 裕也, 氏原 嘉洋, 杉田 修啓, 中村 匡徳
    • 学会等名
      日本機械学会 2023年度 年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 分子動力学シミュレーションによる脂質二重膜の層間でのAp3移動速度の評価:SHGイメージングによる細胞膜損傷度評価に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      篠田 裕也, 重松 大輝, 氏原 嘉洋, 杉田 修啓, 中村 匡徳
    • 学会等名
      第62回日本生体医工学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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