研究課題/領域番号 |
23K11809
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛栄 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50386744)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 癌転移 / 子宮内膜癌 / パッチクランプ法 / HEC-50B / Ishikawa Cell |
研究開始時の研究の概要 |
子宮内膜癌患者では再発した場合,死亡原因の51%が遠隔転移によるものである.これを改善して多くの命を救うには,癌転移の分子病態を解明し,効果的に転移阻害する新規化合物の創出が喫緊の課題であり,社会的意義が極めて高い.癌治療戦略の観点から,転移先での浸潤・定着を阻害するよりも転移能の獲得を阻害することが効果的である.しかし,癌細胞における電気生理学特性・力学特性がどのような機序で浸潤・転移能に関与するのか学術的な問は不明である.本研究では新規タンパク質ダイカルシンによるヒト子宮内膜癌細胞に対する浸潤・転移能阻害作用の分子メカニズムを電気生理学特性・力学特性の共役という新しい視点により解明する.
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研究実績の概要 |
生活の変化などから子宮内膜癌の発生・死亡は我が国においても近年着実に増加している.子宮内膜癌患者では再発した場合,死亡原因の51%が遠隔転移によるものである.このことから,癌転移の分子病態を解明し,効果的に転移阻害する新規化合物の創出が求められる.本研究課題では浸潤・転移における分子メカニズムを電気生理学特性・力学特性の共役という観点で解明することを目的としている. 癌細胞は,原発巣で周囲組織に接着している状態に上皮間葉転換(EMT)という形質転換が起こることで,高い運動能を獲得し,浸潤・転移が可能になることが知られている.この過程において,細胞膜は膜タンパク質を介した細胞内外の接着情報およびイオン輸送を担う.したがって,細胞膜の電気生理学特性・力学特性は,細胞外の情報を細胞内に伝達する際にきわめて重要な因子であると考えられる.このことから,最初にEMTによる形質転換により記録される電流に違いがあるのかを検討した.予備実験では継代培養直後の細胞を標本としていた.この場合,EMTによる形質転換の指標が皆無であった.そこで新たに標本としてHEC-50B細胞の継代培養後一日から三日間培養したものを用いた.培養細胞は形態学的に多角形と紡錘形のものに分類できた.これらの細胞にホールセルパッチクランプ法を適用し,記録した電流-電圧曲線を比較したところ,外向き電流の振幅は多角形の細胞が紡錘形のものより有意に大きかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験ではHEC-50B細胞とIshikawa細胞を用いた.その結果,HEC-50B細胞とIshikawa細胞ともに記録される電流はダイカルシン処理により修飾を受けた.また,HEC-50B細胞とIshikawa細胞の電流-電圧曲線を比較したところ,HEC-50B細胞で記録される外向き電流がIshikawa細胞で記録される外向き電流より有意に大きかった.しかし,これらの結果は継代培養直後の細胞から記録したものであった.この実験条件では細胞は基本的に球形になっているために均一な状態である.このままではEMTによる形質転換によって電気生理学特性が変化しているのかを検討することができないと考えられた.そこで先行研究を調べたところ,癌細胞におけるEMTによる形質転換は間葉上皮転換(MET)による形質転換でもとに戻り,形態・機能が変化することが報告されていた.パッチクランプ法による電流記録を行うためには目視をしながら標本細胞にガラス電極を接触させる必要がある.そのために実験条件を変更することにした.予備実験で用いた継代培養直後の細胞ではなく継代着培養後一日から三日間培養した細胞から記録することにした.継代培養直後の細胞とは異なり,継代培養後一日から三日間培養したHEC-50B細胞は多角形(円形)と紡錘形の二種類の形態に分類できた.しかし,これらの細胞からパッチクランプ法で記録するには膜の状態が予備実験とは異なっていたため,安定した記録が得られるのに時間がかかってしまった.当初の計画では同様の検討をIshikawa細胞でも行なう予定であった.
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今後の研究の推進方策 |
実験条件を変更した結果,継代培養後一日から三日間培養したHEC-50B.細胞において細胞の形態(多角形・紡錘形)により記録される電流-電圧曲線の外向き電流の振幅は有意に異なっていた.次年度は当初の計画通り別標本であるIshikawa細胞でも同様の検討を行う.先行研究では形態の違いが形質転換を反映していると報告しているが,我々が使用している細胞での報告ではない.そこで次年度は抗体を用いて形質転換と形態の相関性を検討する.さらに,ダイカルシン処理が形態の違いにより電気生理学特性の修飾作用が異なるのかを検討する.並行して,ダイカルシン処理により形質転換マーカーの分布が変化するのかを検討する.
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