研究課題/領域番号 |
23K11825
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
関谷 佐智子 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (00398801)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オルガノイド / 糸球体 / 血管 / 腎臓 / 腎オルガノイド / 臓器特異的血管 |
研究開始時の研究の概要 |
脳などの多種細胞から形成される複雑な臓器・組織のオルガノイドは、生体外培養時、成体レベルに達しない未熟な構造である。腎オルガノイドにおいても、ヒト腎糸球体血管の機能的高次構造が生体外培養では得難い。そこで本申請研究は、培養時、胎児期における腎臓への血流を模倣したかん流刺激付与を行い、糸球体血管周辺の自己組織化を促進、メザンギウム細胞の誘導を含めた糸球体血管の機能的高次構造化を目的としている。本申請研究はかん流刺激による自 己組織化促進を目指す取り組みであり、独創性が高く、再生医療における 腎オルガノイドの移植・治療効率の推定や、創薬研究における有効性・毒性試験への応用が期待できる。
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研究実績の概要 |
腎オルガノイトは、in vitroにおいて未熟な構造であり、生体内ヒト腎糸球体血管様の機能的高次構造が得難い。本申請研究は、in vitroで腎オルガノイドへ生体内を再現したかん流刺激付与を行い、生体外での糸球体構造の自己組織化・メザンギウム細胞の導入を含めた高次糸球体血管構造構築を目的としている。 本年度は生体内への移植腎オルガノイドにおける糸球体血管形成を指標として糸球体血管構築のための条件検討を試みた。腎オルガノイド誘導は既報の手法を応用し、糸球体血管形成の促進される培養条件や移植時期の検討を行った。その結果、腎オルガノイド誘導培養16日目が11日目と比較して腎組織の発達がintravital imagingにて観察された。また、培養条件において気液界面培養より、培養液中培養オルガノイドにおいて糸球体血管形成が促進された。しかしながら、尿細管様構造は気液界面培養後のオルガノイド移植後促進されていた。さらに、移植後形成されるボーマン嚢内にて血流の渦流形成が血流イメージングで確認され、メザンギウムを携えた糸球体構造もその後確認されることから、血流による糸球体血管の壁に対する厚み方向の圧力が糸球体構造の発達に関わる可能性が考えられた。 また生体内への移植腎オルガノイド内での糸球体血管構造は、iPS細胞から誘導する血管内皮細胞とその周囲細胞の集団の混合により促進されるが、in vivoではマウス血管による糸球体血管形成が多く観察された。今後は、iPS細胞から誘導する血管内皮細胞とその周囲細胞と腎オルガノイドをin vitroにて培養し、生体外での糸球体血管構造構築に条件を探索(圧力、流量)し、生体外糸球体血管発達の条件を見出す。得られる知見は発生学、腎オルガノイドを用いた再生医療、創薬研究における糸球体血管への有効性・毒性試験への寄与が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに、ヒトiPS細胞からの腎オルガノイド誘導を既報(Takasato 2015 Nature)を参考にし、検討を行った。iPS細胞へのCHIR99021処理時期、濃度・処理期間の検討を行い、腎臓分化特異的遺伝子発現にて誘導の確認を行った結果、PAX2やGDNFは11日目から発現上昇が確認され、誘導16日目にてポドサイトマーカーのネフリン発現の増大が確認された。また、免疫染色によって、気液界面培養では発達した管構造が確認されるが、培養液中で誘導したオルガノイドでは管形成は少ないがいずれも近位尿細管マーカーのLTLとポドサイトマーカーのネフリン陽性の上皮細胞構造が確認された。CD31陽性細胞も誘導11日目から確認された。 本年度は腎オルガノイドの生体内移植による血流導入を試み、糸球体血管形成を指標にして成熟化のための移植条件を検討した。血流導入は免疫不全マウスの脳表部血管網を血管床として観察窓を作成、培養期間や条件の検討を行った。その結果、気液―界面での培養腎オルガノイドでは尿細管構造が、培養液中での培養腎オルガノイドでは糸球体血管構造の誘導が観察される傾向が確認された。さらに移植時期は誘導11日目では腎組織発達が乏しくなり、16日目移植が最も適していることが明らかになった。また、iPS細胞より誘導する血管細胞(血管内皮細胞および間質細胞)を共移植した際、メサンギウムが導入された発達した糸球体血管構築が促進されることが確認された。このことから、血管細胞がマウス生体血管に影響し、糸球体血管構築を促進する可能性が示唆され、概ね計画に沿った進行状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた糸球体血管構築の条件を基準として、①生体外での糸球体血管に必要な血管細胞種の選択、腎オルガノイドとの共培養・連結に必要な培養条件の探索、②生体内での糸球体血管導入時の流体刺激を参照、灌流調整にて、糸球体血管導入を試みる。 ①に関しては、前年度までに移植に用いたiPS細胞誘導血管内皮細胞およびHUVECを比較対象細胞として、共培養を行い、培養液の条件をVEGF、FGF、HGF等添加因子の調整を行い検討する。さらに、流体を通す管腔構造を形成させるために細胞外マトリックスのゲルおよび流体負荷を試みる。①の条件が確定させ、②の灌流培養においては、生体内糸球体血管形成時における応答因子として注目する血管平滑筋細胞やメサンギウム細胞発現PIEZO2の発現量や発現部位の解析を行い、生体内外での比較を行うことで生体外での刺激応答状態を明確にする。生体内外での発現部位の同等性や、PIEZO2の灌流刺激応答と、ポドサイトへの血管内皮細胞の侵入から始まる糸球体血管形成過程の関係を生体外にて解析することで、機能的糸球体血管形成に必要な物理刺激を明確化、生体外にて糸球体疾患モデルや毒性試験等に有用な組織構築を目指す。
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