研究課題/領域番号 |
23K11826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡本 博之 金沢大学, 保健学系, 准教授 (20272982)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | X線位相イメージング / 繊維組織 / 散乱 / 異方性 / 放射光 / 分解能 / 位相イメージング / X線 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、X線位相イメージング法を用いて繊維組織を観察する際の、検出能の評価方法を確立することである。 近年、筋肉のような繊維状の組織をX線位相イメージング法により観察することが可能となってきた。しかし、繊維組織を観察する能力については、その概念さえも提案されていない。そこで本研究では、繊維組織の検出能の概念を提案し、それを元に評価用試料を作製する。その後、評価用試料を使って、実験装置の諸条件を変化させ、検出能力の変化を調べる。それらと、既に様々な研究で得られている知見とを比較し、本手法が有効であることを確認する。得られた成果により、装置の能力を最大限引き出すことが可能となる。
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研究実績の概要 |
令和5年度では、本研究課題における第1段階の重要な目標であった、高エネルギー加速器研究機構(KEK)に利用申請を行い、課題(2024G097)が採択された。そこでKEKにおいて当該年度内に2回、位相イメージング法の標準的方法とされるSi単結晶の回折を利用した方法と、簡易的な単スリットを用いた方法により実験を行った。この実験で、既存の光学系に我々が開発した試料方位を制御するための回転機構を組み込むことで、散乱X線の異方性、すなわち試料における繊維性の強さを検出し画像化することが可能となった。 一方で、本研究課題申請時点では繊維組織の検出能を評価するための試料として圧縮したメラミンスポンジを使用予定であったが、その後の調査でリニアプリズム板を用いることで、より容易に定量的な評価が出来る可能性が有ることが分かった。そこで当初の予定を変更し、X線の散乱の大きさ、および繊維性の強さ(散乱の異方性)をリニアプリズム板により制御出来るかどうか確認することとした。その結果、リニアプリズム板を重ねる枚数を変化させることで散乱の大きさを、重ね合わせる角度を変化させることで散乱の異方性を独立に制御出来ることが分かった。この結果より、リニアプリズム板を使用することで散乱の大きさと散乱の異方性を2因子とした際の繊維組織を検出可能な条件の限界値、すなわち分解能を探索することが可能であることを確認できた。 さらに、データ数は少ないが、上記方法を使って散乱の大きさと散乱の異方性を2因子とした際の分解能曲線の一部を検出することも出来た。その成果の一部は雑誌Journal of wellness and health careで報告するとともに、第37回日本放射光学会年会(兵庫県姫路市)で発表した。 以上より、当初予定していた方法とは異なるが、X線位相イメージング法により繊維組織を観察する際の検出能をより定量的に評価する方法を見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度において、本研究課題における第1段階の目標であった、異なる原理のX線位相イメージング法により繊維組織を検出し画像化することについては達成できた。加えて、異方性を制御した試料により繊維組織の検出能評価が可能であることも確認できた。つまり、繊維組織の検出能とはX線の散乱の異方性を検出する能力であるという概念を確認することが出来た。その際、繊維性の強さを制御するための試料として、当初予定していた圧縮したメラミンスポンジではなく、リニアプリズム板を使用することで、より容易に定量的な分解能評価が可能で有ることを見出した。すなわち、リニアプリズム板を重ねる枚数を変化させることで散乱の大きさを、重ね合わせる角度を変化させることで散乱の異方性を独立に制御出来ることが分かった。このことにより、散乱の大きさと散乱の異方性を2因子とした際の繊維組織を検出可能な条件の限界値、すなわち分解能を探索することが容易となった。 さらに、データ数は少ないがSi単結晶の回折を利用した方法を使用し、上記方法により散乱の大きさと散乱の異方性を2因子とした際の分解能曲線の一部を検出することも出来た。その成果の一部は雑誌Journal of wellness and health careで報告するとともに、第37回日本放射光学会年会(兵庫県姫路市)で発表した。 以上の研究より、X線位相イメージング法によって繊維組織を検出する能力とは何かという概念を提案し、リニアプリズム板を使用することで繊維組織の検出能を定量評価する方法を見出すという成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度において、リニアプリズム板を使って異方性を制御した試料により繊維組織の検出能評価が可能であることを確認できた。また、データ数は少ないがSi単結晶の回折を利用した方法を使用し、散乱の大きさと散乱の異方性を2因子とした際の分解能曲線の一部を検出することも出来た。 そこで、令和6年度ではKEKにおいて頂角が異なるリニアプリズム板や、それを重ねる枚数、重ね合わせる角度を色々と変化させつつ繊維組織(X線の散乱の異方性)の検出が可能な条件と不可能な条件を探索する実験を行う。その結果から、繊維組織が検出可能な限界値をもとめる。つまり、散乱の大きさと散乱の異方性を2因子とした際の分解能曲線をもとめる。このような実験を、Si単結晶の回折を利用した方法、単スリットを用いた方法で行う。このことにより、異なる原理の位相イメージング法でも繊維組織を検出する分解能の評価が可能であることを確認し、それらの分解能の違いを調べる。 上記のような実験を行うにあたり、散乱の大きさと散乱の異方性を2因子として様々な条件での測定が必要となる。つまり、測定に要する時間が長くなることが予想される。一方で、本実験を行うKEKにおいては、年間に3回のビームタイムを要求できるが、ユーザー数が多いため十分な実験時間を得られるか不確定な部分がある。そこで今後、実験を行うビームラインの担当者と十分な実験時間を確保できるように協議を行う予定である。
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