研究課題/領域番号 |
23K11837
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
高垣 裕子 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任教授 (60050689)
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研究分担者 |
宮川 和晃 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (50635381)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 骨細胞 / 力学刺激 / 骨質 / 脆弱性 / ラット歩行制限モデル / ヒト腸骨 / 身体不活動 / 骨脆弱性 / 加齢 |
研究開始時の研究の概要 |
加齢は筋力低下や骨粗鬆化から運動器機能を低下させ健康寿命に関わる.近年運動器の多臓器への生体恒常性関与が解明され 骨基質に埋没した骨細胞の恒常性維持における重要性が判明した.申請者らは過去に歩行制限による身体不活動モデル(inactive rat model)を開発し機械的刺激(メカニカルストレス)に対する骨細胞の応答を明らかにした.しかし尾部懸垂の様な局所の不動は別として,運動不足や高齢者のフレイルには適切な動物モデルがなく,骨細胞の応答をライフステージごとに比較検討した報告はみられない.本研究では加齢に伴って変化する骨細胞が全身性不活動におよぼす影響を歩行制限モデルを用いて明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究では、全身性不活動が骨に脆弱性をもたらすメカニズムを解明するにあたり、既に報告を重ねているラット歩行制限モデルで主に下肢骨骨細胞の応答を検討する。骨の構造上、皮質骨(骨幹部)と海綿骨(骨端部)では骨および構成する細胞の役割が異なるため、まずそれぞれの部位における骨質の脆弱性の違いを検討する必要がある。しかし齧歯類の骨を用いて検討する場合、個体スケールが小さいために部位特異的な遺伝子発現解析を実施するには限度があった。そこで、研究分担者が並行して実施しているヒト腸骨を用いた皮質骨・海綿骨のバイオインフォマティクス解析を優先して試みた。海綿骨と皮質骨の全RNAを比較して2倍以上高く発現を変動する遺伝子を抽出してエンリッチメント解析を行ったところ、有意性の高い生物現象として、ECMの形成と石灰化、成長因子応答性、細胞誘導に関連する現象などが確認された。更に全ての発現遺伝子を対象にIngenuity Pathway Analysis(IPA)を実施したところ、登録されている経路のうち皮質骨と海綿骨間で150個あまりに違いを認め、そのうち約30%が皮質骨の骨細胞で活性化されており、海綿骨で活性化されているのはわずか1%のみという結果であった。両者の差が最も大きい経路としては、皮質骨骨細胞のストレス応答シグナルの活性化が検出された。皮質骨骨細胞は海綿骨の場合と比べて細胞小器官に乏しいが、今回の結果は形態的評価と生物学的活性に必ずしも一貫性がないことを示している。皮質骨と海綿骨に存在する骨細胞の遺伝的背景は異なっていて、それぞれの特性に反映されている可能性を示唆するものであった。これは、ラットの骨にも当てはまることが想定され、従って、本課題においてヒト骨の結果を共有して動物実験を実施する計画に沿って研究を進行させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子解析を担当する研究分担者に年度途中で歯学部から医学部への大きな異動があり、実験室の確保ならびに新規に動物実験申請をする必要があったため、ラット骨による分子生物学的・生化学的実験を遂行することが大幅に遅れた。しかしヒト腸骨を用いたIngenuity Pathway Analysis(IPA)により、登録されている経路のうち皮質骨と海綿骨間で150個あまりに違いを認め、そのうち約30%が皮質骨の骨細胞で活性化されており、海綿骨ではわずか1%のみが活性化されているという結果が得られた。これらの進捗を考慮すると、本研究課題に対する新しい知見はバイオインフォマティクス解析にて進めることができるという目途が立った。令和6年度に本研究の中心的課題となる部分が加速できることから、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに歩行制限モデルラットを用いた実験を予定している。ただし、研究グループ独自にヒト腸骨で並行して行った実験から得られた骨細胞に関する新知見をラットモデルに適応できることから、解析手法や着目点については当初の計画よりも発展的に変更する見通しが立っている。従って、初年度予定した動物実験の遅れは令和6年度で発展的に取り戻せることを見込んでいる。 なお、上記の事情から令和5年度は消耗品購入は必要最低限にとどめて本研究に関連する国内外での知見の収集に重点をおいた活動を行ったため、研究費に多額の次年度使用額が生じている。加速して行うラットの動物実験に使用する予定である。
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