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疾患の指標となるシグナル分子に応じて自律的に翻訳制御されるmRNA医薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K11843
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分90120:生体材料学関連
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

中西 秀之  東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (90722885)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード合成生物学 / mRNA医薬 / 翻訳 / 受容体 / mRNA / 核酸医薬 / 遺伝子治療
研究開始時の研究の概要

mRNA医薬は任意の治療用タンパク質を体内で産生させることができるが、現行のmRNA医薬では治療用タンパク質への翻訳は制御されていない。そのため、病状の進行や緩和といった生体内環境の変化に伴って治療用タンパク質の適量が変化した場合、治療用タンパク質の過剰または不足による有害な副作用や不十分な治療効果が懸念される。そこで本研究では、生体内環境の変化に伴って変動する内在シグナル分子を検知し、それに応じて翻訳量を自律的に調節するmRNA医薬を開発する。この新たなmRNA医薬は、治療用タンパク質それ自体をコードするmRNAと、その翻訳制御を行うタンパク質をコードするmRNAにより構成される。

研究実績の概要

細胞外のシグナル分子を検知し、それに応じてmRNAの翻訳を制御するシステムとして、まずはアルギニンバソプレシン(抗利尿ホルモン)に対する受容体を利用することで、mRNAの翻訳量がこのホルモンに応じて自律的に制御されるシステムを開発することにした。このシステムの構成要素として、アルギニンバソプレシン受容体にタバコエッチウイルスプロテアーゼまたはその変異体を融合させた改変受容体ならびに受容体の活性化時にタバコエッチウイルスプロテアーゼにより分解される改変翻訳制御因子を設計し、これらをコードするmRNAを制御対象のレポーターmRNAと共にヒト細胞に導入したところ、アルギニンバソプレシン濃度依存的にレポーターmRNAの翻訳量が増大することが示された。更に、レポーターmRNAの非翻訳領域の設計を変更することで、上記の場合とは逆にアルギニンバソプレシン濃度依存的に翻訳量を減少させることも可能であることが分かった。
上記のシステムの受容体部分をアルギニンバソプレシン受容体からプロスタグランジンE2受容体やブラジキニン受容体といった他の受容体に変更したところ、プロスタグランジンE2やブラジキニンに応じた翻訳制御も可能であることが示された。この結果から、本研究で開発したシステムは受容体部分の変更により様々な細胞外シグナル分子を検知対象とできると考えられる。
更に、制御対象をレポーターmRNAから抗炎症タンパク質をコードするmRNAに変更することで、実際に治療効果を持つタンパク質の翻訳量についても細胞外シグナル分子に応じた制御が可能であることが示された。
以上の研究成果については、特許を出願済みである(特願2023-108509)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

計画では、第一年度(本年度)においてはシグナル分子に応じた翻訳制御に必要な改変受容体と改変翻訳制御因子を設計・作製し、改変受容体を活性化させるシグナル分子の有無による翻訳量の差を評価した後、改変受容体と改変翻訳制御因子にどのような変更を加えれば翻訳制御効率を改善できるかを検討することになっていた。これらについては、改変受容体を活性化させるシグナル分子としてアルギニンバソプレシンを用いた検討で全て実行済みである。
更に、計画では第二年度において行う予定であった翻訳制御システムの汎用性の検討についても、アルギニンバソプレシン受容体をプロスタグランジンE2受容体やブラジキニン受容体に変更することで部分的に実行済みである。加えて、計画では第三~四年度において行う予定であった治療用タンパク質の翻訳制御についても、抗炎症タンパク質の翻訳制御というかたちで一つの実例を示すことに成功している。
以上のように、計画では本年度に行うことになっていた検討は全て済ませた上で、次年度以降に行うことになっていた検討も部分的に完了していることから、当初の計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

本システムの汎用性については既に部分的には示されているが、その一方で、一部のシグナル分子では翻訳制御効率が悪かったり、場合によっては全く翻訳制御ができない例も見つかっている。今後はその原因について調べ、更に多様なシグナル分子に対応できるようシステムの設計を改善する予定である。
また、治療用タンパク質をコードするmRNAの翻訳を制御できるというデータは既に得られているが、それにより実際の治療効果を得られるかどうかの検討はまだできていない。したがって、今後は治療効果についての評価も進める予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Comprehensive Evaluation of Lipid Nanoparticles and Polyplex Nanomicelles for Muscle-Targeted mRNA Delivery2023

    • 著者名/発表者名
      Du Xuan、Yada Erica、Terai Yuki、Takahashi Takuya、Nakanishi Hideyuki、Tanaka Hiroki、Akita Hidetaka、Itaka Keiji
    • 雑誌名

      Pharmaceutics

      巻: 15 号: 9 ページ: 2291-2291

    • DOI

      10.3390/pharmaceutics15092291

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Enhancement of bone regeneration by coadministration of angiogenic and osteogenic factors using messenger RNA2023

    • 著者名/発表者名
      Zhang Maorui、Fukushima Yuta、Nozaki Kosuke、Nakanishi Hideyuki、Deng Jia、Wakabayashi Noriyuki、Itaka Keiji
    • 雑誌名

      Inflammation and Regeneration

      巻: 43 号: 1 ページ: 32-32

    • DOI

      10.1186/s41232-023-00285-3

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] RNA修飾による炎症回避が,効果的なmRNAワクチンの開発を可能にした2023

    • 著者名/発表者名
      中西秀之, 位髙啓史
    • 雑誌名

      科学

      巻: 93 ページ: 1065-1069

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 細胞・臓器選択的な翻訳を可能にするmRNA医薬の設計2023

    • 著者名/発表者名
      中西秀之
    • 雑誌名

      細胞

      巻: 55 ページ: 876-880

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 細胞死誘導タンパク質をコードした合成mRNAによる選択的細胞除去2023

    • 著者名/発表者名
      中西秀之, 位髙啓史
    • 雑誌名

      バイオマテリアル-生体材料-

      巻: 41 ページ: 332-333

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] mRNA医薬とmRNAワクチン2023

    • 著者名/発表者名
      中西秀之, 位髙啓史
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 285 ページ: 340-347

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 状況に応じた翻訳制御ならびに翻訳後制御が可能な新型mRNA医薬の開発2023

    • 著者名/発表者名
      中西秀之
    • 学会等名
      第39回日本DDS学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 生体内mRNAデリバリーのための脂質ナノ粒子とナノミセル型キャリアの包括的評価2023

    • 著者名/発表者名
      Du Xuan, 矢田英理香, 寺井湧貴, 高橋拓也, 中西秀之, 田中浩揮, 秋田英万, 位高啓史
    • 学会等名
      第39回日本DDS学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Development of extracellular signal-responsive mRNA drugs for controlled translation2023

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Nakanishi, Keiji Itaka
    • 学会等名
      日本核酸医薬学会第8回年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Enhancement of bone regeneration by coadministration of angiogenic and osteogenic factors using messenger RNA2023

    • 著者名/発表者名
      MAORUI ZHANG, 福島雄大, 野崎浩佑, 中西秀之, 若林則幸, 位高啓史
    • 学会等名
      第44回日本炎症・再生医学会 2023年7月12日
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [産業財産権] mRNAの翻訳制御システム2023

    • 発明者名
      中西秀之、位髙啓史
    • 権利者名
      東京医科歯科大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-108509
    • 出願年月日
      2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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