研究課題/領域番号 |
23K11887
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
神崎 秀明 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (60393229)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | HFpEF / 右室機能 / 大動脈弁狭窄症 / 左室拡張障害 / 心不全 |
研究開始時の研究の概要 |
Westermanらは圧と容積を同時に計測できるカテーテルを用いて、圧-容積関係曲線を求め、HFpEF患者の特徴を示した。本研究では、彼らの方法を改変し、拡張性の定量的な評価を行う。そして、安静時にこの左室充満圧スロープが平坦であっても、左室拡張末期圧-容積関係はすでに障害されていれば、運動時には、潜在的な心筋の異常が顕在化し、早期HFpEFの診断が可能になることを示す。 本研究では、心筋の硬さこそが予後に影響を与える重要な要素と考え、心臓内に流入する血流を増加させると硬い心筋ではその内圧がより急峻に上昇するという特性に注目し、運動負荷も用いて、より早期での心筋異常の検知を目指している。
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研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは、心エコー検査を用いて、駆出率が維持された心不全患者(HFpEF)の右室機能についても評価することである。右室機能は心不全の予後と関連していることが知られている。また大動脈弁狭窄症患者は、長期にわたる左室圧負荷の影響により、HFpEFの要素をもったグループと考えられる。そこで、我々は、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)を受けた大動脈弁狭窄症患者541例を対象に右室機能が予後に与える影響について検討を行った。右室機能の指標として、右室収縮性を鋭敏に反映する右室-肺動脈カップリング比を用いた。 右室-肺動脈カップリング比は、TAVR前に経胸壁心エコーを用いて、三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)を肺動脈収縮期圧(PASP)で割ることにより算出した。TAPSE/PASPの中央値に基づいて、患者は2群に分けて比較すると、Kaplan-Meier解析では、低TAPSE/PASP比群で有害心イベント(心臓死と心不全による入院)の発生率が高かった(log-rank検定 P<0.001)。多変量Cox回帰分析では、TAPSE/PASPが独立した予後予測パラメータとして同定された(ハザード比0.246;P=0.023)。以上より、RV-PAカップリング比で表現される右室機能はTAVR施行患者における有害心イベントの予後予測因子として機能することが証明された。 右室機能の指標として、提唱されているものは数多くあるものの、心エコーの指標においては、その再現性や精度の点で、一長一短があるのが現実である。HFpEFという疾患を対象にした場合、心エコーで非侵襲的に得ることができるTAPSE/PASPの有用性を証明したことに意義があると考える。 この成果については、フィラデルフィアで行われた米国心臓協会学術集会(AHA 2023)にて報告し、現在は論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年まで実施していた経カテーテル的大動脈弁置換術患者に関する研究のデータベースを流用することが可能となったため、まずは、心エコーを用いたHFpEF評価から研究を開始した。ただし、本来はカテーテルデータを用いて、より精密に血行動態を評価することが目的であり、この点については次年度に研究をさらに進めていく予定。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中である日常臨床で行っている診断カテーテル検査のデータ収集を継続し、HFpEFの早期診断について研究を進めていく予定である。こちらのデータベースを作成しつつ、経カテーテル的大動脈弁置換術患者に関する研究のデータベースを流用し、まずは成果を出していく方針。
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