研究課題/領域番号 |
23K11898
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
猪口 淳一 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10403924)
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研究分担者 |
村田 正治 九州大学, 先端医療オープンイノベーションセンター, 教授 (30304744)
姜 貞勲 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50423512)
河野 喬仁 九州大学, 先端医療オープンイノベーションセンター, 特任講師 (90526831)
松元 崇 九州大学, 医学研究院, 助教 (20876544)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 尿路上皮癌 / 尿中バイオマーカー / スクリーニング / 膀胱癌 / 上部尿路癌 / 腎盂尿管癌 / PKCα / センサデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
尿路上皮癌は尿路上皮から発生する悪性腫瘍で、有用な血液腫瘍マーカーがない一方で、尿を用いたスクリーニング検査法の開発が行われてきました。しかし、その多くは偽陽性率が高く、特異度が非常に高い尿細胞診以外は実臨床においてあまり利用されていません。我々はこれまでに、感度、特異度が高い尿路上皮癌に対する新たなバイオマーカーを開発しました。本研究では、この新規バイオマーカーを検出する安価で簡便な検査法を開発し、その有効性を評価します。
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研究実績の概要 |
尿路上皮癌は尿路上皮から発生する悪性腫瘍で、有用な血液腫瘍マーカーがない一方、尿路に発生するため尿を用いた癌のスクリーニング検査法の開発が行われてきた。しかしながら、その多くは偽陽性が多いこと、特に低異型度癌では感度が低いことが問題であり、特異度が非常に高い尿細胞診以外は実臨床においてあまり利用されていない。我々はこれまでに癌化の初期段階から発現が亢進するリン酸化酵素であるプロテインキナーゼCα(PKCα)に注目し、そのリン酸化活性を質量分析法にて検出できること、さらに臨床検体(尿)を用いて検討したところ高い感度、特異度で尿路上皮癌を検出できることを明らかにし特許申請した。本特許は2024年3月26日に特許証の取得に至った(特許第7454756号)。 一方で、これまでに開発した基質ペプチドを用いた質量分析法による解析はコストがかかるため、より安価な検出法としてまず表面弾性波バイオセンサの開発に注力した。表面弾性波バイオセンサは、圧電結晶の表面にPKCαに特異的なリン酸化基質ペプチドもしくは抗体を固定化し、デバイスに添加した尿中の活性型PKCαがこれらの基質等と反応しリン酸化や複合体形成をすることで起こる質量変化を、圧電結晶表面を伝搬する表面弾性波の変化として測定する。実際に尿検体を用いて、測定を行ったところ質量分析法と同等の検出感度が示された。ただし、測定に至る前処理行程が簡略化できず、かつ表面弾性波バイオセンサの測定用カートリッジにコストがかかりすぎることが明らかとなり、更なる開発は中止することとした。 現在、高親和性の抗リン酸化ペプチド抗体を用いたELISA法、及びフェルスター共鳴エネルギー移動(Forster resonance energy transfer、FRET)分子センサ法について開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①尿中活性型PKCαの癌バイオマーカーとしての有用性 尿中活性型PKCαの検出は質量分析装置による解析でリン酸化率2%をカットオフとし、尿路上皮癌症例の更なる蓄積を行いその有用性を検討した。尿路上皮癌症例の尿検体を計141例取集し85.8%と高い感度を示した。一方で、悲癌の対照群102例の尿検体では11.8%が検出され、特異度は88.2%であった。また、すでに申請していた特許に関して、承認され2024年3月26日に特許証が発行された。
②尿路上皮癌に特異的で簡便な検査法の開発 表面弾性波バイオセンサは、圧電結晶の表面にPKCαに特異的なリン酸化基質ペプチドもしくは抗体を固定化し、デバイスに添加した尿中の活性型PKCαがこれらの基質等と反応しリン酸化や複合体形成をすることで起こる質量変化を、圧電結晶表面を伝搬する表面弾性波の変化として測定する。実際に尿検体を用いて、測定を行ったところ質量分析法と同等の検出感度が示された。しかしながら、測定用カートリッジにコストがかかりすぎることが明らかとなり、目的に合致しないため更なる開発は中止することとした。一方で、高親和性の抗リン酸化ペプチド抗体を用いたELISA法の開発を進め、質量分析法より高感度でリン酸化が検出されることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
①尿路上皮癌に特異的で簡便な検査法の開発 現在、高親和性の抗リン酸化ペプチド抗体を用いたELISA法により高感度でPKCαのリン酸化が検出されることが明らかとなった。今後、より簡便な検査法とするため、前処理行程の簡略化を進め、最終的にキット化を目指す。
②新たなカットオフの設定 ELISA法の前処理法がある程度決まったところで、臨床検体を用いてELISA法におけるカットオフ値を再度検討を行う。その上で、臨床検体を用いた性能評価を行う。
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