研究課題/領域番号 |
23K11904
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 正一 順天堂大学, 医療科学部, 教授 (90803255)
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研究分担者 |
市原 清志 山口大学, 大学院医学系研究科, 学術研究員(寄附金) (10144495)
山口 孝一 つくば国際大学, 医療保健学部, 講師(移行) (10908784)
山下 哲平 東海大学, 医学部, 助教 (50617420)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 時系列多次元解析 / 敗血症の早期検知 / Box-Cox変換 / 深層学習による画像解析 / 粒度マップ / 自己分配型クラスタ分析 / 敗血症 / 多次元診断法 |
研究開始時の研究の概要 |
自動血液算定装置ではレーザ光による血球粒子計測情報から白血球分類を行っている。近年その粒度マップの細胞集塊の重心や散布度を数値化し、病態診断に結びつける試みがあるが、臨床応用に到っていない。研究代表者は自己分配型クラスタ分析(ISI法)を独自に開発し、敗血症患者や各種感染症において、発症初期から重症化に至る過程で、数量化した各白血球集塊の2次元形状(重心、散布度とその歪、細胞集塊楕円の長軸位置)が病態で大きく変化することを見出している。本研究では、各細胞集塊の経時変化を詳細に解析することで、感染症の病態変化の予測に利用できる多次元診断法の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
研究課題である「自己分配型クラスター分析による白血球粒度パターンの時系列多次元解析とその臨床応用」において、我々は敗血症などの高炎症状態での白血球の5分類粒度の変化を数学的に捉え、新たな診断インデックスの開発に取り組むとともに、白血球の形態変化を時系列で画像解析することにより、敗血症の前段階をいち早く検知し、未然に防ぐことを目指している。この重要な研究において、現在、10例の敗血症患者から各々10日間にわたり取得した、計100日分の解析可能なデータを入手し、解析作業を進めている。 また、本研究の画像解析に関連した論文として2023年12月には、「AI・ビッグデータ時代の臨床検査のための情報科学:検査のためのAI入門 深層学習による画像解析」と名古屋大学の池田勝秀先生と共に画像処理に関する論文として「Relationship between a deep learning model and liquid-based cytological processing techniques」など4編を発表した。 さらに、白血球粒度パターン解析技術に関連する研究として、共同研究者の山口大学の市原清志先生とあらゆるデータを正規分布に変換するBox-Cox変換に関する研究を行う革新的な方法論について「Critical appraisal of two Box-Cox formulae for their utility in determining reference intervals by realistic simulation and extensive real-world data analyses」として報告しました。これらの研究成果は、将来の医療技術に大きな影響を与えることが期待されており、我々はこれらの研究に注力している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、敗血症患者10名から得たデータを用いて、敗血症発症前後の約10日間にわたる100日分のデータを解析中である。このデータを用いて、白血球の5分類ごとの粒度値を数値化するプログラムの開発を進めている。このプログラムでは、白血球粒度パターンデータを2次元データとしてとらえ、分布形態を数値化する仕組みを考案している。現在、細胞密度が高い集団では粒度の自動抽出が可能であるが、混合分布の細胞集団の分離に難渋している。今後は各細胞群の粒度形態を明確に分離するためのプログラム開発を進める予定である。 また、白血球画像に関しては、従来の矩形で切り取られた画像から画像解析を行っていたが、この場合余分な情報が入り込む可能性が高いため、細胞の形状に合わせたセグメンテーション(細胞の輪郭に沿って画像を切り出す方法)への方法変更を試みている。この精密なセグメンテーション作業は手作業で行われ、多大な時間を要している。画像解析技術の進化に伴い、より高精度な画像処理技術の開発にも取り組んでいる。 データの数値化と画像のアノテーション完了後は、白血球の粒度パターンが時間と共にどのように変化するかを解析する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画では、白血球粒度パターンデータの数値化および各細胞分画の変数変換を通じた正規化処理の仕組みを確立する予定であるが、この作業は非常に時間がかかり、綿密な注意を要する。また、画像処理においては、確実な画像の領域特定とラベリングを行うアノテーション作業のため、精密に切り取られた画像を的確に分類する必要がある。分類に関しては、白血球の5種類に加え、感染症特有の反応性細胞(空砲形成、中毒性顆粒など)を有する細胞の分類も進めており、この手作業による分類作業自体に膨大な時間を消費している。各細胞について100~200個の細胞が収集できると半自動化によるアノテーション作業のプログラム開発も進めている。しかし、好塩基球などの1.0%未満しか存在しない稀な細胞集団の場合は、代替の手法を見つけるための追加の時間と労力が必要となる。 これらの複雑な課題に対処するため、新たな方法論についての検討も進行中である。これらの問題点を解決し、時間をかけて行う画像のアノテーション作業を完了させた後には、時系列的な変化を詳細に分析する計画である。この長期的で集中的な取り組みにより、より精確で実用的な臨床応用への道を開くことを目指している。
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