研究課題/領域番号 |
23K11921
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90140:医療技術評価学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
盛 真一郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (00620519)
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研究分担者 |
福長 洋介 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器センター, センター長 (50731139)
濱元 宏喜 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (60825818)
東 美智代 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 准教授 (60315405)
郡山 千早 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30274814)
大塚 隆生 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20372766)
田辺 寛 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (40814306)
和田 真澄 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (60836112)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | プルスルー法 / TaTME / 直腸癌 / 肛門温存手術 / 人工肛門 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ストーマレス肛門温存手術を担うプルスルー法に着目し,『一期目の手術の際に結腸肛門管吻合を行う手技により,骨盤と吻合部において癒着と線維化により吻合が完成され,縫合不全と一時的人工肛門造設を回避できる』という仮説を立てた.本研究では下部直腸癌患者におけるストーマレス肛門温存手術を担うプルスルー法の安全性と有効性を検証することを目的とする.成熟ミニブタを使用した動物実験で,同手術後の肛門吻合部を採取しフィブリン形成,線維化,癒着などを病理学的に評価する.多施設共同で第二層臨床試験を行い,本手技による肛門温存手術における治療成績,肛門機能評価,QOLなどを前向きに登録し有用性を検討する.
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研究実績の概要 |
2023年度は,動物実験ができなかったため,本手技によるpull through法が,ストーマ回避と縫合不全低減に寄与するか,従来の一時的人工肛門造設を行った症例(従来法群)と比較検討した. 対象は,2011年1月から2023年3月の期間に肛門温存手術を行った下部直腸腫瘍の100例.従来法群 71例と本手技によるpull through法群29例に分けて手術成績について検討した. 手術時間の中央値は,従来法群で418分、Pull through法群で392分であった(p=0.33).従来法群の術後合併症は 32例(45%)で,縫合不全を4例(6%),outlet obstructionによる再手術を3例(4%)に認め,全例に一時的人工肛門造設を行った. pull through法群の術後合併症は6例(21%, p<0.01)で,GradeIIIbの縫合不全を1例(3%)に認めた.Pull through法群では一時的人工肛門造設を行った1例であった(p<0.01).さらに永久的人工肛門となった症例は,従来法群で12例17%であったが,pull through法群では見られなかった. このように,本手技によるpull through法は,一時的および永久的人工肛門の回避に有用で,縫合不全の発生頻度は低減したが,有意差はないことが判明した. また,商業誌”手術”に『下部直腸腫瘍に対する肛門温存手術における一時的人工肛門回避と術後合併症軽減のためのmodified pull through法』という題名で,一時的人工肛門造設を伴う肛門温存手術の問題点,従来のpull through法,当院で行っているModified pull through法について解説し,本法による手術手技について報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験センターで,成熟したミニブタを使用し全身麻酔管理下に経肛門的直腸間膜全切除(TaTME)併用腹腔鏡下肛門温存手術+本手技によるプルスルー法を行計画であったが,動物実験センターの改装に伴い,すべての機材を搬出した.その際,機材の老朽化がすすんでいることが判明し,動物実験に耐えられないことが分かった.そのため,予備研究として,これまでの臨床実績を論文化する方針とした. 2011年1月から2023年3月の期間に肛門温存手術を行った下部直腸腫瘍の100例.従来法群 71例と本手技によるpull through法群29例に分けて手術成績について検討し,Surgical Endoscopyに報告した. Mori S, Tanabe K, Wada M, Hamada Y, Yasudome R, Sonoda T, Matsushita D, Shimonosono M, Arigami T, Sasaki K, Kurahara H, Nakajo A, Ohtsuka T. Modified pull-through coloanal anastomosis to avoid permanent stomas and reduce postoperative complications for lower rectal tumors. Surg Endosc. 2023 Aug;37(8):6569-6576. doi: 10.1007/s00464-023-10184-w. Epub 2023 Jun 13. PMID: 37311894 下部直腸腫瘍に対する肛門温存プルスルー変法 盛 真一郎(鹿児島市立病院 消化器外科), 田辺 寛, 和田 真澄, 黒島 直樹, 馬場 研二, 大塚 隆生 手術(0037-4423)77巻11号 Page1651-1656(2023.10)
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今後の研究の推進方策 |
下部直腸癌患者における本手技によるプルスルー法により縫合不全が軽減しストーマレス肛門温存手術の安全性と有効性に寄与するか検証するために多施設共同で第二相臨床試験を計画する.まずは,プロトコールを作成し,プルスルー法の経験が豊富で研究分担者である大阪医科薬科大学,がん研有明病院,鹿児島市立病院で多施設臨床試験を行う.研究の概要:AV7cmまでの下部直腸癌に対する肛門温存直腸切除術後の本手技によるプルスルー法の安全性と有効性を検討する.主要評価項目:縫合不全の割合.副次的評価項目:術後30日以内の合併症,術後在院期間,再手術の発生率,病理学的評価,機能評価(WEXNERスコア,LARSスコア,IPSSスコア),QOL評価(EORTC QLQ,CR29スコア,EORTC QLQ-C30スコア,EQ-5Dスコア).適格基準は,1) 登録前の腫瘍下縁が肛門縁から7cm以内の直腸癌患者.2) 直腸原発巣が組織学的に腺癌と診断されている患者.3) 治療前の臨床病期がStage IからStage IVまでの患者.4) 治療前の画像診断で肉眼的根治切除および再建が可能と考えられる患者.腹腔鏡手術,ロボット手術またはTaTMEなどのアプローチ法は問わない.5) PS(ECOG)が 0-1 の患者.6) 登録時の年齢が20歳以上で,試験責任医師が本臨床試験の登録症例として適当と判断した患者.7) 化学療法や放射線治療の既往がない患者.8) 研究参加について患者本人から文書で同意が得られている患者とする.登録期間は,研究許可日~2026 年3月31日で,観察期間は研究許可日~2027年3月31日を予定する.目標症例数は60例で,各施設20例を登録目標症例数とする.
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