研究課題/領域番号 |
23K11955
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
寺島 正二郎 新潟工科大学, 工学部, 教授 (20278071)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 血栓予防 / 深部静脈血栓症 / 電気刺激 / EMS / 血栓 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の実施内容を大別すると,①電気刺激の電圧,電流,周波数,刺激周期,刺激波形などを適切に調整し,出力可能な電気刺激装置を製作すること,②製作した電気刺激装置を用いて,負荷する電圧,電流,周波数,波形,刺激間隔(刺激周期)などを変化させた際の血流量や血流速の変化を実験的に観察することの2点になる. 2023年度中旬に向けて電気刺激装置の試作を行う.具体的には,市販の医療用の中周波治療器の電圧や電流,周波数などを参考にしつつ,電気刺激装置を設計・製作する. 2023年度後半から2025年度前半で,製作した電気刺激装置を用いて電気刺激パラメータの変化と血流変化についての実験的検討を行う.
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研究実績の概要 |
本研究は血栓症の予防に対して,血液抗凝固薬,フットポンプ,弾性ストッキングなどの利用以外の手法として,筋などに微弱な電気刺激を与えることで,筋運動を誘発させ,筋・血管のポンプ作用により血流を促進させる方法を提案している.ここで,血流促進効果の高い周波数,刺激周期,間隔,刺激負荷時間(以下,電気刺激パラメータ)などは明らかになっていないことから,本申請研究では,電気刺激のパラメータ変化が血流促進に与える影響を体系的に明らかにすることを目的としている.また教科書的には,低周波の刺激は皮膚表層に近い筋の運動を誘発し,中周波もしくは高周波で皮下2~3cmから深部の筋活動を誘発するとされているが,それ以上の具体的な記載は見当たらない. そこで本年度は,深部静脈血栓症が好発する部位である下腿のヒラメ筋や腓腹筋を刺激し,効率よく血流を促進させる電気刺激のパターンを解明する第一段階として,市販されている家庭用および接骨院などで使用されている医療用の低周波治療器から出力されている電気刺激パラメータを解析した.これにより,本研究で開発する電気刺激装置から出力する電気刺激の目安が得られる. 家庭用の低周波治療器(オムロン,HV-F128)から出力された電気刺激のパラメータ概要は下記となっていた.低周波治療器には「たたく」「もむ」などの幾つかの刺激モードがあるが,出力パルスの電圧を数~数十[V]の範囲で変化させることで「たたく」「もむ」などの刺激の強度を変化させていた.また,全てのモードにおいて,単位パルスのパルス幅は0.2msであり,「たたく」モードでは,この単位パルスが約6.5[s]毎に出力され,「もむ」モードではこの単位パルスが20~30[ms]間隔で約1.5[s]1setとして出力され,約1[s]後に強弱を変えた同様の刺激パルスのセットが繰り返し出力されていることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに家庭用の低周波治療器を用いた予備実験の後,接骨院などで使用される低周波治療器キューブトロンES-6(テクノリンク社製)を用いて腓腹部に数種類の電気刺激を与え,この際の膝窩静脈の血流状態を超音波測定器Viamo sv7(Canon社製)を用いて測定している.結果の概要としては刺激波形B/強度4(筋は2Hzで収縮),刺激波形E/強度8(8Hzで収縮)の刺激後は,安静時と比して30%以上の血流促進効果が見られている.特に,「刺激波形B刺/度4」は比較的弱い刺激で血流促進が認められた.これは静脈の収縮と弛緩のタイミングの良さが主要因と推測されるが,ヒトの歩行や小走りなどの動作時の筋の収縮周期に類似している2Hz程度での電気刺激が血流促進に効果的であるとの予測を得ている.しかし,更に具体的な刺激パラメータ(周波数,刺激周期,間隔,刺激負荷時間)についての解析が必要なため,上述の様に,市販の低周波治療器からの出力波形について詳細な検討を行った.この解析により,本研究で開発を目指している電気刺激装置の出力波形・パラメータの目安が得られた. また,任意に電気刺激のパターン(電圧,周波数・刺激周期・間隔刺激負荷時間)を変更できる刺激装置の試作に取り組んだ.試作当初は,トランジスタを用いたマルチバイブレーター回路により任意の電圧,任意のパルス幅,パルス間隔でパルスを出力させる回路を試作した. 試作したマルチバイブレーター回路からの出力としては,任意のパルス幅,パルス間隔での出力が可能となったが,時定数がやや長いことや,出力波形のエッジがシャープでないなどの問題点が挙げられた.そこで,Arduinoによるマイコン制御によりパルスを発生させるべく、改良型を試作中である.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は市販されている低周波治療器から出力されている電気刺激パラメータの解析として,主に家庭用の低周波治療器(オムロン,HV-F128)からの出力パルスの解析に注力した.一方,接骨院などで用いられる医療用低周波治療器キューブトロンES-6(テクノリンク社製)についても解析を試みたが,時間的な制約から十分な解析に至っていない. そこで,今年度は当該の医療用低周波治療器における出力パルスの解析を行う.特に,これまでの研究において,高い血流促進効果が認められた刺激モードである,刺激波形B/強度4(筋は2Hzで収縮)を中心に出力パルスの解析を行い,開発する電気刺激装置における出力パラメータの目安とする. 他方,電気刺激装置の開発については,前述の様に,トランジスタを用いたマルチバイブレーター回路によるパルス発生装置の開発を休止し,Arduinoなどのマイコンにより制御を行い,任意のパルス幅,パルス間隔で電気刺激を出力させる装置の開発を継続的に行う.現状では任意のパルス幅,パルス間隔で電気刺激を出力するための試作設計は目処が立っている.ここで,本研究で提案する電気刺激装置は電池で駆動する小型・軽量・簡単操作な装置の開発を目指している.即ち,電池から供給される電源電圧は数[V]であり,電気刺激のパルス電圧は数十[V]となることから,小型の昇圧回路の設計試作も必要となる.そこで今年度は,小型の昇圧回路の設計試作を行いつつ,任意のパルス幅・間隔で刺激パルスを発生させることが出来る回路の試作を行う. 電気刺激装置の試作機が完成した後には,深部静脈血栓症が好発する部位である下腿のヒラメ筋や腓腹筋を刺激し,電気刺激パラメータの変化と血流促進効果との関連について実験的に検討を行い,効果的に血流を促進可能な電気刺激パラメータの解明に取り組む.
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