研究課題/領域番号 |
23K11967
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
白石 直子 (丸山直子) 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (00736259)
|
研究分担者 |
奥村 高広 埼玉医科大学, 保健医療学部, 准教授 (30458533)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 人工心肺 / 閉鎖型回路 / 生体適合性 / 血液 / 血球数 / 好中球活性化 / 体外循環 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちは経験に依存せず容易に操作できる新たな人工心肺の体外循環法として、バルブ式半閉鎖型体外循環(valve type semi-closed extracorporeal circulation;VACC)を開発した。従来の開放型回路に比べ、VACC回路は血液と空気の接触機会を格段に低減できるため、生体適合性にも優れるはずであると考えた。本研究では、ウシ血液を用いた実験を行いVACC回路の生体適合性の良さを検証する。これらの取り組みにより、操作者のみならず、患者にも優しい人工心肺が可能となることが期待できる。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的はウシ血液を用いて閉鎖型回路が開放型回路に比べて血液へ与える影響が小さいことを検証することである。令和5年度は1)ウシ血球数の変化を調べること、2)好中球の顆粒放出を調べること、を予定していた。代表者は令和5年8月より産休育休を取得することとなったため、令和5年度は新たな血液実験は行わず、これまでの血液実験のデータ、作成済みの血液塗沫標本、凍結保存していた血漿サンプルを使用して、目的を果たした。 これまでの実験で、閉鎖型回路および開放型回路においてウシ血液を3時間循環させ、循環前後で採血を行った。実験回数は5回である。自動血球計数器で得られたデータを整理し血球数の変化量を調べたところ、赤血球数は両回路において循環前後でほとんど変化がみられなかった。白血球数と血小板数については両回路において減少がみられ、閉鎖型回路において3時間循環後に有意に変化量が小さかった。 作成済みの血液塗沫標本にライトギムザ染色を行い、顕微鏡下で好中球数を調べた。両回路において3時間循環後に好中球数が減少していた。閉鎖型回路の好中球数の変化量は開放型に比して小さかったが有意差は認められなかった。また、血液塗沫標本にさらにペルオキシダーゼ染色を行い、顆粒放出の有無を調べようとしたが、すべての標本において好中球の顆粒が染まらず、循環前後の顆粒放出の検証はできなかった。 そこで、凍結保存していた血漿サンプルを使用して、血漿中のMPO(Myeloperoxidase)濃度をELISA法にて測定したMPOは好中球の活性化にともない放出される糖タンパクである。5回の実験すべてにおいて閉鎖型回路の3時間循環後でMPO濃度が低い結果となった。 令和5年度の研究により、閉鎖型回路は開放型回路に比べて3時間循環後の白血球数と血小板数の減少が小さいこと、血漿MPO濃度についても閉鎖型回路において小さいことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は1)ウシ血球数の変化を調べること、2)好中球の顆粒放出を調べること、を予定していた。代表者は令和5年8月より産休育休を取得することとなったため、令和5年度は新たな血液実験は行うことはできなかった。そこで、これまでの血液実験データ、作成済みの血液塗沫標本、凍結保存していた血漿サンプルを使用して、目的を果たすことができた。本年度に行ったことは、過去の血球数データの整理、過去に作成した血液塗沫標本を使用した好中球数の検討、血液塗沫標本のペルオキシダーゼ染色による顆粒放出の有無の検討、凍結血漿サンプルを用いたMPO濃度の測定である。令和5年度の研究により、閉鎖型回路は開放型回路に比べて3時間循環後の白血球数と血小板数の減少が小さいこと、血漿MPO濃度についても閉鎖型回路において小さいことがわかった。令和5年度の目標は十分に達成できたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度の検討により、閉鎖型回路は開放型回路に比べて3時間循環後の白血球数と血小板数の減少が小さいこと、血漿MPO濃度についても閉鎖型回路において小さいことがわかった。閉鎖型回路において生体適合性が優れることが実証できる可能性が高いと予想される。好中球数の変化において、ばらつきがあり有意な差がみられなかったため、今後は採血後のサンプル処理を素早く行うなど実験条件を整えて血液実験を行い、十分な検体数で実験を遂行していきたい。さらに、血漿MPO濃度の測定についてはサンプルの希釈条件を決めることができた。両回路においてMPO濃度の差がでたことより、好中球の活性化を実証するための有益なデータが得られる可能性が高いことがわかった。今後は決定した希釈条件で実験を重ねていく。 また、3時間循環後の白血球数と血小板数の減少がみられることより、実験回路への接着や凝集が考えらる。実験後に実験回路のフィルタ等を採取し、電子顕微鏡で観察することも検討している。
|