研究課題/領域番号 |
23K11990
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
佐竹 純二 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (60392726)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 見守りシステム / 移動ロボット / 呼吸推定 / 機械学習 / 状態推定 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、一人暮らしの高齢者の増加に伴って孤独死や疾患の発見の遅れが問題になっており、見守りシステムの需要が高まっている。そこで、我々は天井カメラを用いて人物の転倒などの異常を検知し、移動ロボットが近づいて状態確認を行う見守りシステムの開発を行っている。本研究ではそれを改良し、機械学習の技術を用いて認識性能を向上させる方法について研究する。特に、膨大な学習データの分類やラベル付けを手動で行うには限界があるため、システムが自分で学習データの分類を行う教師なし学習(または半教師あり学習)が必要であり、本研究ではその方法について研究する。
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研究実績の概要 |
環境センサと移動ロボットを連携させ、見守りを行うシステムの開発を行っている。具体的には、天井カメラを用いて人物の転倒などの異常を検知し、移動ロボットが近づいて状態確認を行う。特に、本研究では機械学習の技術を用いて認識性能を向上させる方法について研究している。膨大な学習データの分類やラベル付けを手動で行うには限界があるため、教師なし学習(または半教師あり学習)を用いてシステムが自分で学習データの分類を行い、見守りシステムの認識性能を向上させることを目的としている。 2023年度の実績としては、次の3つのテーマについて研究開発を行った。 ①呼吸判別方法の改良:機械学習における一般的な課題として、未学習者に対する認識精度が低くなることや、大量の学習データが必要になることなどが挙げられる。そこで、少ないデータ数かつ呼吸データのみを用い、未学習者に対しても認識可能な呼吸判別方法を開発した。そして、9月の学会でその成果発表を行った。 ②画像情報と3次元姿勢情報を併用した動作認識:識別器の構造が複雑になると学習が難しくなってしまうため、画像情報と姿勢情報を別のモジュールに分けて学習させる動作認識手法を開発した。認識結果を統合する際、各モジュールの認識の傾向を学習して補い合わせることで精度向上を図った。そして、9月の学会でその成果発表を行った。 ③アノテーションコストの削減:教師あり学習であるCNNやSVMでは、人物姿勢の様々なバリエーションに対応するためには大量の学習データが必要であり、高いアノテーションコストがかかることも課題の一つである。そこで、本研究ではラベル伝搬法を用いて予測したクラスラベルを付与することでアノテーションコストを削減したり、教師なし学習手法を用いてデータをクラスタリングする方法について研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は主に次の3つのテーマについて研究開発を行った。 ①呼吸判別方法の改良:ウェーブレット変換とオートエンコーダを用いて呼吸判別を行う方法を開発した。取得した呼吸データに対してウェーブレット変換による周波数解析を行い、それをオートエンコーダに学習させた。学習には正常呼吸時のデータのみを用い、オートエンコーダの入力と出力の差から、呼吸データであるかどうかを判別した。自動的な呼吸判定を行うため、ホテリング理論を用いてその閾値を設定した。また、実際に評価実験を行い、交差検証により未学習の人物に対しても高い認識率が得られることを確認した。そして、9月の学会でその成果発表を行った。さらに、別の特徴抽出手法を組み合わせて認識精度を向上させる方法や、頻呼吸や徐呼吸などの異常呼吸を判別するための方法について研究を行ってきた。 ②画像情報と3次元姿勢情報を併用した動作認識:骨格情報(スケルトン)を描画した人物画像と3次元姿勢情報を併用した動作認識手法を提案した。画像情報と姿勢情報を別のモジュールに分けて学習させ、各モジュールの認識の傾向を学習して補い合わせることで認識精度の向上を図った。また、人物画像には骨格情報を描画することで体格や服装の変化に対する汎用性を高めた。そして、9月の学会でその成果発表を行った。さらに、雑誌の解説記事として執筆依頼を受け、研究成果の一部を投稿した。 ③アノテーションコストの削減:大量の学習データを活用するため、アノテーションコストを削減する方法について検討を行った。まず、一部のデータのみにクラスラベルを付与し、残りのデータにはラベル伝播法を用いてクラスラベルを予測した。その結果、特に大量の学習データを必要とするCNNにおいてその有効性が確認できた。また、教師なし学習を用いたクラスタリング手法がアノテーションコストの削減に利用できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、構築したシステムを用いて実証実験を行いながら、システムのさらなる改良や高機能化を行う。そして、研究成果をまとめ、外部発表を行う。 まず、呼吸判別の方法をさらに改良し、正常な呼吸だけでなく、頻呼吸や徐呼吸などの異常を検知するための方法を検討する。より安定な呼吸判別を実現するためには多様な学習データが必要であるが、それら全てを手動で分類する教師あり学習では限界がある。そこで、一部の正解のみを与える半教師あり学習や、波形の類似性をもとにクラスタリングを行う教師なし学習を行う方法について研究する。そして、学習データの収集・分類を自動化し、より安定に呼吸を推定する方法について研究する。 また、転倒人物の姿勢推定や移動ロボットの目標位置計算の改良を行う。天井カメラで人物の転倒などの異常を検知し、ロボットを人物の近くへ移動させる際には、転倒した人物の姿勢を推定し、人物の正面側に移動ロボットの目標座標を設定する必要がある。仰臥位や側臥位などの転倒姿勢の認識を行う方法について研究しており、学習データと同様の画像に対しては高い認識性能が得られているが、未学習の人物や、服装の変化には対応できていない。また、認識失敗の主な原因は転倒姿勢における手や足の位置の多様性である。より大規模な学習データが必要であるが、それらを全て手動で分類するには限界があるため、システムが自動的に画像を収集して学習し、より安定に転倒人物の姿勢を認識できる方法について研究する。 それから、人物の呼吸情報だけでなく、体温や心拍数、意識の有無や表情など、様々な生体情報を観測する方法や、移動ロボットの周囲環境の認識、自己位置推定、経路計画についても研究を行う。また、観測した結果を他のユーザに通知したり、外部から確認する方法などについても研究を行う。
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