研究課題/領域番号 |
23K11997
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石田 柊 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 研究員 (30962013)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 差別 / 間接差別 / 不平等 / 倫理学 / 政治哲学 / 平等 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、差別について倫理学的な観点から分析する理論研究が進んでいる。しかし、この領域の中心的テーマは「女性お断り」などの明確な差別行為(直接差別)であり、間接差別のような特殊な形の差別については研究が進んでこなかった。本研究では、間接差別という現象に着目し、それと直接差別や不平等とを一体的に論じる枠組みを作る。それを通して、これまで分析が難しかった「AI差別」や「脳差別」を論じる土台を提供する。
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研究実績の概要 |
【目的】近年、差別の規範的性質を哲学的に分析する「差別の政治哲学」が発展しつつある。この領域では、「女性お断り」などの明確な差別行為(直接差別)を中心として、差別にまつわる理論的・規範的課題が検討されてきた。他方で、間接差別のような特殊な形の差別は、その現実的重要性にもかかわらず、固有の理論的・規範的課題があまり分析されてこなかった。本研究では、間接差別という現象を倫理学的な見地から分析する。とりわけ、これまで別々に発展してきた差別研究と平等研究を相互に参照し、再接続することにより、直接差別・間接差別・不平等といった類似の現象を包括的に扱う規範理論を提案する。 【当該年度実績】2023年度は、補助事業期間の初年度として、間接差別という現象の記述(課題A)とその規範的評価(課題B)に着手した。課題Aについては、差別の倫理学における間接差別の取り扱いを総覧・分類することで、議論動向を明らかにした。そして、具体的な問いとして、「過去に直接差別の対象となったことがない集団に対する間接差別は可能か」等が提起されることを確認した。課題Bについても、主に直接差別を想定した「何が差別を不正にするのか」という論争をもとに、間接差別の不正性の根拠をめぐる有力な見解を整理した。これらの成果をまとめたものを、国際的に参照されるハンドブックの章として出版し、間接差別をめぐる今後の倫理的議論の礎として提案した。また、軽度の差別が「不正だが非難に値しない行為」にあたる可能性を検討するべく、超義務をめぐる倫理的課題も整理し、当該領域の蓄積を「差別の倫理学」に応用する道筋をつけた。 このほか、当該年度は、以後の年度に予定していた間接差別の応用倫理学研究(課題C)に一部先取りして取り組み、成果を論文等の形で公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、課題A(間接差別の記述)に本格的に取り組みつつ、課題B(間接差別の規範的評価)に着手することを予定していた。課題A・Bとも、まず「差別の倫理学」という限られた領域に着目し、現在の議論動向を明らかにすることで、一定の成果を挙げることができた。 他方で、本年度中を予定していた海外での研究は、諸般の事情により実現することができなかった。訪問を予定している研究者とは連絡を取り合っており、次年度以後の実現に向けて動いている。こうした状況を総合的に判断し、今年度の研究進捗については「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、課題A・Bとも、「差別の倫理学」という限られた領域に着目して、間接差別をめぐる既存の議論の整理・分類をおこなった。次年度は、検討の範囲を平等主義的正義論に広げ、必ずしも「差別の倫理学」に閉じない間接差別理解を深めるとともに、差別と不平等という二つの規範的概念の理論的・実践的な関係の解明に本格的に取り組む。また、本年度中に実施できなかった在外研究についても視野に入れ、この分野を世界的に牽引する研究者とのディスカッションにより、本補助事業の研究をより豊かにする。
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