研究課題/領域番号 |
23K12034
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松田 智裕 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00844177)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 哲学教育 / 国家と政治 / 哲学と女性 / 20世紀フランス哲学 / フランスの教育改革 / 脱構築 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「哲学と国家」および「哲学と女性」という二つの主題との関連から、哲学教育研究グループ(GREPH)の哲学者たちが19世紀フランスの哲学教育の歴史をどう捉えていたのかを検討する。GREPHが「成熟性」というテーマをつうじて哲学の学習開始年齢の引き下げを志向していたことは知られているが、このテーマが政治権力や哲学を学ぶ主体としての女性の問題にも結びついていたことには注意する必要がある。そこで、本研究では「哲学と国家」や「哲学と女性」をめぐってGREPHが19世紀以来の哲学教育の歴史にいかなる問題性を見いだし、どのようにそれを乗り越えようとしたのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、デリダをはじめ多くのフランスの大学・高校教員や学生が参加した「哲学教育研究グループ」(以下GREPH)の活動を取り上げ、そこで盛んに議論されていた「哲学と国家」「哲学と女性」といった諸問題の内実を19世紀フランスの哲学教育との関連から明らかにすることである。 この目的を達成するための土台づくりとして、2023年度は19世紀フランスの哲学教育に関する基礎文献の収集と研究に取り組んだ。具体的には、フランスの教育制度の確立に深く関わった19世紀の哲学者ヴィクトル・クザンおよび教育学者ガブリエル・コンパイレをとりあげ、クザンの『大学と哲学の擁護』(1844年)およびコンパイレの『16世紀以降のフランスにおける教育論の批判的歴史』(1904年)をはじめとする文献の研究を行った。その結果、哲学教育を国家の関心として位置づけるための梃子として人間の「自然本性(nature)」が語られ、それがコンパイレにおいて教育の主体としての男性と女性の自然本性として議論されていたことが浮き彫りとなった。こうした自然本性の問題はGREPHにおいても制度や技術との関連から議論されていたものであるため、この時期の「自然本性」をめぐる一連の議論が、20世紀の哲学教育論の重要な背景をなしていたのではないかという見通しを得ることができた。 また本研究と関連して、アランをはじめラシュリエやラニョーら19世紀後半の哲学者たちに多くの言及があるデリダの講義録『思考すること、それはノンと言うことである』(1960-1961年度)を翻訳出版することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にあったデリダの未刊行資料の調査を目的としたフランス・カーンのIMEC訪問は2023年度中に実現することができなかったが、19世紀フランスの哲学教育に関する研究は本研究の土台となる見通しを得ることができたため、研究計画としては概ね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、今年度に行った19世紀フランスの哲学教育に関する研究を踏まえたうえで20世紀に目を転じ、GREPHにおける「哲学と国家」の問題に関する研究を行う。具体的には、デリダをはじめGREPHの活動に参加していた哲学者たちが、哲学教育を国家教育へと編成した19世紀という時代をどう評価していたのか、そしてこの時代に確立された諸制度とそれを裏から支えている「人間の自然本性」というイデオロギーをどのように検討したのかを整理する。
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