研究課題/領域番号 |
23K12036
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
|
研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
隅田 聡一郎 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (70843853)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 主権 / 気候リヴァイアサン / 権威的自由主義 / シュミット主義的マルクス主義 / マルクス / シュミット / 地政学 / 国家 |
研究開始時の研究の概要 |
21世紀にはいって、地球環境破壊やパンデミック感染症、地政学的対立といった社会問題がさらに深刻化するなかで、「主権」という政治思想の古典的概念にもとづく批判理論が展開されるようになっている。とりわけ、カール・シュミットの「友敵関係」や「例外状態」といった概念は、国内社会の政治的民主主義に関する分析として活用されてきた。それに対して、マルクスのポリティカル・エコノミー批判に依拠した主権論は、国家間システムを超越して形成されるグローバルな資本の運動を分析したものである。本研究では、これまで申請者が行ってきたマルクス研究をベースに、シュミットに影響を受けた国内主権の批判理論に対する応答を試みる。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、環境問題や地政学的対立などが絡みあう複合危機が常態化する現代において、主権の批判理論を再構築することにある。マルクスとシュミットの邂逅を手がかりに、19世紀以降の主権の思想史を明らかにするためにテクスト読解に取り組んだ。 本研究の着想の一つとなった著作Climate Leviathan(2011)の翻訳(邦題:『気候リヴァイアサン:惑星的主権の誕生』)を完了し、監訳者解題を執筆した。筆頭著者であるジョエル・ウェインライト氏が現在東京大学で研究を行っているため、研究会等で交流を行った。今後、日本国内においてエコロジー危機を含めた主権論と地球規模の気候変動に関する政治哲学の展開が期待される。 また、主権の批判理論の源流として、イタリアのマルクス主義者であるマーリオ・トロンティとアントニオ・ネグリの政治哲学にもアプローチした。特に、現代の左派において大きな影響力をもっている「シュミット主義的マルクス主義」について、これまでの(フランス)現代思想で軽視されてきたドイツとイタリアの思想的連関を、初期ネグリの国家形態論を検討することで明らかにした。 さらに、フランスの哲学者であるグレゴワール・シャマユーの著作La societe ingouvernable(2018)を参照しつつ、マルクスとシュミットの邂逅を端的に示すシュミットの未邦訳テクストStarker Staat und gesunde Wirtschaft(1932)を検討し、シュミットの「政治の自律性」がトロンティなどのマルクス主義者のみならず、ハイエクやオルド自由主義者の「権威的自由主義」にも決定的な影響を与えたことを確認した。特にオルド自由主義はフーコーの新自由主義論との関係で語られてきたが、マルクスのポリティカル・エコノミー批判とも接合可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『気候リヴァイアサン』翻訳原稿の脱稿し、著者であるウェインライト氏との交流をつうじて、英語圏での最新の議論を摂取することができた。また、研究会での批判理論や権威的自由主義に関する報告や、シュミット主義的マルクス主義に関する論文の刊行をつうじて、本研究の総括となる単行本の草稿を書き上げることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、この一年間の研究成果を踏まえ、『ユートピア・アナーキー・主権:マルクスとアナーキスト・コミュニズム(仮)』の完成と刊行を目指す。その際、昨今の惑星レベルでの戦争レジームの常態化をふまえ、「資本主義の地政学」に関する研究をより精緻に展開するべく、よりアクチュアルなテーマを取り込みたい。
|