研究課題/領域番号 |
23K12041
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川野 惠子 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (40639853)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ディドロ / 芸術作品の物質性 / 近代芸術 / 美術批評 / イデア / 18世紀フランス美学 / 唯物論 / 創造性 / 近代と宗教 / 想像力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題『ディドロ芸術思想における物質性概念の解明』は、唯物論者であるディドロが近代自然科学の発展のなかで、芸術作品の物質性を近代芸術特有の問題と捉え、芸術学上の主要な論点の一つとした点に着目する。ディドロにおいて、芸術作品の物質性の問題は、近代自然科学の発展と連動している以上、芸術学領域を超えた視点から検討される必要があるが、今日この点が総合的に検討される機会は乏しい。本課題は以上の問題意識に基づき、ディドロの芸術学領域のテクストのみならず、自然科学論、宗教論などをジャンル横断的にテクスト分析するという方法を取り、ディドロ芸術思想における物質性概念の解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度の前半をカナダ・マギル大学、後半をフランス・パリ第三大学での在外研究に充て、資料収集や意見交換をしながらディドロのテクスト分析に注力した。その成果の一部を翻訳として「『文芸通信』に掲載されたディドロ美術論の翻訳:「ウェブ氏による絵画に関する著作」、「ブーシャルドンと彫刻について」(1763年)」、「ディドロ『聾唖者書簡』翻訳(3)」と題し、大学紀要に公開した。そのほか、18世紀芸術論に大きな影響を与えたデュボスの『詩画論』についても「デュボス『詩画論』第三部翻訳(3)」と題し、その翻訳を公開した。さらに本研究課題の最終的な成果物の一つとしてディドロの美術批評『サロン』の共訳を出版するという計画も立てているが、これについては翻訳チームを組み、担当箇所を分け、本年度中に担当分の翻訳を完了した。テクスト分析から得られた結果を二つの国際学会(題目:「ディドロにおける諸芸術の比較」、「倒置理論と模倣理論の交差:ディドロの美学とバトゥへの批判」)、二つの国内学会(題目:「ディドロ言語論と美学」、「ディドロ『サロン』におけるidee概念」)で発表した。これらの発表を通じて、ディドロが芸術家の創造性に着目し、それが本質的超越存在を指す西洋の伝統的な哲学概念「イデア(idee)」の地上を生きる人間の個別的な「アイデア」への組み替えに結びついていることを明らかにした。そのほか、18世紀美学と近世言語論の関係を探る研究会「「17-19世紀ドイツ・フランス・イギリスの言語論と美学」研究会」をオーガナイズし、さらにこれまでの研究を纏めた書籍『身体の言語:18世紀フランスのバレエ・ダクシオン』を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はディドロ芸術思想における芸術作品の物質性に対峙する近代人の認識能力の問題を解明していこうとするものであり、「アイデア」という認識能力の一種に関する研究成果を上げられた点において、研究は着実に進んでいると考えられる。また、ディドロのテクスト分析の結果を翻訳という形で複数の紀要論文に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「イデア」概念の組み替えという本年度の研究成果を鍵として、引き続きdessin /dessein等、その周辺概念の検討と合わせ、ディドロの芸術思想の解明に取り組む。さらに、自然科学論や宗教論等の分析も進め、ディドロが近代における人間の認識能力をいかに捉えているかという点を明らかにし、芸術論の検討に結びつける。研究成果については、学会発表の上、研究論文として公開する。また『サロン』の共訳プロジェクトの遂行に取り組む。
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