研究課題/領域番号 |
23K12047
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
赤井 紀美 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助教 (00962044)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 久保栄 / 新劇 / 新派 / 歌舞伎 / 商業演劇 / 領域横断的研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、戦前から戦後にかけて日本の新劇界を牽引した劇作家・演出家の久保栄(1900~1958)の、早稲田大学演劇博物館所蔵の未整理・未公開資料(日記、創作メモ、演出ノート他)の調査・翻刻・検討を行う。当該資料は久保の選集・全集に未収録のものが多く、これらの資料からは新派を中心とする商業演劇との交流や近接領域である映画との関わりなどがみえてくる。本研究は久保の未整理資料の調査・検討を通して、領域横断的、複合的な視点から久保栄の活動と作品を総合的に捉え直し、新たな久保栄像の描出を試みるものである。
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研究実績の概要 |
本研究は戦前から戦後にかけて日本の新劇界を牽引した劇作家・演出家の久保栄(1900~1958)の、早稲田大学演劇博物館所蔵の未整理・未公開資料の調査を通して、領域横断的、複合的な視点から久保の活動と作品を総合的に捉え直すものである。特に歌舞伎や新派など、新劇とは隔絶したものとして従来認識されていた商業演劇との関わりを中心に明らかにする。 本年は未整理資料の整理を進めつつ、以下の学術成果を得ることができた。 ①論文「久保栄と前進座―プロレタリア演劇と歌舞伎の交錯―」(『歌舞伎 研究と批評』 (68)2024年3月)では、久保栄と歌舞伎の関わりについて、主に前進座を中心に論じた。プロレタリア演劇の潮流によって生まれた前進座への久保の深い関与をふまえたうえで、久保の批評や歴史劇の描き方の変遷を辿った。従来の久保と歌舞伎の対立的な関係を相対化し、歌舞伎の理解者としての久保像を見出すことができた。②口頭発表「日本近代演劇における台湾表象―久保栄「新説国姓爺合戦」を中心に―」(日本近代文学における「アジア」と「翻訳」研究のフロンティア 2024年2月16日)では、小山内薫の近松劇の改作を引き継いだ作「新説国姓爺合戦」について、近代劇における台湾表象という視点から検討した。 また、研究課題に関連して、近代における歌舞伎、新派に関する検討も併せて行い、論文2本(③「新派における川端康成『雪国』の劇化について」『川端文学への視界』(38)2023年7月、④「伊井蓉峰による森鴎外『玉篋両浦嶼』の上演―近松研究劇を補助線として」『楽劇学』(30)2023年5月) 、口頭発表2本(⑤「河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書」―〈毒婦〉イメージの形成―」歌舞伎学会2023年度秋季大会 2023年12月2日、⑥パネル発表「河竹黙阿弥の明治―歴史の転換期における歌舞伎の変容」2023 年度日本演劇学会全国大会2023年6月24日)の学術的成果も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は未整理資料群の本格的な整理に着手したが、当初想定していたよりも資料の保存状態が悪く、資料の大まかな分類、整理に多くの時間がかかった。分類作業の後、自筆原稿、自筆の創作ノートなど重要な資料群から目録化を行った。また併せて、久保の没後、遺族が収集した久保に関する資料(全集の内容見本など多岐に渡る)や、未発表の久保と歌舞伎に関する識者の座談会の文字起こしの資料の確認などが出来た。これらの資料には久保と商業演劇の多様な関係性があらわれており、研究成果に反映させることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き久保栄旧蔵資料の整理を進めるとともに、久保と商業演劇の関わりについて検討する。目録化した資料のデジタルデータ化も適宜進め、演劇博物館のデータベース(文化デジタルライブラリー)での目録公開も目指す。 また、2024年は築地小劇場創設100年の記念の年にあたり、各種学会、劇団などで新劇史の再検討が行われることになっている。築地小劇場は久保の演劇人としての出発点であり、旧蔵資料にも築地小劇場関連のものが多く含まれる。新劇史の再検討の機会を通して、久保と築地小劇場、さらには築地小劇場と商業演劇の関係についても検討したいと考える。
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