研究課題/領域番号 |
23K12066
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 東京音楽大学 |
研究代表者 |
千葉 伸彦 東京音楽大学, 音楽学部, 講師 (50862538)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アイヌ / 伝統音楽 / 歌唱法 / トンコリ / 演奏法 / 教則動画 / 学習方法 / 教授法 / アイヌ音楽 / 少数民族伝統音楽の学習 / ソーシャルメディア / レッスン動画 / 文化の伝承 |
研究開始時の研究の概要 |
少数民族の音楽の伝承は社会形態の変化に伴い、かつての口頭伝承による方法が現代に適応しない面が増え、新たな対応として理論立てた理解の方法の構築が必要である。本研究ではアイヌ音楽の特徴となる音組織や歌唱形態による音響的な効果を明示しながら、それを支える根本的な感覚としての美意識や価値観のあり方にも触れる。アイヌ伝統文化が学習者である現代アイヌにとって感覚的には異文化であるという一面は、江戸時代人と現代日本人との感覚的乖離から容易に理解されるが、本研究ではこれを前提としながら現代的なメディアとして動画やSNSを使った学習方法について検証し、誰でもが習得可能なアイヌ音楽(異文化)の学習方法を提示する。
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研究実績の概要 |
アイヌの音楽文化の学習において、歌や楽器演奏など伝統音楽の習得は、古くは口頭伝承により、実演の模倣を中心として行われていた。しかしいったん伝承の衰退時期を挟んだ現代においては、学習者にとって手本となる実例は身近になく、また西洋文化を中心に多文化的な情報に囲まれた環境の中で、古来の方法による伝承の実践はすでに困難な状況にある。こうした状況に対して、現在では、アイヌ音楽の本質を捉えた論理的な学習方法により、多様な文化の渦巻く現代社会の中でもブレの少ない伝統音楽の学習方法を試行している最中である。本研究ではこれをさらに進めて、動画とインターネットを利用することで、対面による教授法の地理的・時間的な制約から離れ、学習を望むすべての人にその機会を与えることを目指すものである。 本研究では、歌唱法および楽器トンコリの演奏法について、その技術の習得と、それを裏付ける感覚の理解に重点を置く。大まかな流れとして、まず歴史的な資料について、教材として歌唱法・演奏法の実例を提示するために整理を行う。選定された資料について、採譜し、唱法、奏法の分析を行い、教材としての楽譜資料(カシポキ・タブラチュア)を作成する。次にそれを実演し、解説を加えた教材としての動画を作成する。付加的な教材資料として、過去に申請者自身が古老たちに学んだ際の動画を編集し、参考となる資料を作成する。最後に動画を配信し、またそれらを教材としながら、zoomなどの会議用アプリを使った直接の講義を試行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の2023年度では、まず動画作成のための機材を揃え、動画作成の技術習得に努め、試験的にいくつかの動画作成を行なった。また撮影の技術習得を兼ねて、教材としての使用を念頭に、多様な演奏場面の収録の試行を行なった。動画の作成は予算の都合もあり、当初から外注ではなく自己の作業として計画していたが、これについては予定通りの進行である。特に動画の中で楽譜を追うなどの制作技術は、膨大な労力が懸念されたが、時短の方法を自ら見出すことができ、作業の見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、資料の整理と並行しながら動画の作成を本格化する。2025、2026年度までの3年間は、動画作成作業の蓄積が研究の中心となる。また配信の方法について検討する。現時点ではYouTubeでの一般公開を念頭に置いている。 アイヌの伝統文化である歌唱や楽器演奏の教則動画を、伝承の当事者であるアイヌだけでなく、一般に向けて公開することの是非について、当初は検討が必要と考えていた。しかしながらアイヌ民族文化財団のホームページではアイヌの伝承を広く一般向けに公開しており、「生活文化マニュアル」では伝統舞踊の踊り方をマニュアルとして解説している。アイヌ語研究の場合を例とするまでもなく、研究者として公開対象を選択するのは公平な態度とは言えず、当初の問題意識は不要な懸念であると結論した。本研究が公開され、アイヌ音楽の伝統的な価値観が多くの人に共有されることで、アイヌ文化に対する一般の理解も深まり、少数民族に対する差別意識の是正にも結びつくものと期待する。
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