研究課題/領域番号 |
23K12067
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山本 奈央 日本大学, 芸術学部, 研究員 (30973044)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アレクサンドル・スクリャービン / Aleksandr Skryabin / 交響曲 / ピアノ・ソナタ / ピアノ音楽史 / ロシア音楽史 / 作曲法 / 20世紀音楽 |
研究開始時の研究の概要 |
ロシアの作曲家・ピアニストである、アレクサンドル・ニコラエヴィチ・スクリャービン(1872-1915)は音楽史上20世紀初頭の作曲法の変遷の分岐点の時代に新たな音楽語法と様式を確立し多くの作曲家に影響を与えた人物である。スクリャービンの作風は主に交響曲とピアノ・ソナタから捉えることができるが比較・研究をする文献はほぼ存在しない。 本研究は、スクリャービンの交響曲とピアノ協奏曲の分析から12曲のソナタを比較し作品の変遷を辿ることで作風の特徴を明確にすることを目的とする。本研究を遂行することで、未完に終わった《神秘劇》着想について解明へと導き音楽史上そして音楽文化に大きく貢献できることが考えられる。
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研究実績の概要 |
ロシアの作曲家・ピアニストである、アレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)は音楽史上作曲法の変遷の時代であった20世紀初頭において新たな音楽語法と様式を確立、発展させ、多くの作曲家に影響を与えた人物である。スクリャービンの作風は、主に交響曲とピアノ・ソナタから捉えることができるが、交響曲とソナタの各作品で分析されることはあっても二種類の比較・研究をする文献は少ない。しかし、両者には共通項が挙げられることから比較研究を行うことはスクリャービンの作風を熟知する上で極めて重要である。 本研究はスクリャービンの5曲の交響曲と、ピアノ協奏曲の形式的・様式的・和声的・作品背景の分析について同時期に書かれたソナタと比較しながらソナタ12曲との関連・比較を行い、スクリャービンの作品の変遷を辿ることで作風の特徴を明確にすることを目的とする。 令和5年度は《交響曲第2番》ハ短調作品29と《交響曲第3番「神聖な詩」》ハ短調作品43、《交響曲第4番「法悦の詩」》作品54の分析から着手し、《交響曲第4番》と《ピアノ・ソナタ第5番》作品53はスクリャービンが自作した詩が題材となった作品であることから比較研究をし、日本大学研究員としてまた日本音楽表現学会の大会において発表を行った。両作品は詩の内容が作品に反映されていることや、形式的・様式的・和声的側面で共通した特徴が見られることが明確となった。 また「スクリャービン コンサートシリーズ」として2023年8月と2024年2月にピアノ編曲版の《交響曲第2番》と《交響曲第3番》を中心とした解説付きの演奏発表を行った。これらの演奏発表では交響曲で奏される楽器をピアノに置き換えることで各楽器が持つテーマの重要性が分かり、スクリャービンの交響曲についてより理解を深められる発表となった。令和5年度の研究は次年度に発展させて研究を進めることができる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は《交響曲第4番「法悦の詩」》の分析から開始し、既に《ピアノ・ソナタ第5番》との関連性が予想されていたため比較研究を行い、日本大学芸術学部日本大学研究員第22回研究報告書でポスター発表並びに報告書としてまとめ、日本音楽表現学会ではさらに研究を進める中で発見したことについて発表を行った。 両作品はスクリャービンが自作した詩「法悦の詩」を題材にした作品であることが知られていたが、分析を進める中で詩に書かれたキーワードが作品のテーマとなっていることが判明し、他の交響曲またはピアノ・ソナタにも実際に使用されている事例が見られた。 また《交響曲第2番》と《交響曲第3番「神聖な詩」》の分析も遂行し、2曲の交響曲の研究をさらに発展させるべく「スクリャービン コンサートシリーズ」として交響曲のピアノ連弾版のコンサートを開催した。共演者はロシア・グネーシン音楽院を修了された愛媛県在住のピアニスト、池田慈氏を招いて解説付きの演奏発表を行った。 Vol.0プレ・コンサートでは2023年8月13日に池田氏の出身地、愛媛県松山市の萬翠荘にて《ピアノ・ソナタ第2番》嬰ト短調作品19、《ピアノ・ソナタ第4番》嬰ヘ長調作品30とワシーリー・カラファーティ編曲版《交響曲第2番》を、Vol. 1では2024年2月24日に東京都千代田区にあるベヒシュタイン・セントラム東京ザールにて《交響曲第2番》とレフ・コニュス編曲版《交響曲第3番》の2曲の演奏発表を行った。 2曲のソナタと《交響曲第2番》は様式的・形式的側面において共通して見られる特徴があったこと、また作曲時期が近いことから選曲した。そして2つの交響曲を実際に演奏することで作品の構成が明らかとなり《交響曲第2番》で行った作曲法を発展させて《交響曲第3番》に用いていることが判明した。これらの成果は今後のスクリャービン研究において大きく貢献できる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は引き続きスクリャービンの5曲の交響曲とピアノ協奏曲の楽曲の構成、楽章ごとの関係性、和声進行について解明すべく、形式的・様式的・和声的・作品背景について楽譜、関連資料、文献を導入し分析を行う。また日本大学芸術学部日本大学研究員研究報告書において《交響曲第3番「神聖な詩」》と《ピアノ・ソナタ第4番》の比較研究について昨年度の演奏発表を含めた現時点での研究報告をまとめ、日本音楽表現学会での研究発表にてその研究結果を踏まえてさらに作品について言及する。 9月にはスクリャービン文献が多く所蔵されているドイツのベルリン州立図書館に赴き、スクリャービンの交響曲編曲版の初版譜を含む資料を閲覧し、研究に起用することを予定している。 演奏発表においては年明けに「スクリャービン コンサートシリーズ」Vol.2を開催する予定である。プログラムはレフ・コニュス編曲版《交響曲第4番「法悦の詩」》と《ピアノ協奏曲》嬰ヘ短調作品20を取り上げ、2台ピアノで解説付きの演奏発表を行う。 共演者は昨年度に引き続きピアニストの池田慈氏にお願いしコンサートを開催する。施設に関してはこれから協力を得る予定である。 令和7年度は状況が許せばスクリャービン博物館があるロシアへスクリャービン文献収集のために滞在し、研究に貢献したい。演奏発表ではアレクサンドル・ヴィンクラー編曲版連弾版《交響曲第1番》ホ長調作品26、レオニード・サバネーエフ編曲版2台ピアノ版《交響曲第5番「プロメテウス」》作品60を取り入れ、分析においてさらに理解を深めることを目的とする。 また、これまでの成果を残すべく学術的論文の執筆を行う。交響曲とピアノ・ソナタの分析・比較研究結果をまとめ、日本大学芸術学部研究報告書、日本音楽表現学会等で学会発表、論文の執筆を行い、スクリャービンの交響曲とピアノ・ソナタの類似性・関連性をあげて作風について発表する。
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