研究課題/領域番号 |
23K12071
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
宮前 知佐子 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 助教 (80870120)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | デザインミュージアム / 用の美 / デジタルアーカイブ / デジタルドキュメンテーション / デジタルヘリテージ / 収蔵品管理 / 博物館展示 / 三次元計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、日本にはまだ存在しないデザインミュージアムを想定し、博物館を通じて、「用の美」を継承していくための情報公開・展示手法を提案することである。デザインミュージアムが備えるべき機能について調査を行いながら、「手になじむ」と称される日常の中のデザインを対象に、外形の美しさや、時代に適応した機能性をアーカイブ化する手法を検討し、「用の美」の継承方法を開発する。工学的な機能性と美学的な意匠を併せ持つ実用品の、多面的な「美」の定量化、美の理解に向け、外形を精確に測るという工学的手法や、時代によって変容するコンテクストを記述するという人文社会学的な視座を融合する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、博物館の収蔵品のうち、取り上げられる機会の少なかった日常のデザインを対象に、「用の美」すなわち、外形の美しさや、時代に適応した機能性を、いかにして測り記録していくのか、アーカイブ手法を検討し、「用の美」の継承方法を開発することである。 上述の目的を達成するためには、これまでの研究成果から、デジタル技術の活用が欠かせないと考え、初年度である本年度は、デザインミュージアムに限定せず、デジタル先進国とも呼ばれるノルウェーにおいて、博物館および美術館がデジタル技術を導入することで得られた利点や直面している問題、デジタルデータの公開手法などに関して、前年度に現地調査をおこなった結果を整理した。現地調査では、ノルウェー国立美術館として統合されたデザインミュージアムの所蔵品目録データベースは、絵画の作者や作家のデータベースと紐づけられ、著作権などが一元管理されていることが分かった。このように構造化されたデータベースは「用の美」の継承に必須であると考えられるが、日本国内の博物館関係者と意見交換を行った結果、国内の博物館では整備が進んでいるとは言えない状況にあることが分かった。この研究成果を、アートドキュメンテーション学会や国立民族学博物館研究報告にて公表した。 日本国内でのデザインミュージアムに関する先行研究の調査も実施し、日本国内におけるデザインミュージアム設立の必然性について研究を進める研究者と意見交換の機会を持つことができた。 また、国立民族学博物館において、北欧諸国から収集された収蔵品をデザインの観点から整理し直し、データベースを構築するためのプロジェクトを申請し、採択された。 さらに、サイエンスコミュニケーションに関する国際会議に参加し、文化施設と社会との様々な関わり方を学び、博物館展示に関する新しいアイデアや情報発信手法などを幅広く収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に予定された海外調査は、航空券の値上がりや円安の影響などを鑑み、初年度は延期の決断をせざるを得なかった。ただし、本年度に予定していた海外調査に代わり、前年度に実施した海外調査の成果をまとめることで、多くの気付きがあり、次年度への課題を整理することができた。また整理した研究成果を公表することもできた。次年度以降、デザインミュージアムに限定した調査を実施すれば、デザインミュージアムに限定せずに実施した調査と比較することが可能となり、デザインミュージアムのコンテンツとして求められる特性を、より一層深く浮き彫りにすることができると考えている。 今後、「用の美」の継承方法のひとつとしてデジタルコンテンツを開発していくにあたり、研究成果を実践の場に落とし込み検証する場が必要となる。国立民族学博物館にて、収蔵品の新たなデータベースを構築する機会を得られたことは、この実証実験の場を確保することができたとも言え、大きな成果である。 海外調査は実施できなかったものの、その他に予定していた文献調査や日本国内における調査は、ほぼ計画通り行うことができ、日本国内の研究者との意見交換を通じ、新たな知見を得ることができた。 以上の理由から本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究はおおむね順調に進展したが、研究計画に予定した海外調査は実施できなかった。そこで、次年度は初年度の繰り越し分の予算を次年度の予算と合わせて、海外調査を行う予定である。具体的には、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドのデザインミュージアムを訪問し、実用品を収蔵するデザインミュージアムが収蔵品の記録や展示、情報発信の際に抱える問題点を見出していく。調査結果から、デザインミュージアムとその他の博物館の間において、発信すべき情報にどのような違いがあるのか、デザインミュージアムのコンテンツとして求められている情報はどのようなものであるのかという点を分析する。 海外調査においては、各デザインミュージアムが、コンテンツ公開を行う際、著作権や意匠権など対し、どのような配慮を行っているのかという点についても情報収集する。 また、陶磁器、ガラス製品、漆器など、光学機器を用いた外形の三次元計測が困難な素材の記録手法に関しては、デザインミュージアムに限らず、当該の素材の文化資源を収蔵する既存の施設がどのような記録手法を用いて情報の生成を行っているのか調査を行う。さらに、文化施設に限定せず、最先端の機器や科学技術を用いた形状の計測手法を幅広く調査し、それらの手法がこれまで外形の三次元計測が困難であった文化資源に適用可能かどうかを検討する。手法のひとつとして、CTスキャンを用いた形の記録や記録されたデータの活用方法を検証するため、実験に適した文化資源の選定を行う。 その他、文献調査や国内の研究者との意見交換は、初年度に引き続き継続して行う。
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