研究課題/領域番号 |
23K12072
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 るつ子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (90383603)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 法医学 / デジタルアーカイブ / 資料保存学 / 法制史 / 医学史 / 異状死データベース |
研究開始時の研究の概要 |
東京大学法医学教室には、法医学分野が創設され、最初の司法解剖(1889年)が施行された明治時代から現在までの鑑定書がほぼ全て保存されている。 解剖所見の記載、検査結果、写真、鑑定文等を含むこれらは、日本の法医学・裁判科学・司法制度の発展・変遷の軌跡を残す貴重な一次史料でありながら、紙媒体のため経年劣化や災害等による消失の恐れを免れず、資料体としても網羅的に整理・調査されたことがない。これらを医学史学・法制史学また資料保存学的観点から複合的に調査分析し、 我が国の法医学の成立過程や様々な死因究明制度にかかわる問題点の起源を明らかにし、医学資料として活用するためのデジタルアーカイブ化を試みたい。
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研究実績の概要 |
2023年度は、東京大学法医学教室に保存された明治時代からの鑑定書について、貴重な歴史・学術遺産として、災害等による消失を防止し、また医学教育・研究に活用できるよ う保存性・参照性を高めるためのデジタル・アーカイブ化を行い、鑑定の為に行われた検査及びその結果、写真、鑑定文等から日本の近代から現代に至る法医学・裁判科学・司法制度の発展・変遷を確認し、資料体としての網羅的な整理・調査を可能にするため、ブックスキャナー及びデスクトップパーソナルコンピューター、ハードディスクなどの記憶媒体を購入し、教室内に設置するなど研究環境を整備し保存を開始している。また、今後は網羅的な保存を目指しているものの、10,000事例以上に亘る鑑定書の中から、研究目的に合致する、法医解剖が対象としてきた事例の社会背景等の変遷、鑑定嘱託事項からみえる社会的・法制史的背景、科学的検査法の変遷などをよく代表する歴史的事件のものを主として選定し、目録化をおこなった。資料としての検討においては、明治時代の和紙に墨書きのものは非常に良好な保存状態であるのに対し、昭和時代前半等のタイプライターによる記載のものについては、紙とインクの劣化が著しく認められ、特に一部の歴史的事件の鑑定書については複写版しか残存しておらず、そのためか判読困難になっているなどの現状が確認された。こうした鑑定書については、更なる劣化が予想されるため文字起こしによる記録を開始しているが、漢字や文言の現在との違いにより一部が復元困難であり、復元には法学専門家等の協力を仰ぐ必要性も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は研究代表者の所属施設の移籍が年度途中で生じた事情があり、機器購入や設置の手続き、資料保存、文字起こし作業などに若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
研究環境が整備されたため、今後は対象の事例鑑定書の資料保存、さらに参照性を高めるためのデジタルアーカイブ化の方法を検討するとともに、データベースソフト等を購入し事例目録の整備を行いつつ、法医解剖事例の時代ごとの特徴、科学的検査法の後方視的な妥当性検討、鑑定嘱託事項について関連する社会的・法制史的背景を明らかにしつつ歴史的検討を行うなど、研究目的の核となる事項について、文献的検討を加えながら論文化にむけ進める予定としている。
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