研究課題/領域番号 |
23K12076
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
畑 一成 明治大学, 経営学部, 専任講師 (00899057)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ゲーテ / ロバート・ボイル / ディレッタンティズム / 科学史 / グランド・ツアー / ロバート・ボイル (1627-91) / 色彩論 / 自然哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
ゲーテの色彩論は、ニュートンとの対比の中で論じられ、位置づけられてきた。しかし、ゲーテ色彩論の特徴づけと位置づけを再構築する鍵は、ロバート・ボイル(1627-91)にある。ボイルは、近代科学の代表者の一人でありながら、ゲーテが最も称賛した色彩研究者の一人である。従来の研究が述べるように、ゲーテ自然学が近代科学に対立するのだとすれば、ゲーテが近代科学の代表者ボイルを模範とした理由がみえない。本研究では、これまで見過ごされてきたゲーテ色彩論におけるボイルの意義を包括的に解明し、ゲーテ自然学の科学史における位置づけの再構築を目指す。
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研究実績の概要 |
ゲーテとロバート・ボイルとの関係を探求するため、両者の時代背景の考察を進めた。これまでの研究成果として、啓蒙主義においてグランド・ツアーとディレッタンティズムが大きな役割を果たしたことが分かった。しかし、なぜグランド・ツアーとディレッタンティズムが特に英国で大きく発展したのかが明らかではなかった。そのため、英国における特性を理解するために、当時の英国の政治と経済の状況を調査した。英国は大陸ヨーロッパと違い三十年戦争の荒廃を経験することがなく、名誉革命による自由な市民活動の実現させ、さらに効率的な徴税システムや中央銀行による国債発行といった国家の急速な発展を可能にしていた。その自由さと資本力によって子女を学業のために何年もグランド・ツアーに送り出すことができ、ディレッタント協会のような美術品の収集も行うことができた。政治家でもあったゲーテは、この英国の動向を肌で感じており、英国の学術をつぶさに見つめていた。ドイツにおいても、修養のための旅行やディレッタンティズムに似たベレトリスティークの動向があったが、三十年戦争での荒廃とそれに続く神聖ローマ帝国の退廃が、英国のような飛躍への推進力を奪っていた。本年度は、特にディレッタンティズムとベレトリスティークに関するドイツ初期の考察を調べ、その成果を論文としてまとめ、「人文科学論集」に投稿した。ディレッタンティズムとベレトリスティークを哲学者カントが考察していた。啓蒙主義の哲学者であるカントが、啓蒙主義の大きな成果であるはずの両概念を「人文主義者の猿ども」と思いのほか否定的に考察している。この点に英国とドイツ(プロイセン)との思想的な土壌の違い見えてくると同時に、英国を憧憬しつつも啓蒙主義への疲弊を感じ取るゲーテのドイツにおける特異な立ち位置も浮かび上がってくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロバート・ボイルからゲーテへの影響関係を見るにあたって、ただ個人から個人への影響を見るのではなく、その背景にある政治や経済、思想潮流の移り行きを考察できたことにより、課題がより明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、科学実験の発展の歴史をより明確にし、そこからゲーテとボイルとの関係を考察したい。実験科学は、ガリレイ以降大きな展開を見せることになるのだが、比較的遅くまで、科学実験がお祭りの出し物程度にしか考えられてこなかった。しかしながら、実験における「再現性」は、誰でも科学することを可能にしており、それが素人の科学愛好家を多く生み出し、科学の脱魔術化、あるいは世俗化へ移行させたということもできる。科学におけるディレッタンティズムとそれと実験とのかかわりを考察する。
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