研究課題/領域番号 |
23K12077
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
葛西 太一 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20869200)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 日本書紀 / 上代文献 / 文字表現 / 変格漢文 / 仏教漢文 / 和習 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで『古事記』は日本的に訛った変格漢文によって、『日本書紀』は中国の規範的な文言文である正格漢文によって記述されていると画一的に捉えられてきた。しかし、それら上代文献の文字表現は必ずしも一律ではなく、大陸や半島の多様な文字文化の影響を受けて成り立つ。本研究は、上代文献の文字表現に見られる〈文化的な多様性〉を具体的に指摘し、漢語と和語が接触するなかで生じた介在言語の実際を把握することを目標とする。
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研究実績の概要 |
研究計画の一年目にあたる令和五年度は、中国古典籍に関する複数の電子テキストを対象として正規表現検索やN-gramによる分析を行う環境を整えた。また、朱慶之『佛教漢語研究』(北京商務印書館、2009年6月)をはじめとする中国語論文を翻訳し、漢訳仏典に特有の表現・語法に関する知見を深めた。 これらに基づいて、日本書紀に見られる文字表現の横断的・網羅的な分析を行い、①日本書紀に見られる異義の動詞三字を連ねる語法が漢訳仏典に特有の仏教漢文に通じる可能性を指摘し、②日本書紀神代巻の本書・一書の形式が漢訳仏典の注釈形式に由来すると見る余地のあることを検討した。いずれも日本書紀に見られる文字表現や記載形式の成り立ちを捉えるにあたって、その背景に漢訳仏典の受容があったことを示唆するものであり、日本書紀が一律の純粋な漢文体によって記述されたものではないとする捉え方を支持する例証とも言えるだろう。なお、後者②は本研究の成果として、「萬葉学会 第七十六回全国大会」(於:武庫川女子大学、2023年10月22日)にて「神武紀「天神子亦多耳」の意義―日本書紀における神代紀本書と一書の位置づけ―」と題して口頭発表を行った。令和六年度中の論文掲載・公表に向けて、現在、論文の執筆に取り組んでいるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、主に八世紀初頭に成立したと考えられる上代文献を対象として、そこに見られる文字表現が漢語と和語をはじめとする複数の言語を媒介する記載言語に位置づけられることを見通すとともに、その背景に成り立つ〈文化的な多様性〉を具体的に指摘することにある。 研究計画の一年目にあたる令和五年度は、日本書紀に見られる文字表現が仏教漢文の影響のもとに成り立つことを指摘したことにより、当初の目的における記載言語の介在性を考察する端緒を得ることができた。異なる言語の接触によって生じた性質を具体的に説き明かすまでには至らない点は次年度以降の課題として、本年度は、日本書紀の注釈形式が漢訳仏典の形式に由来する可能性のあることを含め、文字表現の分析を通して当時の文化的交流の様相を捉えようとする目的について一定の成果を示すことができた。したがって、本研究課題の進捗状況は全体的に見ておおむね順調に進展していると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的を達成するためには、文学研究を中心として、歴史学や仏教学、中国語学や百済・新羅の研究にも視野を拡げる必要がある。そのために、国内外の各種関連学会の場において学術交流を深め、俗語小説・漢訳仏典・敦煌変文や、発掘調査により出土した金石文や木簡・簡牘等の新出の文字資料をも比較対象に加えつつ、成果の結実に向けた研究の推進を図りたい。また、研究成果は関連学会の発行する研究誌に投稿することによって公表する。
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