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日本近世文学における中国白話小説の受容―馬琴読本の白話語彙を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 23K12084
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分02010:日本文学関連
研究機関九州大学

研究代表者

孫 琳浄  九州大学, 人文科学研究院, 講師 (70845958)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード白話語彙 / 新編水滸画伝 / 中国白話小説 / 読本
研究開始時の研究の概要

申請者はこれまでに、『八犬伝』全体における『水滸伝』のストーリー面での受容の仕方を研究してきた。ところが、周知のように馬琴は生涯白話の師を持たなかった。にもかかわらず、彼はどのようにして白話語彙を自家薬籠中の物として扱えるようになり、その上で、読本という新しい小説様式の文体を確立し得たのか。本研究は、馬琴の個々の読本作品に見られる白話語彙受容のあり方を明らかにし、馬琴読本文体の確立過程を考察することで、日本近世文学と中国白話小説の関わりを新しい視点から解き明かし、現代日本語における白話語彙由来の漢語の位置づけを示そうとするものである。

研究実績の概要

令和5年度に実施した研究成果は大きく分けて、一、中国文学と日本近世文学それぞれにおける白話語彙の識別基準の再検討。二、『新編水滸画伝』に見られる白話語彙の利用状況及び馬琴の白話語彙理解実態の考察、に分けられる。
中国文学において白話語彙を研究する場合には、基本的に唐以降の文献を対象とするが、六朝期の漢訳仏典、志人小説、楽府詩の一部にも口頭語彙が含まれているため、これらの文献も視野に入れる必要があると思われる。一方、日本近世文学において白話語彙研究をする場合は、四大奇書や三言二拍で頻用される唐代史料・伝奇小説・敦煌変文などを初出とする語を含みつつも、主に白話文学作品を出典とする語彙をメインとすべきであると考えられる。
後者の識別基準に基づき『画伝』中の白話語彙を抽出し、その分布状況と特徴を考察すると、『画伝』に見られる白話語彙の利用率は後の巻ほど増加する一方であり、かつ、その利用は一字、二字の単語や熟語に止まらず、修飾語を伴う語にまで及ぶ。傍訓に関しては、意味解説のような注釈や俗語が当てられていることが明らかになった。
また『画伝』の執筆順に沿って、虚字「将」の翻訳の諸相及び馬琴の白話語彙理解の実態を検討すると、執筆初期の馬琴は意訳を中心に翻訳作業を進め、「将」の用法には全く触れていないが、途中から書き入れを参照しつつ学習し、完璧に理解したわけではないものの積極的に翻訳に生かすようになっていることが窺われる。だが彼は結局最後まで「将」の用法を把握しきれなかったと見える。翻訳の終盤になると、馬琴は原文の語彙を随意に分解するとともに、前後の文脈に適した和語を訓に当て、その語彙に本来存在しない意味を担わせようとしていることが推察される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

科研費を申請後、おおむね予定通りに研究調査、発表、論文化を進めたと思われる。

今後の研究の推進方策

馬琴読本作品のうち、『水滸伝』関連作品は全14作品が認められる。『画伝』起稿以前には、『高尾船字文』『復讐月氷奇縁』『復讐奇談稚枝鳩』『四天王剿盗異録』の4作品があり、以後には『椿説弓張月』『朝夷巡嶋記』『八犬伝』『開巻驚奇侠客伝』『近世説美少年録』などの9作品がある。それぞれの作品から白話語彙を取り出し、『新編水滸画伝』の白話語彙データと照合すれば、『画伝』以前に使用されている語彙の性格・特徴と、それ以降のものとの差異が明らかになるのみならず、『画伝』を執筆することが、馬琴のそれ以降の創作に具体的にどのような影響を与えたのかも浮き彫りになると考える。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 『新編水滸画伝』の執筆から見た曲亭馬琴の白話学習2024

    • 著者名/発表者名
      孫 琳浄
    • 雑誌名

      文学研究

      巻: 121 ページ: 97-116

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本近世文学における白話語彙の識別基準に関する考察 : 『新編水滸画伝』の使用語彙を例に2023

    • 著者名/発表者名
      孫 琳浄
    • 雑誌名

      中国文学論集

      巻: 52 ページ: 125-140

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「舜子變」訳注(1)2023

    • 著者名/発表者名
      小松 謙, 大賀 晶子, 川上 萌実, 孫 琳浄, 田村 彩子, 永井 もゆ, 藤田 優子, 宮本 陽佳, 李 沫
    • 雑誌名

      京都府立大学学術報告. 人文

      巻: 75 ページ: 1-27

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「舜子變」訳注(2)2023

    • 著者名/発表者名
      大賀 晶子, 川上 萌実, 小松 謙, 孫 琳浄, 田村 彩子, 永井 もゆ, 藤田 優子, 宮本 陽佳, 李 沫
    • 雑誌名

      和漢語文研究

      巻: 21 ページ: 174-205

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 文化初期における曲亭馬琴の白話学習 ―『新編水滸画伝』の執筆を通して―2023

    • 著者名/発表者名
      孫 琳浄
    • 学会等名
      東京大学U-PARL協働型アジア研究企画 「東京大学蔵水滸伝諸版本に関する研究」2023年度第1回会合
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 『新編水滸画伝』の使用語彙から見た曲亭馬琴の白話学習2023

    • 著者名/発表者名
      孫 琳浄
    • 学会等名
      第325回中国文藝座談会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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