申請者はこれまでに、『八犬伝』全体における『水滸伝』のストーリー面での受容の仕方を研究してきた。ところが、周知のように馬琴は生涯白話の師を持たなかった。にもかかわらず、彼はどのようにして白話語彙を自家薬籠中の物として扱えるようになり、その上で、読本という新しい小説様式の文体を確立し得たのか。本研究は、馬琴の個々の読本作品に見られる白話語彙受容のあり方を明らかにし、馬琴読本文体の確立過程を考察することで、日本近世文学と中国白話小説の関わりを新しい視点から解き明かし、現代日本語における白話語彙由来の漢語の位置づけを示そうとするものである。
|