研究課題/領域番号 |
23K12085
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
真島 望 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (20962997)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 肥後地誌 / 名所句集 / 地方文化 / 八代名所集 / 近世文学 / 地誌 / 俳諧 / 漢詩 / 説話 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近世における「名所」とは何か、またその生成と変容から浮かび上がる、当時の人々の文化的アイデンティティのあり方はいかなるものか、という問いを核心に据えつつ、自分たちの生きる足下に存する物語・歴史を語る近世地誌を文学作品として考究し、そこに各名所を名所たらしめる根拠として引用される詩歌、特に漢詩文・俳諧の分析を通して、近世地誌の文学・文芸作品としての価値や史的意義を明らかにすることを試みる。
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研究実績の概要 |
本課題の主要テーマは、地誌と詩歌を通して「江戸」とは何かということを考究することであるが、初年度は地方地誌の調査・研究を進めることで、その相対化をはかった。 具体的には、これまで研究対象としてあまり俎上に上げあられることが少なかった『八代名所集』(寛文12年〈1672〉序刊、八代市立博物館蔵)という俳書について、書誌調査を行った上で内容を検討した。 当該資料は八代(現熊本県八代市)の名所を題とした発句集で、近世前期の一地方の名所のみを題材とした名所句集として貴重な例であるだけでなく、その題に漢文による解説が付されるところがあり、各名所の由来や歴史を述べるその内容は地誌的で、地方地誌としての側面も有している。 近世肥後の地誌は、寛文7年(1667)成立の『国郡一統志』(北島雪山編が最も早いもので、次の『肥後名勝略記』(辛島道珠編)が元禄2年(1689)成立であることを考えると、『八代名所集』の記述は、肥後地誌の早期の例としても重要な位置を占めると言うことができるのである。 発句がほぼ八代や熊本在の俳人によるものであることも重要で、従来指摘されてきたことではあるが、近世前期から肥後熊本藩には俳壇と呼ぶべきグループが形成されており、その文化的成熟度が窺える。そして、入集者の中に貞門の重鎮たる季吟がいることは、本作が中央俳壇とのつながりを背景に編纂・刊行されたことを示唆している。それは八代側から見れば、本作を通して八代の文化的アイデンティティを京都文化圏に示すことになり、それが名所発句集という形をとって行われたことは興味深い(地誌+俳諧の好例)。 今後はさらに同種の『阿蘇名所集』(元禄3年〈1690〉)や肥後地誌の調査研究を深め、江戸地誌研究の比較材料としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主題を相対化するための地方地誌の調査・研究は一定程度の進捗を示すことができているものの、本丸である江戸地誌研究にまで及ぶことができていないため。ただ、資料の収集に関してはある程度の成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は居住地たる熊本の地の利を活かして、肥後地誌や九州・熊本の名所と漢詩・俳諧の関わりを追求してゆく。具体的には、上述の『阿蘇名所集』の研究が課題となる。
一方で江戸地誌の研究も再開したい。具体的には、数少ない江戸周辺の歌枕である「武蔵野」や「堀兼井」などを手がかりに、それらが江戸時代にどう変容して「名所」化してゆくかを、江戸地誌の記述や俳諧・漢詩文の関わりを含めて考究してゆくつもりである。
そのために引き続き各所の図書館・博物館での調査や、名所の実地踏査を行いたい。
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