研究課題/領域番号 |
23K12093
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
馬場 大介 立教大学, 外国語教育研究センター, 教育講師 (80907733)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 国文学 / 文献学 / 芳賀矢一 / アウグスト・ベック / 選択的受容 / 日独比較文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の主題は、1890年代から1910年代の国語・国文学研究におけるドイツ語圏の学術との接触である。研究対象とするのは、日本語・日本文学研究の近代化を主導した芳賀矢一と上田万年の仕事である。本研究の目的は、芳賀と上田が、どのような状況に置かれ、ドイツの研究方法に対してどのような取捨選択を行い、その結果としてどのような国語・国文学研究が確立したのかを明らかにすることにある。そのコンテクストを、日独の両面から実証的かつ総合的に検証するにあたり、芳賀と上田の著作、彼らが参照したドイツ語の著作、留学に関する記録を調査し、日独の18世紀以降の思想的・社会的・制度的基盤を明らかにする。
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研究実績の概要 |
日独の学術的接触を主題とする本研究は、明治時代の日本語・日本文学研究がドイツ語圏の言語学・文献学(フィロロギー)を選択的に受容した可能性を具体的に裏付けることを目指している。研究実施計画に基づき、国文学者の芳賀矢一と彼に関連する日本側のコンテクストについて、以下のとおり調査を進めた。①芳賀が1900年から1902年にかけてベルリンに留学した際に書いた日誌、留学中に参照したドイツ語の著作、留学後の1903年と1907年に行った講義の記録を精読し、相互に関連づけながら、彼がドイツ語圏の理論のどのような点を取捨選択しているのかを分析した。②明治時代における英語圏の日本学の動向と社会的状況の変遷について調査した。③その結果、ドイツ語圏の理論にそぐわない芳賀の主張が、明治時代の国学の状況に端を発している点を具体的に裏付けた。④以上の内容を、日本語の論文としてまとめてきている。ドイツ語圏の学術の選択的受容という主題は、これまで日本文学、国際日本学の研究で具体的に検討されたことはなく、その斬新さを主張できる。また上記の成果は、日本側が行ったドイツの学術の選択的受容は、その当事者たちが置かれた日本の状況と、彼らが参照した知識が成立したドイツの状況の両側から規定されたという本研究の仮説を裏付ける論拠として、研究計画全体の中核をなす。以上、1年目の成果は、研究の3年目と4年目に行う学術的接触の総体的記述へと向かう着実な歩みとして評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初1年目に計画していた芳賀矢一の文献学の実践をめぐる分析がまだ完了していない。その理由として、研究計画の立案後に、ゲーテ大学フランクフルト・アン・マインの日本学研究所から、日独の学術的接触をテーマにした論文の執筆を依頼されたことが挙げられる。この論文は、19世紀末から20世紀前半にかけて『万葉集』がドイツ語と英語に翻訳された背景と経過を扱い、本研究の成果にも関連する。この論文の執筆は、今後の研究において国際的かつ学際的なネットワークを構築するうえで、きわめて重要であると判断して承諾した。なお、上記の分析は、2年目に遂行することも十分可能であり、研究の進捗状況は損なわれていないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、8月上旬から中旬にベルリンとライプツィヒで予定している資料調査に主眼を置く。これと並行して、上記のとおり、芳賀矢一についての論文の執筆と未完了の分析作業を進めていく。8月下旬に中国・青島で開催される「アジア・ゲルマニスト会議2024」で、1年目に行った明治時代の社会的状況についての調査内容を、当時のドイツ語教育と関連づけて発表する予定である。その後は、研究実施計画のとおり、上田万年とドイツ側のコンテクストについて重点的に調査を進めていく。
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