研究課題/領域番号 |
23K12095
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
大関 綾 大谷大学, 文学部, 助教 (90891846)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 長編合巻 / 白縫譚 / 柳下亭種員 / 歌舞伎化 / しらぬひ譚 / キリシタン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、幕末から明治初期にかけて刊行された絵入長編小説(長編合巻)『白縫譚』(全90編、嘉永2年~明治18年刊)について考察を行うものである。本作品は長編合巻の中でも最長編のもので、35年の間、3人の作者によって書き継がれた当時の人気作品である。幕末期には様々な価値観・文化が変遷し、作品もその影響を受けた。本研究では長年書き継がれた作品を「嗣作」(作品を別の人物が書き継ぐこと)という小説作法から分析することにより、趣向の変化などが何によって生じたのか考察を行う。当時の人々が娯楽作品として親しんだ作品についての理解を深めるとともに、現代の諸問題にも通じる可能性のある、新たな視点を提示する。
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研究実績の概要 |
本研究は、幕末から明治初期にかけて刊行された絵入長編小説(長編合巻)『白縫譚』(全90編、嘉永2年〈1849〉~明治18年〈1885〉刊)について考察を行うものである。本作品は長編合巻の中でも最長編のもので、35年の間、3人の作者によって書き継がれた当時の人気作品であり、明治以降の文豪にも影響を与えた作品である。幕末期には様々な価値観・文化が変遷し、作者が意図したかに関わらず、作品に大きな影響を与えた。本研究では長年書き継がれた長編合巻作品を「嗣作」(作品を別の人物が書き継ぐこと)という小説作法から分析することによって、趣向の変化などが何によって生じたのか考察を行う。同時代資料を用いて詳細な注釈を施す一方で長編合巻の枠組みの解明を行うことにより、当時の人々が娯楽作品として親しんだ作品についての理解を深めるとともに幕末から明治初期にかけての世相について、新たな視点を提示することを目的としている。 具体的には次の3つの論点・課題について、調査を進めることを考えている。(イ) キリシタンに対する当時の人々の意識変化の解明 (ロ) 主人公の変化と女主人公に対する読者の意識の解明 (ハ) 舞台となる地方・地方の地誌や歴史に対する作者の知識の解明 この中で、1年目には合巻『白縫譚』の本文、特にキリシタンと因果関係のある「妖術」の記述について分析を行った。現段階では現存するキリシタン資料との共通項などを見つけるまでには至っておらず、今後も引き続き調査、考察を進めていく予定である。 また、本作では作品の途中で主人公が変更されていると読み取れるが、その原因となったであろう、本作の歌舞伎化作品の調査を行った。歌舞伎化がさらに合巻へ影響を与えたことを明らかにするため、歌舞伎の関連資料についても調査を行い、その成果を発表すべく、現在論文化の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年時の計画としては、キリシタンに対する江戸時代の人々の意識の変化が作品に表されているかを調査するため、対象作品『白縫譚』の本文分析の上でキリシタンに関する歴史的資料との照合を行う予定であったが、江戸時代のキリシタンに関する先行研究を収集、理解することに終始し、本文に還元することができなかった。また、当初予定していた、作品の舞台ともなる熊本・長崎への調査を実施することができなかった。 一方で、作品内で主人公が変化することと女主人公に対する読者の意識の解明については、重要な要素となると考えられる、合巻『白縫譚』の歌舞伎化を行った「しらぬひ譚」の初演台帳を調査し、その複写申請を2023年度中に行った。また、作者である柳下亭種員が歴史書などに詳しかったことを裏付ける資料として、当時の国学者たちと共同で作成した『東鑑』の索引があり、2024年度に先駆け、それらの複写を入手した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2024年度は、まず2023年度調査を行った歌舞伎台帳と合巻作品の内容比較を行ない、物語構成がどのように変化したか、詳細な分析をおこなった上で、研究発表、論文発表を行う予定である。 また、1年目に実施できなかった調査も2年目の計画と並行して行い、3年目へ向け、合巻『白縫譚』の枠組みを解明できるよう、準備を行う予定である。
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