本研究は、明治期に成立した児童文学が、口絵や挿絵とどのような関係を構築してきたか、またそれらと文が生み出す相乗効果とはどのようなものだったかを問う。とくに作家・巖谷小波(いわやさざなみ)とその挿絵を数多く担当した絵師・武内桂舟(たけうちけいしゅう)の作品を対象に、大人向けの作品と子ども向けの作品における文と絵の関係性を相互に比較することで、子ども向けの作品の口絵・挿絵と文との関係性の特徴を浮き彫りにしていく。これらの作業を通して、近代日本の子ども向け読み物とそれにふさわしい絵が模索され、確立されるまでの道程を明らかにすることが本研究の目的である。
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