研究課題/領域番号 |
23K12097
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
木村 迪子 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (40836475)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 『日本古今往生略伝』 / 往生伝 / 『和漢往生伝』 / 『往生集』 / 雲棲禅師 / 和刻本 / 近世仏書 / 『緇白往生伝』 / 近世文学 / 宗論 / 出版 / 民衆教化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近世、特に前期(1600-1750)を、日本史上最大の仏書ムーブメントが沸き起こった時代――言うなれば、〈仏書の時代〉――と位置づける。 出版の隆盛とともに爆発的広がりを見せた近世仏書の内実とその文学的有用性を、元禄11年、大坂で発布された類版・重版の禁止に直接的影響を与えた『弁惑指南』論争を中心に、仮名草子や浮世草子といった文学作品から宗論書まで幅広く取り扱うことで、近世前期における〈出版〉と〈宗論〉の関係性の解明から示すことを目指す。
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研究実績の概要 |
23年度は雲棲□(*衣偏に朱)宏(うんせいしゅこう)『往生集』を起点に、近世往生伝発端の見直しを行った。 従来、近世往生伝は元禄2年刊『緇白往生伝』を発端として政治的背景との関連性から論じられてきた。しかし、先行研究では近世初期の和刻本往生伝の積極的刊行、特に『往生集』が与えた影響について、言及されてこなかった。 上記を問題視し、和刻本『往生集』の板行、また、従来言及されてこなかった最初期の和製近世往生伝である『和漢往生伝』ならびに非僧侶による往生伝である『日本古今往生略伝』に注目して調査を行った。 その結果、ひとつに、近世における和製往生伝はまず漢製往生伝の和刻本板行があり、更に『往生和訳としての『和漢往生伝』ならびに『女人往生伝』の出版があって、これが庶民教化に深く寄与したことが明らかになった。また、、一方で、やはり『往生集』に影響を受けて『緇白往生伝』が成るも、これは『緇白往生伝』の著者了智の師匠である知空遷化を巡る往生伝(『日本古今往生略伝』記事)や遺稿集『念死念仏集』の類板が、その板行ならびに序文における先行往生伝の黙殺に大きな影響を与えた可能性が高いことも示すことができた。 本研究課題では、宗学と出版に焦点を当てて事例の検討を行うことを旨とする。上述の研究成果は近世仏教研究で看過されがちであった仏書の〈出版〉について、和刻本や非仏教者の仏書といった広範な視点を以て検討することで、半世紀に亘って研究が停滞している近世前期往生伝の新知見を示せる可能性を提示できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
17世紀後半の仏書出版の事例について、調査ならびに報告を完了できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究成果の上でひとつ問題となったのが、僧侶以外による仏書出版である。学僧らは他宗派と宗論を行う一方で、本来だったら仏書出版に関わらないはずの人々による仏書出版にも頭を悩ませることになる。 これについても本研究完遂にあたって解明しなければならない。具体的には、毛利貞斎の仏書出版を検討することで、この問題を解決したいと考えている。 上記と並行して、日蓮宗における宗論について、先行研究ならびに出版物の書誌調査をすすめ、データの収集をはかる。 また、成果報告として、何らかの形で『和漢往生伝』の翻刻を公開したい。本書は仮名草子としても十分な意義を有する作品であるから、活字化によってこれを弘められたら幸いである。
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