研究課題/領域番号 |
23K12101
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
廣瀬 航也 宮城教育大学, 教育学部, 講師 (50952967)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 『方寸』 / 石井柏亭 / 高村光太郎 / 「生の芸術」論争 / 石川啄木 / 都市 / テクストとイメージ / 美術批評 / 都市論 / 1910年前後 / 文学と美術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、雑誌『方寸』(1907-1911)に着目し、「市区改正」の中で「都市美」について盛んな議論が展開された1910年前後における文化の形成を、文学・美術の領域を横断する形で追究することを目的とするものである。そのため第一に、雑誌『方寸』の成立について、同人たちと画壇・文壇との関わりや、海外の文芸雑誌との関わりの中で明らかにする。第二に、雑誌『方寸』における都市の表象について、都市に関する特集を中心に分析し、また「生の芸術」論争との関わりについて検討することで、同時代の美術・文学をめぐる文化的動向の中に位置付ける。それにより、都市を媒介として文化が生成される現場そのものに肉薄する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、雑誌『方寸』における美術批評・言説の基礎的な調査を行うとともに、『方寸』と同時代の文学テクストにおける都市の表象を調査した。その具体は、以下に示す通りである。 第一に、「生の芸術」論争を中心として、雑誌『方寸』における美術批評・言説を同時代的な文脈の中で調査した。「生の芸術」論争は、1909年に開催された第3回文部省美術展覧会の出品作である山脇信徳「停車場の朝」をめぐって展開された、高村光太郎・石井柏亭等による論争である。この論争の主たる舞台の一つが雑誌『方寸』であり、柏亭を中心とする『方寸』同人等の言説を辿れば、この論争は東京という場を絵画がいかに表現するかという問題、さらには官展の時代における「版画」「漫画」のあり方をめぐる問題の議論へと展開されるものであった。これらの結果は、現在投稿中の論文において公開される予定である。 第二に、『方寸』と同時代の文学テクストにおける都市の表象を調査した。具体的には、石川啄木のテクストを中心に、浅草という空間を当時の文学テクストがどのように表現していたのかを調査した。浅草は前近代的な文化を残しつつも近代的な娯楽の空間として整備され、そのような刺激を求めた人々により「群集」が形成された。石川啄木のテクストにおいては、「群集」を介して自らを苛む否定的な心持ちを都市の「気分」として謳いあげる様が看取され、ここに同時代的な文脈における共通性と独自性があることが確認される。この問題は1報の研究発表と1編の論文において公開済みであるとともに、『方寸』における都市あるいは浅草の表象を評価する重要な手がかりとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雑誌『方寸』における基礎的な調査を順次行うとともに、「生の芸術」論争を中心にこの雑誌における美術言説を同時代的な文脈の中で捉え、その成果を公開準備中である。また、1910年前後における都市の都市の表象として、石川啄木を中心に浅草という空間の表象を調査し、その成果を1報の研究発表と1編の論文において公開した。2023年度は、予定していた海外での資料調査を行うことができなかった反面、1910年前後の都市文化の生成についての調査・考察を順調に進めるとともに、その成果は順次公開する準備が整っている点において、おおむね順調に進展していると言って良い。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度に引き続き雑誌『方寸』における美術言説のありようについて、同時代的な文脈の中で調査する。具体的には、「絵画の約束」論争に着目して広く1910年前後の美術をめぐる言説を雑誌『白樺』等の動向に目を向けながら調査する。その中で、雑誌『方寸』が「版画」「漫画」を表現の方法として採用してきたことの意義を明らかにし、この雑誌の同時代的な位置づけを明らかにする。同時に、2023年度に調査した1910年前後の浅草表象を踏まえ、雑誌『方寸』が浅草を特集の主題としたことの問題を調査し、この雑誌において文学・美術テクストが都市をどのように表象しているかを明らかにすることで、都市を媒介として文化が生成する現場に肉薄する。 なお、年度末には2023年度に行うことができなかった海外での資料調査を予定しており、その成果を2025年度内に公開することを企図している。
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